ローカライズの明暗|中国市場で成功する企業・失敗する企業の差とは

巨大な消費市場として世界中の企業を惹きつける中国ですが、参入企業の命運を分けるのは「ローカライズ」の質にあります。

ローカライズにおいては、単なる言語翻訳ではなく、文化・消費習慣・価値観への深い適応が成功のカギを握ります。

本記事では、無印良品やローソンのような成功事例などを挙げて、苦戦する企業を比較分析し、中国市場での成功を実現するローカライズの本質に迫ります。

目次

ローカライズとは何か

ローカライズを行う前に、ローカライズの正確な定義の理解からはじめまししょう。

ローカライズとは~文化の翻訳

ローカライズとは、直訳すると、「現地化」を意味しますが、中国ビジネスを成功させるための視点で考えると、もう少し深く意味を理解する必要があります。

中国市場に進出する多くの日本企業が、ローカライズを「商品説明の中国語翻訳」や「パッケージの文字置換」と捉える傾向があります。

しかしながら、真のローカライズとは、外国文化のDNAを解読し、現地消費者の情感(エモーション)に響く形で再構築するプロセスを指します。

中国でローカライズに成功している無印良品の商品開発責任者が語る「現地化とは商品の移植ではなく、文化の翻訳である」という言葉は、この本質を鋭く言い当てています。

中国ローカライズで重視すべきこと

成功しているブランドのローカライズは、3つの点を重視しています。

言語面
文化面
価値観

言語面(表面)

まず、1つ目として、中国人がブランド思想を深く理解できる言語やリズム感で表現することです。

例えば、キリンの「午後の紅茶」が中国語の直訳で「午后的红茶」と表記せず「午后红茶」としたのも、中国人が受け入れやすい言葉で、かつ中国語のリズム感を考慮した判断でした。

その結果、中国はお茶大国にも関わらず、「午後の紅茶」は、中国現地で広く受け入れられています。

単なる直訳の危険性を示す好例が、日本の「おもてなし」概念です。

おもてなしを中国語に訳すと「服务(日本語:サービス)」や「接待(日本語:接待)」が該当し、そのまま翻訳しても、中国人には全く刺さらない言葉になるでしょう。

おもてなしのピッタリの中国語は難易度が高いのですが、ブランドの思想や方向性を考慮しての言語的翻訳をするのが大切です。

文化面

中国ローカライズで成功しているブランドは、文化的側面から中国人に受け入れやすい商品設計やブランディングをしています。

例えば、無印良品の中国杭州店の「緑茶アロマキャンドル」は、中国杭州の西湖という町の名物である緑茶をモチーフにしたフレーバーです。

【無印良品の中国杭州店の「緑茶アロマキャンドル」、RED(小紅書)より】

さらに、店舗内をよく注意して見てみると、左下の画像のような柱が見えます。

【無印良品の中国杭州店の「斗拱」、RED(小紅書)より】

これは斗拱(dougong)と呼ばれており、伝統的な中国の建築工法で、構造物の重量を分散し、支えを増強させるためのものです。

【唐の時代の建物などに使われている中国伝統建築技術である斗拱(dougong)、中正紀念堂園區建築導覽より】

無印良品では、店の内装にまで、中国文化を取り入れており、無印良品MUJIの「自然と共生」という哲学を、中国文化との共生を行うことで、見事に実現させています。

これは、単なる地域限定品を超えた文化面での交流と言えるでしょう。

実際、ブランドや文化的理解を商品や内装に取り入れることで、中国現地消費者に「これは私たちの物語だ」と認識させることにまで成功しています。

逆に失敗例では、異なるブランド事例ではありますが、日本の桜模様をそのまま転用した家電製品の販売などがあります。

桜模様は、中国では「儚さ」ではなく「旧式」の印象を与え、あまり中国消費者には良い印象を与えることはできず、結果として、商品もあまり売れませんでした。

価値観

成功しているブランドのローカライズの3つめのポイントは、価値観の適応です。

例えば、ローソンが中国で成功した背景には、「便利さ」という価値観の再定義がありました。

日本的な「コンビニで雑誌を立ち読み」という便利さで、中国では集客を行うことはできません。

ここで、ローソンは、中国ローカルの地図アプリ連動による商圏分析によって、中国消費者にとって最も便利な場所に店舗を構える戦略を立てました。

さらに、今では当たり前になりましたが、レジの従業員なしで、スマホアプリで決済を行う「接触ゼロ購入」をいち早く取り入れています。

その結果、ローソンは、中国で最も受け入れられている外資系のコンビニの1つになっています。

また、別の事例では、日本茶道の「一期一会」の価値観を、中国の「縁(日本語と同意義)」概念で再解釈し、体験型茶室で集客に成功しています。

中国現地で受け入れやすい価値観や言葉にして伝えることは至難の業です。

ところが、ここがうまくいくと、中国現地でローカライズをスムーズに進めることができます。

中国市場の特殊性

ローカライズのポイントが分かったと思います。

ここからは、ローカライズを行う際の基礎知識として、中国市場の特殊性について、紹介しましょう。

中国巨大消費市場という裏側には、文化的多層性、驚異的なトレンド変化速度、そしてそれに対応する独自のマーケティング手法が複雑に絡み合っています。

文化的多層性

中国市場は、決して一枚岩ではありません。

56種の民族、方言、都市階層が織りなす文化的モザイクが存在します。

中国ローカライズで成功するためには、この文化的多層性を理解する必要があります。

地域による価値観の差異

まず、中国には、地域による価値観の差異が存在します。

例えば、上海が求めるのは洗練されたライフスタイル表現である一方、成都の消費者は「巴適」(日本語:心地よい)を重視、広州ではお茶を飲みながらのゆったりとした生活を好みます。

無印良品が成都店で熊猫型おにぎりを開発し、広州店で老舗茶楼と月餅を共同開発したのは、こうした地域性への深い理解の現れです。

世代間の価値観の差異

更に複雑なのは世代間の価値観の差です。

中国の60代が大切にする「面子(メンツ)」文化に対し、Z世代は「圏層」と呼ばれる趣味コミュニティへの帰属や自己表現を重視します。

ある日本化粧品ブランドが、RED(小紅書)でヒットした「多層スキンケア」手法を商品化した際、年長層向けには「若返り効果」、若年層向けには「自己表現ツール」と訴求点を変えたのは、この多層性に対応した好例と言えるでしょう。

都市階層別の価値観の差異

最近では、中国都市階層別でマーケティングを実施するのが常識です。

あくまで参考ですが、多くの企業が下記のように都市階層別戦略を採用しています。

ティア1都市  :体験価値重視
ティア2~5都市:コストパフォーマンス重視
地方都市 :社会的信用醸成

このように、中国市場を「単一市場」と見なすのではなく、文化的地層を一枚一枚丁寧に読み解く姿勢が求められるのです。

驚異的なトレンド変化速度

中国市場の第二の特殊性は、トレンドの変化速度にあります。

例えば、中国版TikTok抖音(Douyin)のアルゴリズムがもたらす「93日周期」と呼ばれるトレンドサイクル期間は、中国市場のトレンド変化のスピードをよく表しています。

トレンドサイクル期間は93日

RED(小紅書)でバズった商品が、たった3日で淘宝(タオバオ)の検索ランキング1位に躍り出る現象は珍しくありません。

中国版TikTok抖音(Douyin)の調査によると、中国において、1つのトレンドが「発生→拡大→衰退」する平均期間は93日です。

これは日本の約1/3の速度です。

背景には、ショート動画プラットフォームの情報拡散速度、ライブコマースによる即時購買の一般化、サプライチェーンの超効率化(広東省の工場は3日で新商品量産可能)といった中国の特殊な事情があります。

急速に変化するトレンドに対応する成功モデル

トレンド変化に対応するための戦略として、中国ローカル企業が採用している成功モデルが非常に参考になります。

ある衣類メーカーの中国戦略が示すのは、下記のような「3-7-15ルール」というモデルです。

3日間:トレンドをAIを使って調査
7日間:サプライヤーと試作品開発
15日間:主要都市店舗で限定販売

この超高速商品化サイクルにより、中国SNSでバズった「多層重ね着」スタイルを瞬時に商品化することに成功しています。

合計25日(=3日+7日+15日)足らずで、調査~全国販売まで行うこのスピード感は、大いに学ぶべき点と言えるでしょう。

商品開発が遅いことで致命的損失になることもある

一方、商品開発が遅いことで、大きな損失を被ることもあります。

ある日本飲料メーカーの事例は教訓的です。

日本でバズった「白桃風味」商品を中国へ導入したところ、2年かけてやっと販売できるようになりました。

ところが、中国メーカーの競合品が既に参入しており、百度(中国検索エンジンサイト)や中国SNSでは全く検索上位に表示されず、ほとんど売れることはありませんでした。

変化速度への適応力欠如が、機会損失を招く典型例と言えるでしょう。

マーケティング施策の特殊性

中国市場の第三の特殊性は、中国独自のデジタルプラットフォームが存在し、中国に特化したマーケティングの施策が必要なことです。

大前提として、LINEやX(旧:Twitter)など国際的によく使われているSNSは、中国で使うことができません。

ところが、LINEなどに相応する中国独自のSNSがあり、中国消費者は特に不自由さを意識することはあまりなく、それらの中国SNSを使っています。

小さい中国SNSも含めると、数限りなくありますが、代表的な中国SNSをお伝えすると、中国版TikTok抖音(Douyin)、RED(小紅書)、Wechat(微信)などがあります。

これらの中国SNSは、アプローチしたい年齢層や性別などによって使い分けが必要で、扱う商品ごとで対応を見極める必要があります。

詳細は下記記事でも紹介しておりますので、興味のある方はご覧ください。

中国SNS一覧:最も人気のあるプラットフォームを徹底解説 | 中国SNS動画・越境EC支援のクレソン (creson.jp)

中国人消費者の心をつかむための具体的対策手順

ローカライズと中国市場の特殊性が理解できたところで、それらの中国消費者の心をつかむための対策について、解説したいと思います。

ターゲティング

まず、第一に行うべき対策は、ターゲティングをしっかり行うことです。

中国人消費者全員に狙いを定めて、マーケティングを行っても、うまくいくことはないです。

画期的な技術による万人受けする商品があれば、成功する可能性は0ではありません。

しかしながら、現在において、中国では、多くの中国国内企業の技術は世界標準レベルに達しており、さらに、日本以外の外資ブランドも中国に攻めてきています。

そのような厳しい市場の中で、明確にターゲティングを行わずに、中国市場を攻略することはほぼ不可能なのです。

ターゲット層へのアプローチ方法を検討

ターゲット層が明確になりましたら、ターゲット層へアプローチ方法をよく検討しましょう。

ターゲティングをしっかり行うと、どのようにアプローチしたらよいのかも、自然と明確になります。

例えば、中国Z世代の女性であれば、小紅書(RED)を活用してアプローチするのが効果的です。

小紅書(RED)のユーザーの70%以上が中国の若い女性であり、中国の若い女性向けのコスメやファッション系等の商品であれば、小紅書(RED)でプロモーションを行うことが非常に効果的だからです。

中国ロレアル‐ブランド認知拡大で消費者年齢層拡大に成功!

中国マーケティングで大きく成功した事例を紹介しましょう。

中国ロレアルは、中国Z世代へうまくアプローチすることにより、消費者年齢層の拡大に成功しました。

中国ロレアルが行った中国Z世代へのアプローチ方法は、中国Z世代に人気のある哔哩哔哩を活用したプロモーションでした。

ここで、哔哩哔哩とは、中国の動画サイトで、80%以上のユーザーは中国Z世代という特徴があります。

中国ロレアルは、哔哩哔哩で人気のある灵笼(霊籠。芸画開天と哔哩哔哩が共同出品したオリジナルネットアニメ)や、世界的な人気ゲームであるガーディアンテイルズ(Kong Studiosが開発したRPG、哔哩哔哩が中国独占代理販売)、中国バーチャル女性アイドルグループA-SOULなどとタイアップしました。

さらに、中国ロレアルは、哔哩哔哩でアニメキャラクターを通してライブ配信を行い、中国Z世代との接点をつなげるだけでなく、交流も活発化させていきました。

その結果、中国Z世代へブランド認知され、中国ロレアル男性化粧品の消費者年齢層が3歳低下するなど、顧客層の広がりに成功しました。

哔哩哔哩をうまく活用した以外に、この事例でもう1つ大事なことは、アニメキャラクターは、あくまで若者へのアプローチの媒体に過ぎないということです。

もしロレアル商品自体がいいものでなければ、話題にはなっても、商品品質や他人からの商品評判を非常に重視すると言われているZ世代への販売実現は難しかったでしょう。

最後に

今回の記事でご案内した内容は、あくまで現時点の弊社の分析に基づくものです。

実際に自社ブランド商品を売り込みたい場合は、自社ブランドの特徴や中国市場状況に合わせて、マーケティングを行うことがおススメです。

弊社は現在、中国版TikTok抖音(Douyin)・RED(小紅書)を活用した中国SNSの運用代行や、中国への越境ECの支援などのサービスを展開しております。

ぜひご気軽にご相談ください。

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