2026年に入り、中国との貿易環境は大きな緊張局面を迎えています。
中国商務部は2026年1月、軍民両用品目を対象に日本への輸出管理を強化する措置を打ち出し、2月には三菱造船をはじめとする日本企業40社を「輸出規制管理リスト」「注視リスト」に追加しました。
出典:JETRO「中国、計40の日本企業・組織を輸出管理コントロールリストと注視リストに掲載」2026年2月26日 https://www.jetro.go.jp/biznews/2026/02/e4f19a798abdc080.html
これらは主に軍事関連・先端技術分野を対象とした措置であり、一般消費財を扱う企業に直接影響するものではありません。
しかし、こうした緊張が高まる状況だからこそ、日本企業は「中国へ輸出する際にどのような規制があるのか」「どのような準備が必要なのか」を正しく理解しておくことが、これまで以上に重要になっています。
この記事では、日本から中国へ商品を輸出する際の基本的な規制を、化粧品・食品といった具体的なカテゴリ別に整理し、香港を経由する貿易の実情についても解説します。
【この記事でわかること】
・日本から中国へ輸出する際に必要な基本的な手続きと規制の全体像
・一般的な日用品であれば、特別な輸出規制が少ない理由
・化粧品・食品を中国へ輸出する場合に必要な準備(時間・コスト)
・越境ECを活用すれば正式な登録手続きを簡略化できるケース
・日本→香港→中国という商流のメリットと注意点
中国へ輸出する際の基本的な規制

まずは、日本から中国へ輸出する際に押さえておくべき規制の全体像を解説します。
一般的な日用品は規制が比較的少ない
雑貨・衣料品・文房具などの一般的な日用品については、化粧品や食品と比べて、輸出にあたって特別な事前登録・許可が必要になるケースは少なく、通常の通関手続きで輸出が可能です。
ただし、商品によっては中国国家標準(GB規格)への適合や、中国語表示の義務付けなど、最低限の準備は必要になります。
「日用品だから何も準備しなくていい」と考えるのではなく、輸出先カテゴリごとの規制内容を事前に確認しておくことが、トラブルを避けるために不可欠です。
一般日用品でも実質的に輸出が難しいケース
一般的な日用品であっても、商品の形状や種類によっては、実質的に中国への輸出が難しいケースがあります。
代表的な例が、ピストルなど銃の形をしたおもちゃです。
中国では「仿真枪(模造銃)認定標準」に基づき、外形が銃器に類似する玩具は模造銃に分類され、輸出入が厳しく制限されています。
おもちゃとして日本国内で問題なく販売されている商品であっても、中国側の通関実務上は模造銃と同様に扱われ、通関で止められてしまうケースが少なくありません。
出典:递接物流「仿真枪, 玩具枪不能出口运输」 https://www.djcargo.cn/imitative-gun-forbidden-export/
形状そのものに起因する規制であるため、こうした商品を扱う場合は、輸出前にデザイン変更も含めた検討が必要です。
また、高級腕時計のように、輸出自体は形式上可能でも、実質的に採算が合わなくなる商品も存在します。
中国では高級腕時計が「消費税」(中国独自の特別消費税)の課税対象品目に指定されており、輸入関税・増値税(中国版消費税、16%)に加えて、この特別消費税が上乗せされる仕組みです。
出典:ミツトミ株式会社「初めての中国ビジネス、中国の関税を調べる方法」 https://mitsutomi.jp/china-duty-6148
複数の税が重なることで、中国国内での販売価格は日本国内よりも大幅に高くなり、現地での価格競争力を確保できず、結果的に利益が出ないという「実質的な輸出規制」ともいえる状況が生じます。
このように、法律上は輸出が禁止されていなくても、通関実務や税負担の観点から事実上輸出が難しい商品が存在することも、中国への輸出を検討する際に知っておくべき重要なポイントです。
化粧品・食品は事前準備が必須
一方、化粧品・食品は中国側の規制が厳格であり、本格的な輸出を検討する場合は、相応の時間とコストをかけた事前準備が必要です。
「中国マーケットに興味があるから、とりあえず化粧品や食品を売ってみたい」と考える企業は多いものの、規制を知らずに準備不足のまま進めると、輸出直前で手続きが止まってしまうケースは少なくありません。
次の章で、化粧品・食品それぞれの規制内容を具体的に解説します。
化粧品を中国へ輸出する場合の規制と準備

中国市場で化粧品を正式に販売するためには、NMPA(国家薬品監督管理局)への登録・登記が必須です。
NMPA登録・登記の仕組み
中国の化粧品は「特殊化粧品」と「普通化粧品」に大別されます。
以下のように新たな効能を訴求する化粧品は、「特殊化粧品」に分類され、NMPAへの「登録」(高度な審査を伴う制度)が必要です。
・染髪
・パーマ
・シミ取り
・美白
・日焼け止め
一方、それ以外の一般的なスキンケア・メイクアップ用品などは「普通化粧品」に分類され、NMPAへの「登記」(届出制度)で対応できます。
出典:WWIP「【中国】化粧品・歯磨き剤NMPA申請」 https://wwip.jp/cosme/
NMPA申請にかかる時間とコスト
NMPA登録・登記には、成分の安全性評価、検査資料の準備、中国語への翻訳など、専門的かつ煩雑な手続きが必要です。
特に2025年5月1日以降は、簡易版ではなく「完整版」の安全評価報告書の提出が必須となり、防腐剤チャレンジテストや製品の理化特性・安定性試験データなど、より詳細な分析・証明資料が求められるようになりました。
出典:CCIC JAPAN「中国向け化粧品NMPA申請に関する最新情報」 https://ccicjapan.com/news/%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E5%90%91%E3%81%91%E5%8C%96%E7%B2%A7%E5%93%81nmpa%E7%94%B3%E8%AB%8B%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E6%9C%80%E6%96%B0%E6%83%85%E5%A0%B1%EF%BC%9A2025%E5%B9%B45%E6%9C%881%E6%97%A5/
普通化粧品の登記であっても準備には数ヶ月単位の時間がかかり、特殊化粧品の登録ではさらに長期間(1年以上)を要するケースも珍しくありません。
申請費用についても、成分チェック・安全性評価・翻訳・検査機関への依頼などを含めると、相応の予算を確保しておく必要があります。
「化粧品を中国で売りたい」と思った時点から逆算し、半年〜1年程度の準備期間を見込んでおくことが現実的な計画につながります。
食品を中国へ輸出する場合の規制と準備

化粧品と同様に、食品の中国輸出にも独自の規制と準備が必要です。
中国語ラベルと製造施設登録
中国へ輸出する食品には、中国語ラベルの貼付が義務付けられています。
以下のような項目が必須表示とされており、GB7718(包装済み食品の表示に関する一般規則)などの国家標準に準拠することが必要です。
・食品名称
・配料表
・添加物
・栄養成分
・原産国
・製造者情報
・製造日
・賞味期限
・登録番号(CIFERなど)
出典:農林水産省「中国における食品関連規定『食品安全国家標準』解説」 https://www.maff.go.jp/j/kokusai/kokkyo/20251120.pdf
さらに、肉類・水産物・乳製品など特定の食品については、「輸入食品海外製造企業登録管理規定」に基づき、製造施設そのものを中国側のデータベース(CIFER)に登録する手続きが義務付けられています。
出典:農林水産省「中国向け輸出食品の製造等企業登録に係る規制への対応について」 https://www.maff.go.jp/j/shokusan/hq/kigyoutouroku.html
また、中国独自の食品安全国家標準(GB規格)への適合を証明する必要があり、成分・添加物の規制値が日本と異なる点にも注意が必要です。
事前準備が成功の鍵を握る
食品輸出においても、ラベル多言語対応・製造施設登録・GB規格適合証明といった準備には、相応の時間とコストがかかります。
特に製造施設登録は、一度限りの作業ではなく更新・維持管理が必要な手続きであるため、長期的に中国市場で食品を販売し続けることを前提とした投資判断が求められます。
JETROも、食品輸出にあたっては輸出可能な品目・食品規格・中国語ラベル表示の順守要否・製造企業登録の要否・税制など、留意すべき点が多いとして、事前の制度確認を強く推奨しているところです。
出典:JETRO「畜産加工品の輸入規制、輸入手続き(中国)」 https://www.jetro.go.jp/world/asia/cn/foods/exportguide/meatprocessedproduct.html
この市場機会を活かすためにも、「まずは規制を理解し、準備にかかる時間とコストを把握したうえで計画を立てる」という姿勢が欠かせません。
商品カテゴリ別 規制内容の一覧表

ここまで解説した日用品・化粧品・食品それぞれの規制の違いを、一覧表で整理します。
| 項目 | 一般日用品 | 化粧品 | 食品 |
| 事前登録・許可 | 原則不要(例外あり) | NMPA登録(特殊)/登記(普通)が必須 | 中国語ラベル義務、特定品目はCIFER登録必須 |
| 必要な準備期間 | 比較的短い | 数ヶ月(普通)〜1年以上(特殊) | 数ヶ月〜(製造施設登録を含む場合) |
| 主な準拠規格 | GB規格(該当する場合) | NMPA関連規定、安全評価報告書 | GB規格(GB7718等)、輸入食品海外製造企業登録管理規定 |
| 注意が必要な例外 | 模造銃に類似する形状の商品、高級品の税負担 | 新規成分は別途「新原料」申請が必要 | 肉類・水産物・乳製品は製造施設登録が必須 |
| 越境ECでの簡略化 | 対象外(規制が少ないため不要) | 電商総合税スキームの条件下で簡略化可能 | 電商総合税スキームの条件下で簡略化可能 |
越境ECを活用すれば手続きを簡略化できる

化粧品・食品の正式な登録手続きには時間とコストがかかりますが、越境ECを活用することで、一部の手続きを簡略化できる場合があります。
電商総合税スキームのメリット
中国では2016年以降、「電商総合税」と呼ばれる越境EC向けの優遇制度が整備されています。
中国国内の購入者が、税関に登記された越境ECプラットフォーム(天猫国際・京東国際など)を通じて、ポジティブリストに掲載された商品を個人使用目的で購入する場合、一般貿易とは異なる優待税率が適用されます。
出典:JETRO「中国における越境ECの概要と留意点」 https://www.jetro.go.jp/world/qa/J-210602.html
この仕組みのもとでは、一般貿易のように全面的なNMPA登録・食品製造施設登録を完了していなくても、一定の条件下で化粧品・食品の販売を開始できるケースがあります。
越境ECと一般貿易の違い
越境ECと一般貿易は、必要な手続き・コスト・販売規模の面で大きく異なります。
両者の違いを一覧表で整理すると、以下の通りです。
| 項目 | 越境EC | 一般貿易 |
| NMPA登録・食品製造施設登録 | 一定の条件下で不要(電商総合税スキーム) | 原則必須 |
| 初期コスト | 低い(登録手続きが少ない分) | 高い(登録・認証コストが発生) |
| 準備期間 | 短い(数週間〜数ヶ月) | 長い(半年〜1年以上) |
| 販売規模 | 購入者一人当たりの購入限度額あり | 制限なく大規模販売が可能 |
| 適した利用シーン | テスト販売・ブランド認知の拡大 | 本格的な量産・大量販売 |
| 主な利用プラットフォーム | 天猫国際、京東国際など | 一般の卸売・代理店ルート |
越境ECと一般貿易、どちらを選ぶべきか
越境ECは初期コスト・準備期間を抑えてスモールスタートできる一方、購入者一人当たりの購入限度額が定められているなど、販売規模には一定の制約があります。
中国市場でのテスト販売・ブランド認知の拡大には越境ECが適しており、本格的に大量販売を目指す段階になれば、NMPA登録・食品製造施設登録を完了させた一般貿易への移行を検討するという、段階的なアプローチが現実的です。
自社の商品・予算・目指す販売規模に応じて、越境ECと一般貿易を適切に使い分けることが、中国輸出を成功させるポイントとなります。
日本→香港→中国という商流について

中国への輸出を検討する際、「香港を経由すれば中国の規制を受けずに輸出できる」という話を耳にしたことがあるかもしれません。
本章では、三国間貿易の実情について詳しく解説します。
三国間貿易(中継貿易)の現状
実際、中国はかつて、香港などの第三国・地域を経由する三国間貿易(中継貿易)による中国への輸入を厳しく規制していました。
しかし、現在ではこうした規制は撤廃されており、中国を輸出先とする三国間貿易は、むしろ増加傾向にあります。
出典:JETRO「三国間貿易の留意点:中国」 https://www.jetro.go.jp/world/qa/04C-140101.html
つまり、「日本→香港→中国」という商流自体は、現在では問題なく行うことができる、正式に認められた貿易形態です。
香港は関税のかからない自由港であり、物流・通関の柔軟性が高いことから、中継貿易の拠点として広く活用されています。
「規制を受けない」という理解には注意が必要
ただし、ここで誤解しやすいポイントがあります。
香港を経由したとしても、化粧品のNMPA登録や食品の製造施設登録など、商品そのものの性質に基づいて中国国内で求められる規制は、原則として変わりません。
これらの規制は「どの国から輸出されたか」ではなく、「どのような商品を、どのような方法で中国国内に持ち込むか」によって適用される仕組みであるためです。
香港経由の商流は、貿易構造としての柔軟性・物流効率の面でメリットがある一方、化粧品・食品の登録義務を回避する手段ではないという点を正しく理解しておく必要があります。
正確な情報をもとに貿易スキームを設計することが、思わぬ手続きの遅延やトラブルを避けるために重要です。
中国越境ECの規制動向や活用方法については、下記記事でも紹介していますので、興味のある方はご覧ください。
中国越境ECの新規制 ビジネスの機会とその対策 | 中国SNS動画・越境EC支援のクレソン
【中国越境ECの基本】市場規模と運用のあり方及びおすすめプラットフォーム | 中国SNS動画・越境EC支援のクレソン
Tmall Global(国際天猫)の使い方:中国越境ECビジネスの始め方 | 中国SNS動画・越境EC支援のクレソン
中国への輸出はプロに相談するのがおすすめ!

中国へ化粧品・食品などを輸出する場合、NMPA登録や製造施設登録など、専門的な規制対応が求められます。
規制は品目やカテゴリによって細かく異なり、内容も随時更新されるため、自社だけで最新の規制動向を正確に把握し続けるのは容易ではありません。
また、越境ECと一般貿易のどちらを選ぶか、香港経由の貿易構造を活用すべきかなど、戦略設計には専門的な知見が必要です。
中国輸出への理解や実務ノウハウを持つプロに相談することで、規制対応のリスクを抑えながら、スムーズな輸出計画が立てられるでしょう。
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中国への輸出規制に関するFAQ

Q. 一般的な雑貨であれば、中国へ輸出するのに事前準備は不要ですか?
A. 化粧品・食品に比べると必要な手続きは少ないですが、まったく準備が不要というわけではありません。
中国国家標準(GB規格)への適合や中国語表示など、最低限のチェックは行っておくことをおすすめします。
また、形状や品目によっては「仿真枪(模造銃)」規制のように、見た目だけで通関が困難になるケースもあるため、注意が必要です。
Q. 化粧品のNMPA登録には、結局どれくらいの期間がかかりますか?
A. 普通化粧品の登記であれば数ヶ月程度、特殊化粧品の登録であれば1年以上かかるケースもあります。
成分の安全性評価や検査資料の準備状況によって期間は変動するため、早めに専門家へ相談することをおすすめします。
Q. 食品を中国へ輸出する際、すべての食品に製造施設登録が必要ですか?
A. すべての食品ではなく、肉類・水産物・乳製品など特定の食品カテゴリに製造施設登録(CIFER登録)が義務付けられています。
対象カテゴリかどうかは事前に確認が必要です。
Q. 越境ECを使えば、NMPA登録は完全に不要になりますか?
A. 一定の条件(電商総合税の適用条件)を満たす範囲内であれば、正式な登録なしで販売できる場合があります。
ただし、購入者一人当たりの購入限度額など制約があるため、大規模な販売を目指す場合は一般貿易への移行を検討する必要があります。
Q. 中国に輸出できないものは何ですか?
A. 中国には「中華人民共和国輸出入禁止貨物リスト」があり、武器・模造武器・弾薬・爆発物、偽造通貨・偽造証券、強力な毒物、麻薬・向精神薬、危険な病原菌や害虫を含む動植物、人体に有害な食品・医薬品などが輸入禁止品として定められています。
また、無線受信・送信機器や通信機密保持装置、タバコ・酒、絶滅危惧種の動植物(標本含む)などは「輸入制限品」に分類され、輸入自体は可能でも数量・許可などの制限を受けます。
さらに、国家の統一・主権を脅かす内容や、共産党批判・猥褻・暴力を助長する内容を含む印刷物・録音・録画製品なども、別途持ち込みが禁止です。
まとめ

以上、2026年最新の情報をもとに、中国への輸出規制について、一般日用品・化粧品・食品それぞれの規制内容と、越境EC・香港経由貿易の実情を解説しました。
弊社は現在、中国版TikTok抖音(Douyin)・小紅書(RED)を活用した中国SNSの運用代行や、中国への越境ECの支援などのサービスを展開しております。
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