今日頭条(toutiao)(今日头条,読み方: jīn rì tóu tiáo)というアプリをご存じでしょうか。
今日頭条(toutiao)は、中国最先端のAI搭載ニュースアプリです。
日本のアプリに置き換えると、ニュースアプリのSmartNewsに似ており、中国版SmartNewsなどと呼ばれることもあります。
この記事では、今日頭条(toutiao)の特徴について、紹介していきます。
ユーザーの関心を網羅する幅広いジャンルの取り扱い
今日頭条(toutiao)とは
今日頭条(toutiao)は中国の無料ニュース配信アプリです。
直訳すると、「今日のヘッドライン」という意味です。
【アプリタイトルの下には“あなたが興味関心のあるものこそが、ヘッドラインです”と記載されている】
今日頭条(toutiao)は、中国版TikTok抖音(Douyin)で有名なByte Dance社によって開発され、2012年からニュース配信を開始しました。
中国では、大手ポータルサイト「新浪(Sina)」「捜狐(SOHU)」「網易(NetEase)」や、検索エンジン「百度(Baidu)」、チャットアプリ「微信(WeChat)」のそれぞれが独自のニュースアプリを提供しています。
しかし現在、今日頭条(toutiao)のユーザー数は累計6億人を突破し、上記のような以前から一定数の支持者を持つ老舗アプリを追い抜き、ニュース系アプリの定番になろうとしています。
【中国のニュースアプリランキングで、今日頭条(toutiao)は1位にランクイン】
今日頭条(toutiao)のユーザー層
今日頭条(toutiao)の会員登録をする際、以下のように性別や年齢、興味関心のあるトピックを選択します。
【今日頭条(toutiao)は初回登録の時点からユーザーの傾向分析を行う】
統計上、今日頭条(toutiao)のユーザーが今日頭条(toutiao)を使う時間帯は朝方に集中しており、他のニュースアプリと比較すると、同時間帯のアクティブ数が高いとされています。
通勤時間中などにニュースを確認する際、今日頭条(toutiao)を利用している方が多いことが読み取れるでしょう。
今日頭条(toutiao)は、幅広いジャンルの記事を提供しており、経済やスポーツ、政治、国際、テクノロジー、動物、ゲーム、キャリア、ライフハックなど、さまざまなトピックを網羅しています。
【ユーザーは自分の興味に合わせて記事を閲覧が可能】
性別の観点から見た人気コンテンツジャンルは、男性はスポーツや車、政治などであり、女性はグルメや健康などとされています。
また、年齢別の観点から見た人気コンテンツジャンルは、1970年代生まれのユーザーは政治や歴史、健康、旅行など、1980年代生まれのユーザーは政治やスポーツ、育児、車などをメインに閲覧しています。
さらに、1990年代生まれの若年層に当たるユーザーは、恋愛やファッション、育児などをメインに閲覧しています。
情報の制作と発信
AIによるおすすめ機能
今日頭条(toutiao)はAIを活用しており、豊富なコンテンツの中からユーザーの趣向に合わせて本当に必要としている情報をピックアップして提示しています。
ユーザーがアプリを起動してから閉じるまでの行動を細かく収集しており、過去の検索や記事閲覧などのアクションを分析し、それらに関連するニュースを中心に自動配信します。
さらに、微信(WeChat)などのSNS(Social Networking Service)を紐づけて登録すると、今日頭条(toutiao)に限らず、各SNS上で過去に起こしたアクションに基づいてニュースが配信されます。
このようなおすすめ機能は、今日頭条(toutiao)に限らず、日本のニュースアプリにもあるものです。
しかし、日本のニュースアプリのおすすめ機能は、ユーザーが保存したニュースのタグに基づいて好みの記事を分析しているものがほとんどです。
また、同じバックグラウンドであっても、実際の好みが違う場合も多々あるかと思います。
その点、今日頭条(toutiao)はユーザー個人個人がアプリを使用する際に閲覧した記事を記憶し、AI分析を通して少しずつ細分化していきます。
それにより、ユーザー個人個人に対し、それぞれにカスタマイズされたニュースが届くようになっているのです。
AIによるニュースの自動制作
ニュースアプリによって、自社のオリジナルニュースを発信するものと、他社からニュースを引用し発信するものがあります。
一般的なニュースアプリには編集者がいますが、今日頭条(toutiao)には編集者が存在しません。
AIを活用して9000以上の媒体から集めた情報を整理し、繋ぎ合わせて記事として発信しています。
タイムリーなニュースや数値重視の記事など、記事に深みが必要ない場合、AIを活用して記事を瞬時に制作します。
さらに、AIは情報の正誤を判別するシステムも組み込んでいるため、情報のスピードと正確さを両立しています。
そのため、自社コンテンツの保有や編集および確認作業が必要ないのです。
ユーザー自身がコンテンツ発信者に
中国では、ニュースの発信側は大きく分けて4つあります。
新聞やテレビのような伝統メディア、自治体などの政府機関、ポータルサイト、そしてブロガーなどのKOL(Key opinion leader)によるものです。
KOLは、ユーザー自身が作るオリジナルコンテンツでしたが、ここにコンテンツ制作のプロが入り「バズるもの」を作るよう組織化し、広告でもうけるという形式がトレンドになっています。
今日頭条(toutiao)は、ニュースを閲覧するだけでなく、そのプラットフォーム上で自分自身のコンテンツを発信することが可能です。
今日頭条(toutiao)の媒体は9000社あり、オリジナルコンテンツの源泉は「頭条号」といわれる認証アカウントがあります。
39万を超える専門家やKOL、一般クリエイターなどのアカウントは「頭条号」と呼ばれ、公開したコンテンツから収入を得ることができます。
身分証の登録をするだけで、誰でも「頭条号」のアカウントを得ることが可能です。
【頭条号になることでユーザーによるコンテンツ発信が可能に】
ライターによる今日頭条(toutiao)のオリジナルコンテンツは、ライターが一般の読者であることから、量においても質においても日本のニュースアプリとは全く異なります。
どのような方であっても、ログインするだけですぐに記事を書くことができるため、特定の業界に詳しいライターによる専門的な記事もあれば、一般の方の視点から書かれた記事もあります。
多種多様なライターによってコンテンツが作成されることによって、利用者がいつアプリに訪れても楽しめるような多元的な内容を提供することができているのです。
また、各ユーザーはYouTubeのチャンネル登録機能のように、気に入ったライターを登録することが可能で、そのライターが新しい記事を投稿すると通知が入り、すぐに閲覧できます。
【幅広いジャンルの実際の投稿記事例】
ニュースアプリは、記事の閲覧数や滞在時間によって広告収入が変化します。
そのような広告収入をメインとするニュースアプリにとって、読者であるユーザーを呼び寄せるライターは、なくてはならない存在です。
ライターのファン数によって選択肢が異なりますが、今日頭条(toutiao)のライターは以下のように報酬を得ることができます。
- 投稿した記事の閲覧数に応じて報酬を得る。
- 広告を記事に添付し、広告料を得る。
- ライブコマースで、商品を販売する。
- ファンによる応援金をもらう。
日本のアプリに置き換えるとYouTubeがイメージしやすいと思いますが、文面と動画の両方から収入を得られることが強みであると言えます。
ショートビデオの投稿
今日頭条(toutiao)のアプリ平均利用時間の長さは、このショートビデオ機能が支えていると言っても過言ではありません。
各ユーザーが関心を持つ内容をAIが傾向分析し、幅広いジャンルのショートビデオをユーザーへ届けています。
冒頭部分で、今日頭条(toutiao)の親会社は中国版TikTok抖音(Douyin)で有名なByte Dance社であると紹介しました。
また、Bytedance社は、中国版TikTok抖音(Douyin)以外にも、中国で高いシェア率を誇る動画投稿アプリ「Xigua Video」の親会社でもあります。
そのような動画分野で圧倒的な強みがあるBytedance社のニュースアプリであるからこそ、今日頭条(toutiao)も動画コンテンツが他のニュースアプリに比べて充実しているのです。
今日頭条(toutiao)が今までのニュースアプリと一線を画する存在となったのは、ショートビデオ分野への早期投資を行ったことによるユーザーの囲い込みにあると考えられています。
【今日頭条(toutiao)は親会社の強みを生かした唯一無二のニュースアプリ】
今日頭条(toutiao)の広告機能
AI分析を活かした広告投稿
「AIによるおすすめ機能」の章で、今日頭条(toutiao)はAIを活用しているため、各ユーザーの趣向に合わせて関連するニュースを中心に自動配信していることを説明しました。
さらに、このAI分析を用いて、広告も同様に的確なターゲット層に届けることもできます。
【ユーザーの趣向に合わせた広告表示が可能】
広告を表示するエリアや、表示させる人の属性を細かく指定が可能であることから、今日頭条(toutiao)の広告機能は非常に人気があります。
今日頭条(toutiao)の広告の種類
今日頭条(toutiao)の広告は、基本的に静止画や動画のインプレッション課金、クリック課金であり、投稿主の予算に合わせて出稿が可能です。
具体的には、以下の3種類が主な広告方法です。
ポップアップ広告
アプリを立ち上げた時などに表示される広告で、表示時間は、静止画3秒、動画5秒のように、決まった時間がターゲットとする層に必ず表示されます。
ポップアップ広告は視覚的な訴求力が極めて高く、場合によっては不快感を与えてしまうデメリットもあるとされています。
しかし、今日頭条(toutiao)のAI分析機能で、適切なターゲット層にアプローチが可能であるため、イメージ低下リスクを抑えることができるのです。
フィード広告
コンテンツとコンテンツの間に表示される広告で、CPM(Cost Per Mille)、CPC(Cost Per Click)などの課金方式が選べます。
CPMとは、、ネット広告の配信単価の種類の一つで、表示1000回あたりの広告料を指します。
この場合、ある期間に実際に生じた広告料を、その間に表示された回数の1000分の1で割ったものがCPMです。
広告の需要増加や供給減少するとCPMは上がり、その逆だと下がります。
一方CPCとは、広告を1回クリックするごとに発生する広告掲載料金のことです。
CPCは、Cost Per Click(クリック単価)の略語で、クリック課金型と呼ばれる広告に適用されます。
掲載している広告で、どのくらい集客できているかがわかりやすいことから、広告の費用対効果を示す指標としても利用されることがあります。
CPCは「広告費÷その広告で獲得したクリック数」で算出できます。
バナー広告
バナー広告とは、ウェブメディア上で商品やサービスを宣伝するために、画像や動画、GIFアニメーションなどを用いた広告のことを指します。
画像による視覚的な広告効果があるため、認知向上に適した広告方法です。
さらに、潜在的な顧客へのアプローチ方法としても有効です。
バナー広告のキャッチコピーや内容でターゲットユーザーが「したい」「ほしい」と思わせられるかどうかが重要です。
今日頭条(toutiao)のAI分析機能で、アプローチするターゲット層を絞り込むこともできますが、今日頭条(toutiao)の累計6億人のユーザーを活かして潜在的な顧客へのアプローチも可能なのです。
【ターゲットや目的に合わせた方法で広告の選択が可能】
今日頭条(toutiao)は中国インバウンドマーケティングに有効か?
中国インバウンドマーケティングに今日頭条(toutiao)は使えるのでしょうか。
上で説明した通り、今日頭条(toutiao)には広告機能があります。
さらに、現在日本企業が今日頭条(toutiao)に広告を出すためには、中国の代理店を経由しなければなりません。
【“日本旅行”と検索すると関連投稿が出てくる】
現在、日本の中国に対するインバウンドマーケティングでは小紅書(RED)が優勢と言われます。
今日頭条(toutiao)で「日本旅行」と検索すると、関連投稿や専門アカウントが見受けられます。
【日本旅行や日本文化を専門に取り扱うアカウントも多い】
しかし投稿内容に対する反応、投稿主のフォロワー数を調べたところ、今日頭条(toutiao)のインバウンドマーケティング市場はまだ未成熟であることが読み取れました。
以下の動画投稿主を例に挙げます。
こちらのアカウントは、今日頭条(toutiao)だけでなく、小紅書(RED)でも同じ名義で運用しています。
【同アカウント: 左側が小紅書(RED)、右側が今日頭条(toutiao)】
小紅書(RED)のフォロワーが800人超であるのに対して、今日頭条(toutiao)は0人でした。
この方は、今日頭条(toutiao)の運用を始めたばかりであることも、この違いの理由です。
小紅書(RED)と今日頭条(toutiao)で全く同じ投稿をしているにもかかわらず、その影響力には大きな差がありました。
インバウンドマーケティング市場は未成熟な今日頭条(toutiao)ではありますが、累計ユーザー数の規模やAI分析による的確なアプローチが可能であることを考慮すると、今後の成長性に期待できるかと思います。
中国最先端のAI搭載ニュースアプリと呼ばれる「今日頭条(toutiao)」を小紅書(RED)などと併用し、今のうちから今日頭条(toutiao)を使用したインバウンドマーケティングを開始してみるのはいかがでしょうか。
最後に
以上、中国最先端のAI搭載ニュースアプリ「今日頭条(toutiao)」について、解説しました。
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