中国の流行語は、その時代の中国社会や政治的な動向が反映されています。
つまり、中国の流行語の意味や影響を知るだけで、中国の社会などが見えてきます。
すべて中国語で表記されているため、日本人にとってはすこし難しいですが、一度わかると非常に面白く、中国ビジネスにも活用できます。
この記事では、中国流行語の意味や社会的背景、そして中国ビジネスへの活用について、紹介していきます。
中国流行語とは
中国社会を映す鏡
中国では、日本と同じように定期的に流行語が選ばれ、その年を代表する言葉がメディアなどで発表されています。
中国の流行語は単なる言葉の羅列以上の意味を持ち、深い社会的背景を持っています。
中国一般の人々の意識や価値観だけでなく、時には中国政策に対する中国国民の暗示的な訴えを読み取ることができることもあります。
例えば、「996」は、2018~2019年に中国でよく使われた流行語の一つです。
この流行語の意味は、午前9時から午後9時まで、一週間に6日働くという勤労状態を指します。
これは中国のテクノロジー企業やスタートアップ企業で一般的な勤労状態では、労働者の過度な労働時間と労働条件を問題視する声を象徴しています。
当時、アリババの創始者であるジャック・マーは、アリババ社内の講話やWeibo(微博)で、「996」を肯定し、「996で働けることは幸せなことであり、若い時に努力をしなければ成功を手にできない」とコメントしました。
【「996」についてコメントしたジャック・マーのWeibo(微博)、当時4万人以上のコメントがあった】
これらのコメントが中国社会でも大きな話題となり、中国の最も大きなメディアである人民網でも取り上げられました。
もう一つの事例として、「躺平」というの言葉が、2021年の流行語に選ばれました。
「躺平」とは、もともと競争社会におけるストレスやプレッシャーから離れ、自分のペースで生きることを表現しています。
中国の若者たちは、日本とは比べものにならないほど、社会の厳しい競争と急速な変化に直面しています。
このような過酷な状況にある若者の心理状況を理解する上でも、これらの流行語は重要な意味を持ちます。
実は、この流行語がはやった背景の一つとして、中国の厳しいコロナ政策に対して、中国国民がある程度妥協してほしいと考えていたということが関係しています。
つまり、この流行語には、国民生活のことも考慮してトーンダウンしてはどうかという、中国国民の暗示的な訴えも含まれているのです。
中国の流行語が持つ影響は、単なる言葉の範疇を超えています。
これらの言葉は、政府の政策に対する批判や社会の問題を浮き彫りにすることさえあります。
そのため、中国の流行語を理解することは、中国の文化と社会の動向を把握するうえで貴重な手がかりだと言えるでしょう。
ビジネスでも活用できる!?
中国流行語は、中国社会の動向を把握する貴重な手がかりとなるだけでなく、ビジネスでも活用できます。
中国でビジネスを展開する際には、中国のトレンドや流行を把握することが非常に重要です。
なぜなら、流行は人気商品や成長分野に大きな影響を与えるからです。
自ら流行を生み出すことも可能ですが、多大な時間と費用がかかります。
したがって、限られた資源の中で最大のプロモーション効果を得るためには、流行やトレンドに柔軟に対応することが賢明です。
特に、中国の流行は、他国と比べて急速に変化する傾向があります。
これには、人口動態の変化や地域文化の多様性、頻繁な政府政策の変更などが影響しています。
日本などと比較して、比較的安定した経済状況や統一された国民性とは異なる環境であることを理解する必要があります。
2023年の中国流行語トップ10
1~3位
中国流行語の重要性が分かったところで、2023年の中国流行語トップ10を紹介したいと思います。
まず、2023年の中国流行語トップ10は、以下の通りでした。
- 新质生产力(新たな質の生産力)
- 双向奔赴(双方の心の距離が縮まる様子)
- 人工智能大模型(AI大型モデル)
- 村超(村サッカー·スーパーリーグ)
- 特种兵式旅游(特殊部隊式旅行)
- 显眼包(目立っている人)
- 搭子(仲間)
- 多巴胺(ドーパミン)
- 情绪价值(情緒的価値)
- 质疑〇〇,理解〇〇,成为〇〇(〇〇を疑い、〇〇を理解し、〇〇になる)
※()は日本語訳
日本語訳でも何を意味するのか、中国社会でどんな影響があったのか、わからないと思いますので、解説していきますね。
1位の新质生产力(新たな質の生産力)について、テクノロジーイノベーションによる生産力を指します。
従来の経済成長パターンを超越し、質の高い発展を促進することを意味します。
これはデジタル時代に特有の融合性を持ち、新しい意味を体現する概念でもあります。
中国総書記である習近平が、この概念に初めて言及したことでも有名です。
2位の双向奔赴(双方の心の距離が縮まる様子)について、関連する人々や国々が共通の目標に向かって努力し合い、互いに歩み寄ることを指す言葉です。
この中国流行語は、人々や国々の関係における理想的な願いを表現し、現在では国家間の関係にも適用されるようになっています。
3位の人工智能大模型(AI大型モデル)について、10億個以上のパラメーターと豊富な計算資源を有するAI機械学習モデルを指します。
世界では「ChatGPT」が流行っていますが、中国でも百度(Baidu)の生成AI「文心一言」などはすでに、中国社会のビジネスにおいて、幅広い影響を及ぼしています。
AI大型モデルの応用が進むにつれて、プライバシー保護や情報セキュリティなどに対する懸念も深まっているのも事実です。
4~6位
続いて、4~6位の中国流行語を紹介していきますね。
4位の村超(村サッカー·スーパーリーグ)について、中国農村で開催されるサッカーリーグを指します。
例えば、貴州省黔東南苗族侗族自治州榕江県では、中国サッカースーパーリーグであるCSL(China Football Association Super League)に似た「村サッカーリーグ」を開幕しました。
結果として、貴州省の観光収入が1.3億元(26億円相当)になるなど、大きな話題となりました。
観客数やインターネットでの視聴回数など、さまざまなデータが過去最高記録を更新し、農村で開催されるスポーツ大会が大人気となっています。
これは「国民健康づくり」や「小康社会」の実現、農村経済の振興にとって重要な意義を持っていると、中国現地では言われています。
5位の特种兵式旅游(特殊部隊式旅行)について、特殊任務を遂行するかのように、旅行者が短時間かつ少ない費用で、できるだけ多くの観光スポットを訪れる新しい旅行スタイルを指します。
この中国流行語は、旅行スタイルに際立った特徴があることを示しており、「特殊部隊式観劇」や「特殊部隊式会議」などの派生流行語も生まれ、さまざまなシーンで利用されています。
中国観光業界では、特定グループの人々による、特定の段階における消費行為だと言われています。
さらに、「きれいな写真を撮影して、それをSNSに投稿したい」といったグループで関わり方を重視する若い世代のニーズに合わせて、SNS映えする観光スポットの開発などが盛んにおこなわれています。
6位の显眼包(目立っている人)について、外見や性格から注目を集める人のことを指します。
もともとこの言葉は以前は、否定的な意味合いで使われましたが、今では褒め言葉として使われることが増えています。
显眼包(目立っている人)は、外見だけでなく内面からも活力を溢れさせ、可愛らしくユーモラスで楽しい気分にさせる存在としての象徴になりつつあります。
7~10位
一気に、7~10位の中国流行語を紹介していきます。
7位の搭子(仲間)について、仲間を意味します。
搭档はもともと田舎の方言で、「牌搭子(トランプ仲間)」を指していました。
その意味は徐々に広がり、何かを一緒にする仲間を指すようになりました。
現在中国で流行している搭子は、新しい交友関係のスタイルを示しており、中国の若者はさまざまな活動に参加する搭子や行動を共にする搭子を見つけます。
例えば、一緒にご飯を食べに行く仲間のことは、「飯搭子」と呼ばれています。
8位の多巴胺(ドーパミン)について、脳で合成される神経伝達物質であるドーパミンを指します。
中国では、彩度の高い色合いや鮮やかな色合いの服装が「ドーパミン・ドレッシング」と呼ばれ、流行しました。
また、「ドーパミン」は楽しい気分をもたらすものを形容する言葉としても使われ、さまざまな場面で使われています。
9位の情绪价值(情緒的価値)について、人間関係を描写する際に使われる言葉として使われます。
少し理解が難しいのですが、具体的には、他の人の感情に影響を与える能力を指します。
もともとマーケティング学の概念で、消費者が感じる感情的価値と、それにかかるコストの差を意味する言葉でした。
今では、例えば、他人を快適にしたり楽しませたりする能力が高い人ほど、情绪价值(情緒的価値)が高いと表現されています。
10位の质疑〇〇,理解〇〇,成为〇〇(〇〇を疑い、〇〇を理解し、〇〇になるについて、人気ドラマ「愛情公寓(iPartment)」から派生したフレーズです。
人気ドラマ「愛情公寓(iPartment)」では、女性である主人公が男性からのプロポーズを断り、仕事で成功することを目指します。
当初、この彼女の選択に対して、多くの視聴者は理解できないという姿勢でしたが、ドラマが進むにつれ、彼女を理解し、だんだん彼女のように考えるようになっていきました。
人物の行動や選択に初めは疑問を持ちながら、時間がたつにつれ理解し、最終的には同じように行動する心の動きを表現しています。
流行語の中国ビジネスでの活かし方
中国流行語と中国SNSキーワードは関係している!?
中国ビジネスで必須な中国SNSですが、実は、中国流行語と中国SNSで流行っているキーワードは深い関係があります。
つまり、中国流行語は、中国SNS上でもキーワードとして扱われるため、投稿内容が伸びることが多くあります。
例えば、2023年の流行語8位であった多巴胺(ドーパミン)は、小紅書(RED)でも重要なトレンドワードでした。
小紅書(RED)では、ドーパミンファッションとして、非常に流行っていました。
ここで、ドーパミンファッションとは、派手な色のアイテムなどをファッションに取り入れることにより、周りの目を引き付けるあるいはハッピーにさせるファッションを意味します。
ドーパミンファッション関連のコンテンツは、2023年3-5月だけで、3.5億回以上再生されるという驚異的な記録をたたき出しています。
さらに、2023年5月時点の調査では、ドーパミンファッション関連の投稿数は、前月比200%以上伸びており、長期で継続して伸び続けているトレンドキーワードでもあります。
また、ドーパミンファッションは、ファッションだけなく、家具やグルメなどのコンテンツでも影響があり、他のジャンルでも人気になったコンテンツが多くありました。
流行語を上手に取り入れて中国ビジネスに活かそう
流行語10位には選ばれなかったものの、当時中国のSNS上で流行していたワードを活用して、中国ビジネスに活かしている事例もあります。
例えば、昨年中国SNSでは、「cleanfit」という言葉が流行りました。
「cleanfit」の意味は、シンプルファッションを指します。
また、流行にとらわれない、清潔感のあるファッションを指すこともあります。
「cleanfit」関連のコンテンツは、長期で安定的に閲覧されているのが特徴で、2022年から2023年5末においては、累計で約5億回再生されています。
「cleanfit」は、服、バッグ、小物製品などのファッションだけではなく、コスメ関連の投稿にも影響を与え、ヒットしたコンテンツが多くありました。
「cleanfit」は清潔感を意味するトレンドキーワードであることから、ニキビ跡を薄くする化粧水やシンプルなお化粧ノウハウなどでもパワーキーワードとして、使われ始めます。
実際、カネボウのfreepulsは、中国人気インフルエンサーである潘白雪sとタイアップで、小紅書(RED)にて口コミマーケティングを行う際「cleanfit」というキーワードを活用しました。
結果、freepulsは清潔感と関連付けたマーケティングを行うことに成功しています。
中国流行語と中国SNSで流行っているキーワードは、いつも全く同じわけはありませんが、共通する部分が多くあります。
投稿タイトルやタグに、中国流行語とキーワードを入れることで、再生数が大きく伸びることもあります。
中国のトレンドを把握するだけでも、中国マーケティング戦略に有効な一手になることがありますので、日々新しい情報の入手することが大切です。
最後に
以上、中国流行語の意味や社会的背景、そして中国ビジネスへの活用について、解説しました。
弊社は現在、中国版TikTok抖音(Douyin)・小紅書(RED)を活用した中国SNSの運用代行や、中国への越境ECの支援などのサービスを展開しております。
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