中国マーケティングでは、中国祝日に関連したキャンペーンを活用することが大切です。
なぜなら、中国祝日には、中国消費者の財布の紐が緩みますので、企業にとっては絶好の販売機会となるためです。
直近で大きな中国祝日と言えば、10月1日から10月6日までの国慶節です。
この記事では、国慶節マーケティング戦略における、成功事例と新たなアプローチによる顧客獲得について、紹介していきます。
国慶節マーケティング
国慶節とは
国慶節とは、中国建国記念日である10月1日を祝日とし、その祝日以後の休日を含めた連休を指します。
もともと、毛沢東国家主席が1949年10月1日に中華人民共和国の成立を宣言したため、この日が中国の建国記念日とされています。
2023年では、10月1日から10月6日までが国慶節です。
さらに、中秋節と呼ばれる祝日(日本の十五夜に相当する祝日)が9月29日にあります。
そのため、土日も合わせると、中国では、2023年9月29日~10月6日までの8日間が休みになります。
国慶節での中国消費者行動の特徴
国慶節で中国消費者は、どのように過ごすのでしょうか。
中国では国慶節と並ぶ大型連休として、1月末~2月初旬にかけての春節があります。
春節では、故郷に戻るのが一般的です。
一方、国慶節では、春節ほど故郷に戻るという認識はなく、レジャーや旅行などを楽しむというのが一般的です。
もっとも、2022年度の国慶節では、ゼロコロナ政策が厳格に運用されていた時期だったため、旅行を楽しむどころではありませんでした。
ところが、ゼロコロナが始まる前までは中国国内のみならず、海外旅行に出かける中国人が多くいたのです。
実際、2019年の国慶節の間に、中国国内旅行客だけで7億8,200万人、観光売上は6,497億1,000万元(現在レートで13兆円相当)でした。
中国ECマーケットでも、旅行グッツやキャンプグッツが良く売れるなどの傾向があります。
また、ゼロコロナ政策中は、外食しにくい状況だったため、自宅で一家団欒の食事を楽しめる火鍋調味料などが良く売れるという新たなトレンドが生まれていました。
2022年の国慶節の売れ筋商品
実際に、2022年の国慶節ではどのような商品が売れたのかについて、中国最大ECマーケットを運用するアリババのレポートをもとに紹介していきたいと思います。
2022国庆消费趋势观察(日本語:2022年国慶節消費トレンド考察)によれば、下記のトレンドが示されています。
- 輸入品では、アウトドア用品などが売れた
- グリーン家電がよく売れた
- 家具とペット用品の売上が伸びた
- XRデバイスがECマーケットに大きく貢献
- 農村部の消費が旺盛に
1つ目の、輸入品では、アウトドア用品、スポーツ用品、キャンプグッツ、釣り竿、バイク用ヘルメット、サプリメント含む食品などの販売増加が目立ちました。
その中でも、アウトドア用品、サプリメント、ペット用品、食品、家具の品目は前年同期比2桁の伸びでした。
日本、タイ、韓国、マレーシアなど、中国から飛行機で4時間圏内の国の商品が大部分を占めていることも特徴のひとつです。
2つ目の、2022年の国慶節の新たな動きとして、グリーン家電の販売額が前年同期比で伸びました。
少し国際的アピールも含まれていると思いますが、アリババのレポートには、グリーン家電の売上が貢献した累計炭素削減量は1万1400トンに達したと発表されており、この販売額が伸びは地球環境に大きく貢献したことが示されています。
また、グリーン家電の消費が最も盛んな5都市の発表もあり、重慶、上海、成都、鄭州、長沙で、最もグリーン家電が売れています。
グローバルTモールでは、10月におけるヨーロッパブランドの低エネルギー消費暖房器具製品が前月比で300%増加しており、地球にやさしい暖房器具が売れていました。
3つ目について、家具とペット用品の売上が伸びました。
特に、輸入家具の売上は前年比で50%越え、輸入ペットフードは200%、ペット服飾・おもちゃなどは80%以上伸びました。
厳しいゼロコロナ規制により、家にいることを選択する中国消費者が多く、家具やペットにお金をかけたいというニーズが出てきたことが背景としてあります。
4つ目のXR (Extended Reality)デバイスという、拡張現実の関連機器の売上が伸びただけではなく、XRデバイス自体がライブコマース全体の売上に大きく貢献しました。
まず、XRデバイスそのものの売上は、前年比で330%伸びました。
さらに、XRデバイスを使ったタオバオライブコマースでは、食品関連のお店では238%売上が伸び、ペット用品店舗では180%売上が伸びたという結果報告が出ています。
5つ目のトレンドは、農村部の消費が旺盛になったことです。
2022年10月1日から5日にかけて、中国中西部(内モンゴル自治区、寧夏回族自治区、甘粛省、新疆ウイグル自治区、陝西省、四川省、重慶市、青海省、貴州省、雲南省など)の住民の消費が旺盛になっていました。
特に、グローバルTモールでの輸入品全体の取引額は前年同期比で2桁の伸びを示しています。
実際、中国農村部の消費が盛んになっており、輸入消費の伸びで見ると、中国都市部よりも、中国農村部の方が上待っている状態なのです。
国慶節での新たなアプローチによる顧客獲得
中国版TikTok抖音(Douyin)でのキャンペーン
国慶節での売れ筋商品の概要はわかったと思いますが、国慶節での新たなアプローチによる顧客獲得事例が出てきていることにも注目です。
これまでの国慶節での商品販売においては、インフルエンサーに商品紹介の動画を流しもらう、或いはきれいなライブ会場でライブコマースを実施していくというのが一般的でした。
ところが、現実には、話題性やインフルエンサーの人気があったとしても、実際に商品購入までには至らないことが多いのです。
2022年の国慶節での新たなアプローチの代表格として、中国版TikTok抖音(Douyin)の「抖音国庆好物季(日本語:Douyin国慶節良品キャンペーン)」というプレゼントキャンペーンを挙げることができます。
そのキャンペーンの特徴を一言でいえば、「キャンペーン全体の雰囲気」、「商品」、「インフルエンサー」の親和性の一致でした。
国慶節という連休中に、中国版TikTok抖音(Douyin)のキャンペーンに参加するということは、明らかに自宅で休日を過ごすことを選択しているユーザーです。
そのため、「キャンペーン全体の雰囲気」は、自宅で何をしようかと考えている人が集まり、面白いものや、自宅で使える便利なもの、ワクワクさせてくれる何かを欲している期待感あふれる雰囲気なのです。
次に、「商品」について、「抖音国庆好物季(日本語:Douyin国慶節良品キャンペーン)」では、どれも自宅で遊べる商品や自宅で必ず使用する商品が紹介されていました。
例えば、変声機のおもちゃや、アヒルの形をした面白マスク、乳液などです。
ほとんどすべてが自宅にいて、欲しいと思わせるような商品ばかりだったのです。
最後に、「インフルエンサー」について、网不红萌叔Joeyというお笑い系のインフルエンサーが採用されていました。
网不红萌叔Joeyは、テンションが高く、自宅のような場所にて、自然なリアクションで福袋の中身を開けて紹介していったため、広告感をあまり感じることなく、多くの中国消費者にキャンペーンが受け入れられました。
そのほか、「抖音国庆好物季(日本語:Douyin国慶節良品キャンペーン)」では、ハッシュタグの使い方も上手でした。
例えば、我的国庆7天宅家计划(日本語:私の国慶節は7日間在宅の計画) は7900万再生、感觉全抖音都收到了国庆礼盒(日本語:中国版TikTok抖音(Douyin)ですべての国慶節プレゼントを受け取った感じがする)は630万再生、有了国庆礼盒也算是有宠物了(日本語:国慶節プレゼントがあればペットがいるのとほぼ同等)は310万再生を達成します。
最も、「抖音国庆好物季(日本語:Douyin国慶節良品キャンペーン)」では、21億回再生を記録し、キャンペーンに参加したブランドの売上にも大きく貢献しました。
キャンペーン後でも継続的に顧客との関係維持が可能に
「キャンペーン全体の雰囲気」、「商品」、「インフルエンサー」の親和性が高まれば、顧客獲得が容易になることは分かったと思います。
ところが、最近では、キャンペーン後に売上維持ができないことが問題視されています。
キャンペーン時には、非常に盛り上がり、売上も一気に上がりますが、キャンペーンが終わった途端に、顧客が一気に離れ、売上が維持できないことが往々にしてあるのです。
また、キャンペーン中の商品販売価格は極端に低く設定されていることがほとんどの為、売上は伸びたが、利益額で見るとそれほどメリットがないことも問題のひとつです。
このような問題に対しては、中国版TikTok抖音(Douyin)では、兴趣电商(インタレストコマース)という、新たなコンセプトで対策できます。
ここで、兴趣电商(インタレストコマース)とは、ユーザーの興味に基づき、中国版TikTok抖音(Douyin)が、特定の動画やライブを各ユーザーへリコメンドすることによって、潜在的なニーズを引き出して、ECでの売買を活発化させていくことを指します。
これまでのECモデルの購入プロセスは、ユーザー側でのニーズの明確化→ECプラットフォームで検索→購入、が基本でした。
一方、兴趣电商(インタレストコマース)では、ユーザーは、何気なく中国版TikTok抖音(Douyin)のショート動画を視聴し、動画の中で使用されている商品が欲しいという思いが湧いてきて、その商品を購入してしまうという、プロセスです。
つまり、一度キャンペーンに参加したユーザーは、中国版TikTok抖音(Douyin)のシステム内で、そのキャンペーンに関連するブランドやグッツに興味があると判断され、キャンペーン後も、関連するブランドの動画などがレコメンドされます。
レコメンド動画を視聴したユーザーは、再度興味がわいてきて、キャンペーン中でなくても、関連商品を購入してしまうのです。
このプロセス内では、キャンペーン時のように極端に商品価格を低くしなくてもよいため、適切な利益率の維持も可能になります。
さらに、兴趣电商(インタレストコマース)は、全域兴趣电商(全域インタレストコマース)へ、既にバージョンアップされています。
全域兴趣电商(全域インタレストコマース)は、ショートムービー・ライブコマース・モール・検索画面、すべての領域で兴趣电商(インタレストコマース)への入り口をユーザーへ提供し、消費者ニーズを満たしていくコンセプトです。
詳細については、下記の記事にて紹介していますので、驚異のある方はご覧ください。
抖音电商(抖音電商)とは? 中国版TikTok抖音(Douyin)のECが注目を集める理由とその特徴 | CRESON Media | 中国SNS動画・越境EC支援のクレソン
独身の日キャンペーンに合わせた戦略
国慶節が終わるとすぐに、独身の日というセールキャンペーンが行われることも忘れてはいけません。
中国EC上でのセールキャンペーンにおいては、双11(11月11日を「独身の日」のとして各店舗が大幅値下げを行う)が日本でも広く知られており、中国最大のECセールキャンペーンです。
国慶節キャンペーンが終了するのが10月初旬で、独身の日キャンペーンは11月初旬から始まります。
そのため、独身の日キャンペーンをターゲティングすると、国慶節キャンペーンはシーディング(口コミなどで徐々に認知度を上げていくことを指し、種まきとも言われる)としても位置付けることができます。
限られたプロモーション予算で、費用対効果を可能な限り高めようとするのでしたら、この2つの大きなキャンペーンを意識したマーケティング戦略を策定するのがよいでしょう。
国慶節マーケティング戦略の成功事例
凡士林(ヴァセリン、vaseline)
国慶節マーケティングの特徴と新たなアプローチ方法がわかったところで、国慶節マーケティング戦略の成功事例を紹介していきたいと思います。
それは、凡士林(ヴァセリン、vaseline)というアメリカの乳液ブランドです。
凡士林は、先ほど紹介した「抖音国庆好物季(日本語:Douyin国慶節良品キャンペーン)」に参加したブランドのひとつです。
凡士林の乳液は、多くの女性にとって、日常的に使う商品です。
乳液は中国消費者にとっては必須アイテムであることと、期間的にも10月以降の乾燥してくる期間でもありました。
結果、自然な形で、非常に多くの中国消費者にアプローチすることができたのです。
さらに、兴趣电商(インタレストコマース)により、キャンペーン終了後でも、継続的な売上につなげることができました。
国慶節マーケティングの成功事例と新たなアプローチによる顧客獲得のまとめ
国慶節マーケティングでは、国慶節によく売れるものを扱うだけでは、成功することはできません。
「キャンペーン全体の雰囲気」、「商品」、「インフルエンサー」の親和性を意識しつつ、それを実現できる中国版TikTok抖音(Douyin)などのキャンペーンを活用すると成功率が高まります。
キャンペーン後の継続的な顧客維持や新規獲得ができるよう、長期的な目線に立った中国ECプラットフォームの選択や顧客へのアプローチを考えることも大事です。
10月1日の国慶節まで、4か月ほどの時間はありますが、シーディング(種まき)を含めると、今からマーケティング戦略を考えるのがおすすめです。
最後に
以上、国慶節マーケティング戦略における、成功事例と新たなアプローチによる顧客獲得について、解説しました。
弊社は現在、中国版TikTok抖音(Douyin)・小紅書(RED)を活用した中国SNSの運用代行や、中国への越境ECの支援などのサービスを展開しております。
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