中国SNSを使ってプロモーションを行う際は、各種SNSの特徴を活かして、マーケティング戦略を練ると成功率が上がります。
例えば、マーケティング戦略手法の一つとして、WeChat公式アカウントと中国版TikTok抖音(Douyin)を連携することが挙げられます。
この記事では、WeChat公式アカウントと中国版TikTok抖音(Douyin)を連携することで実現できるマーケティング戦略、その背景にあるトレンドの変化、注意点などについて、紹介していきます。
広域(オープンプラットフォーム)→私域(クローズドプラットフォーム)への移行
広域、私域とは
現在、中国マーケティングでは、広域(オープンプラットフォーム)→私域(クローズドプラットフォーム)へ移行するトレンドが生まれつつあります。
ここで、広域とは、中国版TikTok抖音(Douyin)や小紅書(RED)、微博(Weibo)などのオープンなプラットフォーム指します。
私域とは、WeChat公式アカウントや企業公式サイトなどの比較的クローズドなプラットフォームを指します。
広域の特徴は、中国版TikTok抖音(Douyin)に代表されるように、何といっても非常に大きい集客力を持っていることです。
プラットフォームのレコメンド機能により、ひとたび動画が伸びれば、広告費をかけずとも、多くの中国消費者に認知されます。
そのため、新規ユーザー獲得や不特定多数の人に認知してもらいたいと思う会社に向いています。
一方、私域の特徴は、個々のユーザーの年齢や購入履歴などの個人情報収集が比較的容易なため、顧客管理をシステム上で行えることが挙げられます。
その結果、各ユーザーのニーズに合わせた情報発信やきめ細かな対応ができるようになります。
また、私域の代表格であるWeChat公式アカウントでは、LINEやFacebookのタイムラインに相当するモーメンツという機能があり、ユーザーに対し広告感をあまり与えず、ブランドに関する情報発信や告知などが可能になります。
今、広域と私域の特徴の異なるプラットフォームが存在する中で、広域→私域へユーザーを移行させようとしている企業が増えているのです。
ちなみに、このトレンドは、中国では「私域转化(日本語:プライベートドメイン化)」と呼ばれています。
広域→私域へのトレンドの背景
なぜ中国で広域→私域へのトレンドが生まれつつあるのか、その背景を解説したいと思います。
背景は大きく3つに整理することができます。
- 公域における広告コストの増大
- 公域の厳しい規制
- 広域→私域での成功事例の出現
1つ目の公域における広告コスト増大について、プラットフォームでの広告手数料、KOLへの出演費用などが年々上がっています。
企業側にとっては、顧客を獲得し売上を上げるために必要な費用であったとしても、最終的に利益を圧迫しかねないため、コスト増大に悩む企業が出てきているのが実情なのです。
2つ目の公域の厳しい規制について、例えば、中国版TikTok抖音(Douyin)では、非常に厳しい管理が行われています。
少しでも運用規定に違反した場合は、アカウントの一時停止だけでなく、アカウント信用評価が下がり、ビジネスチャンスを逃すことさえあります。
最悪の場合、アカウント閉鎖のリスクもあり、企業側は中国版TikTok抖音(Douyin)のプラットフォームだけで運用することに危険性を感じているのです。
3つ目の広域→私域での成功事例の出現について、最近では、Eラーニングや高額商品販売などで成功している事例が出てきています。
その成功事例を模倣して、あらゆる業界で、広域→私域へ移行しようという動きがあるのです。
WeChat公式アカウントと中国版TikTok抖音(Douyin)の連携
比較的新しいマーケティング戦略
WeChat公式アカウントと中国版TikTok抖音(Douyin)の連携は、比較的新しい動きであり、これを活用すれば、新しいマーケティング戦略を策定することができます。
つまり、うまく連携させることができれば、広域と私域のそれぞれ長所だけを抽出し、「いいとこ取り」が可能になるのです。
具体的には、中国版TikTok抖音(Douyin)の圧倒的な集客力を活用して、潜在顧客にアプローチし、フォロワーになってもらった顧客に対して、WeChat公式アカウントへの誘導を行うという戦略です。
WeChat公式アカウントへの誘導がうまくいけば、多くのメリットが享受できます。
例えば、WeChat公式アカウントでの中国顧客は、ブランドや商品へのロイヤリティが比較的強く、凝った広告を出さなくとも購入につながるため、広告費削減が可能になります。
また、予約販売率も比較的高い傾向があるため、在庫確保などの管理面でも大きなメリットがあります。
なによりWeChat公式アカウントは、よほどのことがない限り、一時停止やアカウント閉鎖にはならないため、安定した販売が見込めるようになります。
さらに、WeChat公式アカウントと中国版TikTok抖音(Douyin)の連携は、しかるべき方法で行えば、合法的に可能なのです。
WeChat公式アカウントと中国版TikTok抖音(Douyin)の連携方法
しかるべきWeChat公式アカウントと中国版TikTok抖音(Douyin)の連携方法には、どのような方法があるのでしょうか。
具体的には、下記のような方法があります。
- 中国版TikTok抖音(Douyin)ショート動画の中で、WeChat誘導リンク貼り付け
- 中国版TikTok抖音(Douyin)ショート動画のコメント欄で、WeChat誘導リンク貼り付け
- 中国版TikTok抖音(Douyin)のライブ中にWeChat誘導リンク出現
- 中国版TikTok抖音(Douyin)のアカウントトップ画面にWeChat誘導リンクを表示
いずれも、中国版TikTok抖音(Douyin)で認められた方法ですが、決められた手順で行う必要があります。
その決められた手順とは、具体的には2つのステップで行います。
まず、巨量引擎(oceanengine)という広告管理プラットフォームに入り、中国版TikTok抖音(Douyin)内で自社のWeChat公式アカウントが表示されるように、ポップアップ表示設定を行います。
次に、ポップアップ表示設定が完了しましたら、中国版TikTok抖音(Douyin)ショート動画作成時やライブ中などに、そのポップアップのリンクを張り付けると、自社のWeChat公式アカウントへの誘導ができるようになります。
ポップアップ表示設定を凝ったものにしたい場合などは、別途ポップアップ専用編集ソフトを使うこともできます。
ブランド戦略上で、色や雰囲気を統一させたいなどデザインにこだわりたい方は、各種編集ソフトを使ってもいいでしょう。
また、WeChat公式アカウントへの誘導する際は、中国版TikTok抖音(Douyin)アカウントを企業アカウントに変更する必要があります。
企業アカウントについては、下記の記事で解説していますので、興味のある方はご覧ください。
中国版TikTok抖音(Douyin)抖音の企業アカウントを利用して、中国で商品を宣伝し販売力アップ! | CRESON Media | 中国SNS動画・越境EC支援のクレソン
連携時の注意点
先ほど紹介した連携方法は、中国版TikTok抖音(Douyin)で公式に認められた方法であり、危険性は全くありません。
一方で、公認されていない方法で連携している事例が多くあります。
中国版TikTok抖音(Douyin)運用ルールを知らない場合は、非公認の方法の方が、複雑なシステムを使わず、簡単にできてしまうためです。
しかしながら、公認されていない方法で連携した場合には、中国版TikTok抖音(Douyin)アカウントが停止されるだけはなく、信用ランクも下がる危険性がありますので、注意が必要です。
悪意なくWeChat公式アカウントへの誘導した場合でも、見つれば当然ながら中国版TikTok抖音(Douyin)から指摘や制限を受けます。
よく陥りがちな、その非公認の誘導方法を紹介したいと思います。
まず、最も多いのは、巨量引擎(oceanengine)という広告管理プラットフォームを通さず、自社のWeChat公式アカウントのURLリンクを、そのままショート動画やコメント欄に張り付けてしまうパターンです。
WeChat公式アカウントへの誘導は、中国版TikTok抖音(Douyin)では広告の一種と位置付けられており、必ず巨量引擎(oceanengine)を通して、リンクを作成する必要があります。
そのままWeChat公式アカウントのURLリンクを張り付けることは、最も気軽にできる方法ですが、運用ルールに違反しますので、注意が必要です。
次に多いのが、電話番号やショートメッセージの連絡先を、コメントなどに張り付けて、WeChat公式アカウントへの誘導する方法です。
これについても、中国版TikTok抖音(Douyin)の運用ルールに違反します。
3番目に多いのが中国版TikTok抖音(Douyin)ライブ中に、ライバーがWeChat公式アカウントへの誘導を行うケースです。
中国版TikTok抖音(Douyin)では、ショート動画だけなく、ライブ内容も監視されています。
みつかった場合は、アカウントの一時停止や指摘を受けることになりますので、注意しましょう。
その他、ショート動画の中のBGMにWeChat公式アカウントへ誘導する音楽を入れるなどがあります。
ところが、現在では中国版TikTok抖音(Douyin)のシステム上で、そのような動画投稿は、承認されないようになっています。
WeChat公式アカウントと中国版TikTok抖音(Douyin)連携の成功事例
老饭骨
実際に、WeChat公式アカウントと中国版TikTok抖音(Douyin)を連携して、成功している事例がありますので、ここでは実際のアカウントを紹介しながら、成功事例を解説したいと思います。
1つ目は、老饭骨という、料理番組のアカウントです。
老饭骨では、刘建明を代表とする有名料理人がユーモアも交えながら、様々な伝統中国伝統料理を調理し、紹介しています。
中国版TikTok抖音(Douyin)のフォロワーは1329万人であり、料理人や主婦層に圧倒的な人気を誇ります。
老饭骨は、中国版TikTok抖音(Douyin)からWeChat公式アカウントやWeChatの中のグループチャットへの呼び込みにも成功しており、実際、WeChat公式アカウント内での販売も非常に活発です。
老饭骨がWeChat公式アカウントへの連携がうまくいっている要因を分析すると、下記のようにまとめることができます。
- 中国版TikTok抖音(Douyin)上で唯一無二の地位を築いたこと
- フォロワーのニーズをうまくくみ取っていること
まず、老饭骨は、中国版TikTok抖音(Douyin)を始めたのは2019年2月という後発組ではありましたが、圧倒的な料理のレベルとユーモアで、唯一無二の地位を築きました。
10本の動画を投稿しただけで、すぐにフォロワーが100万人に達し、その後は毎月70-100万人フォロワーが増えていきます。
つまり、中国版TikTok抖音(Douyin)上で、老饭骨はブランド化に成功していたのでした。
フォロワーが増えた後、老饭骨は、中国版TikTok抖音(Douyin)上で、フォロワーグループ(中国語:粉丝群)を作ります。
ここで、中国版TikTok抖音(Douyin)のフォロワーグループとは、一定条件を満たすフォロワーだけが入れるグループです。
フォロワーグループに入ると、そのグループ内で特別な通知や割引券などを取得することなどができるようになります。
老饭骨は、フォロワーのニーズに合わせて、複数のフォロワーグループを作り、フォロワーのニーズをうまくくみ取り、フォロワーとの結束性を高めていきました。
それと同時に、WeChat公式アカウントも開設しますが、WeChat公式アカウントのフォロワーグループではより細分化し、各ユーザーのニーズに細かく対応します。
実際、老饭骨のWeChat公式アカウントでは、「料理学習グループ」、「買い物グループ」、「専門調理師グループ」などすべてで31のグループが作られています。
また、老饭骨の場合、中国版TikTok抖音(Douyin)からWeChat公式アカウントへの連携は、基本的に、システムや広告を使って誘導しているわけではありません。
中国版TikTok抖音(Douyin)では老饭骨に少し興味を持っているフォロワーグループに集まり、WeChat公式アカウントでは老饭骨でより深く学びたいフォロワーが集まる仕組みが自然と形成されているのです。
老饭骨のブランド化に成功していることと、フォロワーのニーズに合わせたフォロワーグループの設計がうまくいっている例と言えるでしょう。
老饭骨のWeChat公式アカウントでのコンバージョン率(商品を購入したユーザー数 ÷ サイトにアクセスしたユーザーの総数 × 100(%))は10%前後を維持しており、WeChat公式アカウントではかなりヘビーなフォロワーがいることがわかります。
方塘易经
方塘易经は、易経という、万物の真理を紐解いた中国経典を解説している中国版TikTok抖音(Douyin)アカウントです。
方塘易经が、特別人気というわけではありませんが、E-ラーニング系ビジネスにおいて、WeChat公式アカウントでの呼び込みに成功している比較的有名なアカウントです。
方塘易经の中国版TikTok抖音(Douyin)の動画を見ると、画面下に「立即报名(日本語:すぐにサインイン)」というポップアップが表示されます(最も左側の写真)。
次に、進んでいくとQRコードの画面(真ん中の写真)が表示されます。
このQRコードを読み込むと、WeChat公式アカウントへ自動で飛び(最も右側の写真)、WeChat内でコミュニケーションができるようになり、E-ラーニングを受けることができるという仕組みです。
別のアカウントではありますが、下記のような画像に、携帯電話番号を入力し認証を完了すると、QRコードの画像が表示されるパターンもあります。
いずれも、中国版TikTok抖音(Douyin)アカウントの動画を見て興味を持ったユーザーに対し、直接WeChat公式アカウントへ呼び込みを行おうとするものです。
WeChat公式アカウントと中国版TikTok抖音(Douyin)を連携することで実現できるマーケティング戦略のまとめ
WeChat公式アカウントと中国版TikTok抖音(Douyin)がうまく連携すると、中国版TikTok抖音(Douyin)の集客力を活用しながら、WeChat公式アカウントにて細かい顧客管理を行うことで、安定的な経営ができるようになります。
中国ビジネスで苦戦している日本企業を見ていると、自社のWeChat公式アカウントを持ってはいるが、なかなか活用しきれていない企業が多いです。
中国版TikTok抖音(Douyin)でプロモーションを行い、自社のWeChat公式アカウントの連携を図ることで、マーケティング戦略の幅は大きく広がります。
中国版TikTok抖音(Douyin)は、中国で最も中国消費者に受け入れられているプラットフォームでもありますので、この機会に中国版TikTok抖音(Douyin)の活用の検討をしてはいかがでしょうか。
最後に
以上、WeChat公式アカウントと中国版TikTok抖音(Douyin)を連携することで実現できるマーケティング戦略、その背景にあるトレンドの変化、注意点などについて、解説しました。
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