中国からのインバウンド観光客は、いつから本格復帰するのでしょうか?
インバウンドビジネスに関係のある方であれば、非常に興味があるトピックだと思いますが、本格復帰する日は、実は間近に迫っています。
この記事では、中国からのインバウンド観光客はいつから来日可能なのか、回復予測と経済効果について、紹介していきます。
中国からのインバウンド観光客だけが復帰していない?!
訪⽇外国⼈旅⾏者の現状
訪日外国人インバウンドビジネスでは、実は、中国だけが復帰していません。
訪⽇外国⼈旅⾏者の現状を、簡単に見ていきたいと思います。
訪日外客数で見ると、コロナ前と比較して、既に回復または増加している国がある一方で、中国だけが著しく低い回復率です。
まず、外国人の訪⽇外客数の全体の数値を見てきましょう。
JNTO(Japan National Tourism Organization、⽇本政府観光局)によれば、コロナ前である2019年4月の訪⽇外客数は2,926,685人でしたが、2023年4月は1,949,100人でした。
2019年4月の訪⽇外客数を100%とすると、2023年4月では、約66.6%(1,949,100人/2,926,685人)回復している状況です。
次に、国別の訪⽇外客数回復率(2023年4月訪⽇外客数/2019年4月訪⽇外客数)で見ていきましょう。
韓国は82.4%、台湾は72.3%、フィリピンは90.07%回復しています。
米国、メキシコ、シンガポール、インドネシア、ベトナムでは復活どころか、コロナ前よりも訪⽇外客数が増加している状況です。
一方、中国の2019年4月訪⽇外客数は726,132人、2023年4月訪⽇外客数は108,300人でした。
中国の訪⽇外客数回復率は15%で、最下位の回復率なのです。
【訪日外客推移の図、⽇本政府観光局から抜粋】
日本以外の国に旅行へ行く中国人
中国からのインバウンドだけが回復していないという現状は分かったと思いますが、それでは、今、中国人はどこに行っているのでしょうか。
中国・上海市で設立されたオンライン旅行会社である携程(Ctrip)の調査報告によれば、2023年1月末あたり(中国のお正月時期)における、海外旅行先ランキングは下記の通りでした。
1位、オーストラリア
2位、タイ
3位、日本
4位、香港
5位、マレーシア
6位、米国
7位、シンガポール
8位、英国
9位、マカオ
10位、インドネシア
コロナ前である2019年の同時期の同レポートでは、実はタイと僅差で日本は2位でした。
【2019年中国人海外旅行先ランキング、携程春节旅游市场预测报告より】
※図の翻訳:泰国→タイ、日本、印度尼西亚→インドネシア、新加坡→シンガポール、越南→ベトナム、马来西亚→マレーシア、美国→アメリカ、澳大利亚→オーストラリア、菲律宾→フィリピン、意大利→イタリア、阿联酋→アラブ首長国連邦、柬埔寨→カンボジア、新西兰→ニュージーランド、英国→イギリス、西班牙→スペイン
さらに、現在、日本は、3位にはなってはいますが、1位のオーストラリアとは僅差ではなく、かなりの差があると考えられます。
理由は、携程の報告によれば、オーストラリア行きのチケットは、昨年比で50倍の伸びがあったと報告されています。
一方、参照データは異なりますが、⽇本政府観光局によれば、日本行きは20倍程度の伸びしかなかったためです。
実際中国人は日本に行きたいと思っている
中国人が日本に全く興味がなくなって、来なくなっているわけではありません。
実は、多くの中国人は日本に行きたいと思っています。
同じく携程の報告書によれば、ビザと合わせてインターネットで検索される国のランキングは、1位が日本なのです。
ちなみに、2位が韓国、3位がタイです。
メディアでは絶対に流れることはありませんが、中国現地にて中国人にヒアリングすると、決まって「早く日本に行きたい」という強い声もあります。
中国からのインバウンドが未だに復活していない3つの理由
中国人の日本ビザ取得が困難なこと
では、中国人が日本に来ることができない理由は何なのでしょうか。
主な理由は、下記の3つです。
- 日本ビザ取得が困難なこと
- 日本への飛行機チケットが入手困難なこと
- 飛行機チケットが高騰していること
1つ目の、日本ビザ取得が困難なことについて、中国現地では、イタリアやフィリピンはじめ多くの国への団体旅行が認められています。
一方、中国から日本への団体旅行は、つい最近まで認められていませんでした。
日本への団体旅行が不可であれば、中国人個別で日本ビザ申請を行う方法があります。
しかしながら、年収20万元(400万円相当)の収入証明が必要など、ハードルは高い状況が続いていました。
2023年の一般企業に勤める中国全国平均給与所得は、10万元(200万円相当)ですから、大半の中国人が日本へのビザ申請が行うことができない状態だったのです。
日本への飛行機チケットが入手困難なこと
2つ目の、日本への飛行機チケットが入手困難なことについて、コロナ以前の中国⇔日本間の飛行機は一週間に50便以上ありました。
ところが、最近まで一週間に10便くらいしかありませんでした。
日本への飛行機チケットを入手したくても、便の数が少なく、すべてが予約済みで、買うことができなかったのです。
飛行機チケットが高騰していたこと
3つ目の、飛行機チケットが高騰していたことについて、2023年に入ってからは、往復で1万元(20万円相当)するのが恒常化していました。
コロナ前は3,000元(6万円円相当)以上でしたので、約3倍以上の価格に高騰していたのです。
一人の旅行ならまだ耐えられるかもしれませんが、家族旅行となると、さすがに、厳しい金額と言わざるを得ないでしょう。
さらに、別途料金を支払い、PCR検査の結果提示が必要など、追加の費用負担を要していたのです。
回復予測と経済効果
いつから復活するのか
中国人が日本へ訪問するのが困難な状況は、いつ解決し、いつから中国のインバウンドが復活するのでしょうか。
結論から伝えると、既に2023年4月ごろから徐々に回復してきており、7月ごろから回復スピードが上がるのではないかと考えられます。
背景には、前述した中国からのインバウンドが未だに復活していない3つの理由が、すべて解決され始めてきたのが関係しています。
まず、日本向けの団体旅行ツアーが解禁され、日本ビザ取得も徐々に容易になっています。
2023年5月26日、岸田首相による外国人観光客受け入れ再開の発表の通り、2023年6月10日以降、団体ツアー(団体旅行)での来日が可能になりました。
ワクチン接種の有無に関係なく、入国時のPCR検査や入国後の自宅等待機も不要です。
5年の長期訪問ビザについても、収入額による制限は完全に撤廃されたわけではありませんが、かなり緩和され、ある程度の収入を得ている中国人であれば、申請できるようになりました。
また、日本への飛行機チケットについては、ANAや中国東方航空などの多くの航空会社が、2023年4月から中国と日本の間の便を増やしていくという報道がありました。
実際に、未だにいくつかの航空会社は復帰していませんが、大きな航空会社はコロナ以前と同じように便を増やして、運用されています。
飛行機チケットの価格についても、4月以降の飛行機チケット代は往復で10,000元(20万円)以下になっています。
6月中旬時点では、以前の価格よりは少し高いですが、4,000元(8万円相当)のチケットも出てきています。
全体として、コロナ前に完全に復活したとは言えませんが、6月中旬時点では、だいぶ以前に戻りつつある状態であることは間違いありません。
実は、中国⇔日本へのビザ制限や飛行機チケット入手が困難なことについて、中国国内の不満が中国現地ではありました。
メディアなどでは報道されておりませんが、ロビー活動などを通して、緩和されてきた背景があります。
復活したときの経済効果
中国からのインバウンド観光客が本格復帰したときの経済効果は、凄まじいインパクトがあります。
訪⽇外客数と消費額の2つの観点で、その経済効果を見てみましょう。
まず、訪⽇外客数から見ると、コロナ前である2019年における中国人の訪⽇外客数は、各国内訳別で見ると、約3割を占めていた状態でした。
仮に、中国の訪⽇外客数が100%回復すれば、訪日外客数で見ただけでもインバウンドは、約66.6%→約90%へ大きく回復するほどの影響力を持っています。
これは、2019年4月に日本に訪問した中国人の数が726,132人で、2023年4月のそれが108,300人ですので、約600,000人(=726,132人-108,300人)が追加で日本へ訪問すれば、訪日外客数はちょうど2019年の90%(=2023年4月訪日外客数1,949,100 人+約600,000人/2019年訪日外客数2,926,685人)に達する計算です。
そのぐらい日本経済にインパクトのある中国人が、未だに日本に来ていないのです。
次に、消費額の観点から見ていくと、日本に来る外国人の一人当たりの消費額が大きくなっている傾向があり、これが今後訪日する中国人にも当てはまるのであれば、大きな経済効果が期待できます。
具体的には、観光庁や⽇本政府観光局の統計データを分析すると、日本コロナ前の2019年の一人当たり消費額は、15.9万円でしたが、2022年10-12月期においては、一人当たり消費額は21.2万円になっています。
この背景には、諸外国が物価高であらゆるものが高騰しているのにかかわらず、日本の物価はそれほど変わっていないことが関係しています。
さらに、円安が続いており、外国人にとっては、自国通貨を日本円に換えて買い物することで、日本の物がかなり安く買えることも影響しています。
実際に日本にいると気づきにくいですが、諸外国では、毎年1-3%の物価の値上がりは当たり前です。
中国でも、物価の値上がりは当然のこととしてあり、さらに、中国の自国通貨である中国元は日本円に対して高値の状態です。
それを踏まえると、日本に来る中国人の消費額は、諸外国と同様に高くなる傾向にあることは、ほぼ間違いないとみていいでしょう。
あくまで試算ですが、中国からのインバウント観光客が本格復活したときの経済効果は、1.9兆円(=一人当たり消費額21.2万円×本格復帰したときの中国人訪問増加人数900万人【2019年の中国人訪日人数約1千万人-直近1年の中国人訪日人数試算約百万人】)のプラス効果になります。
日本のGDPが500兆円だとすると、約0.4%プラスの経済効果があります。
中国からのインバウンド観光客の消費における懸念点
これまでデータ分析に基づき、試算を行ってきましたが、中国からのインバウンド観光客の消費における懸念点が0というわけではありません。
例えば、日本と中国間の国際政治上の対立は続くものとみられ、中国政府側からの日本への渡航禁止や制限がいつ発令されてもおかしくない状況であることは覚悟しておく必要があります。
また、中国人の消費行動の変化にも注目しておきましょう。
中国では、既に中国ECモールなどで、必要な日本製品はいつでも購入できる環境です。
中国製品自体のクオリティも上がってきており、安くても長年使える電化製品なども出てきています。
2015年頃のような爆買いはあまり期待できず、これからは、ある程度目利きのできる中国人消費者を相手にすることになるになるでしょう。
中国からのインバウンド観光客が本格復帰!いつから来日可能?回復予測と経済効果は?のまとめ
中国からのインバウンド観光客が本格復帰する日は間近に迫っており、既に秒読み段階であることがわかったと思います。
周りの中国人の友人にも、既に日本行き団体ツアーを申し込み済みの方がおり、多くは7月初旬や中旬出発です。
5年の長期ビザを既に取得した中国人は、7月中旬から中国の学校が休みになることから、7月から日本に家族で行く予定だと楽しそうに語ります。
一方、日本にいると、これまで日本国内感染情報や中国ゼロコロナ政策などマイナスな雰囲気が世界を覆っていたため、明るい情報が見えにくくなり、各種メディアも暗い見通しばかり報道しています。
統計データで出るときには、既に競合に追い抜かれている可能性もありますので、今こそ思考の転換を行い、中国からのインバウンド観光客が本格復帰してもいいように、準備しておくことをお勧めします。
また、一人当たりの消費額も大きくなることが予測され、高付加価値サービスの検討や価格の再設定も早めに行っておくのがよいでしょう。
最後に
以上、中国からのインバウンド観光客がいつから来日可能なのか、回復予測と経済効果について、解説しました。
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