中国では間もなく、清明節(せいめいせつ)がはじまります。
先祖を供養し、お墓参りやその道のりを楽しむ期間であり、2026年の清明節は4月5日(日)です。
一方、中国現地では2026年の清明節は、中国マーケティング手法の変化の分岐点になるのではないかと話題になっています。
この記事では、なぜ中国マーケティング手法の変化の分岐点と期待されているのか、2026年の清明節マーケティングで大切なことについて、紹介していきます。
2026年の清明節を節目に中国マーケティング手法が大きく変わる?!

清明節は、もともと日本のお盆に近い位置づけで、お墓参りや旅行に関する商品が人気になります。
ところが、2026年の清明節は、単なる春の行楽シーズンという枠組みを超えています。
春節(旧正月)後にAI使用者が急増
その背景には、今年春節(旧正月)に開催されたAIお年玉キャンペーンがあります。
テンセント(騰訊)、アリババ(阿里巴巴)、中国版TikTok抖音(Douyin)、バイドゥ(百度)の4強が、総額45億元(1000億円相当)以上を投じたキャンペーンでした。
話題を呼んだAIキャンペーン
キャンペーンとしては、主に各社アプリ内に搭載されたAIチャットを使い、簡単な画像を生成するなど任務をこなすと、お年玉がもらえるという内容です。
一見すると、これは古典的な「シェア争奪戦」です。
しかし、本質は全く異なります。
中国マーケティング界では、AIアプリのダウンロードと初回利用を促進するAI普及活動の場だったと分析されています。
各社の得意分野を活かした生態系(エコシステム)への組み込み
特に注目すべき点は、各社の得意分野を活かした「生態系(エコシステム)」への組み込みです。
・百度(Baidu)、中国版TikTok抖音(Douyin):検索連動型。検索窓がそのままAIアシスタントになる体験を提供。
・テンセント(Tencent):社交連動型。AIをコミュニケーションの参加者に昇格。
・アリババ(Alibaba):消費連動型。淘宝(タオバオ)や支付宝(アリペイ)とも連携し、AIで「話す」だけでなく、商品検索から支払いまで「用事を済ませる」体験を提供。
その結果、Z世代(1990年代後半~2010年生まれ)を中心に、AIとの対話は日常的なものへと変わりました。
中国青年報という中国新聞社の調査によれば、生成系AIの若年層(18~35歳)への浸透率はすでに51.8%に達しています。
AIが大事なパートナーに?!
さらに興味深いのは、若年層のAIユーザーのうち、71.7%が「業務効率化ツール」として使う一方で、16.5%が「心の拠り所」としてAIを捉えている点です。
さらに、13.5%が「悩み事を打ち明ける相手」としてAIを選んでいるのです。
この割合は、実の両親や親戚を上回るという結果も出ています。
つまり、2026年の中国消費者、とりわけ若年層は、AIを単なる便利なツールとしてではなく、「感情的価値を共有するパートナー」 として認識し始めているのです。
SNSの「断捨離」と「リビング」の二極化
もう一つの見逃せない変化が、SNSの利用動向です。
微信(ウィーチャット)のモーメンツ(朋友圈)の利用が大きく変化
従来のSNS、特に微信(ウィーチャット)のモーメンツ(朋友圈)の利用が大きく様変わりしています。
微信のモーメンツとは、中国で最も使われているチャットアプリである微信の投稿機能を指します。
分かりやすく言うと、LINEのストーリーのような位置づけです。
データによると、微信モーメンツの1日あたりの投稿量は、2021年のピーク時から37%も減少しました。
約70%のユーザーが「3日間表示(直近3日の投稿のみ表示させる)」設定を利用するなど、利用や表示に制限をかけるようにもなっています。
本音を表現することに疲れている若年層が急増
理由は明白で、仕事関係や一面識しかない相手が増え、本音を表現することが疲れるようになったからです。
中国の若年層の68%が「使用頻度を減らした」と回答し、SNS疲れはもはや恒常化しています。
では、彼らのコミュニケーションの方向はどこに向かっているのでしょうか。
ひとつは、中国版TikTok抖音(Douyin)・RED(小紅書)など、趣味や関心分野のベースで繋がるプラットフォームへの移行です。
もうひとつが、特定の目的のために一時的に形成される「搭子(ダーズ)」と呼ばれる関係性です。
中国現地では「ランチ搭子」「筋トレ搭子」「映画搭子」などと呼ばれ、必要に応じて気軽に繋がり、用が済めば干渉しないライトな関係性を指します。
2025年には「搭子(ダーズ)」の関連投稿の閲覧数が98億回に達するほどの一大ムーブメントとなっています。
これは、深い関係性を求める旧来型SNSからの「卒業」とも言えるでしょう。
AIチャットボットが友達に
そして、疲れるコミュニケーションからの逃避先として急速に存在感を増しているのが、AIチャットボットです。
AIは忖度せず、24時間対応し、何より批判を恐れずに本音を話せる相手です。
既にAIは中国の若年層の「新しい友達」となっているのです。
清明節におけるマーケティング成功のキー

中国マーケティングにおいて、AIの重要性が分かったところで、ここからは、清明節マーケティングの成功のキーを探っていきましょう。
2026年清明節の特殊性:春休みとの合体によりゴールデンウィーク化
2026年の清明節最大の特徴は、中国政府が推奨する春休みと連動している点です。
成都、南京、蘇州など多くの都市で最大6日間の大型連休となります。
既に旅行業界ではこの影響が顕著に表れており、例えば、成都発の航空券予約は前年同期比で1.5倍に急増しています。
特に家族連れを中心に、海南島や東南アジア方面への予約が殺到し、一部ツアーは完売する事態です。
これは、清明節が「お墓参りの日」から、「春の大型レジャーシーズン」 へと進化したことを意味します。
2つのキーワード:移動と癒やし
この特殊な状況下で、2026年の清明節マーケティングを語る上で欠かせないキーワードは、移動と癒やしです。
移動
まず移動についてですが、6連休という時間的余裕は、遠方への旅行需要を爆発的に高めます。
同時に、伝統的に故郷へ帰省してお墓参りをする習慣は、近距離移動需要として確実に残ります。
つまり、「遠距離レジャー」と「近距離帰省」 という二層の移動需要が同時に発生するのです。
癒やし
次に癒やしです。
清明節は、春節の慌ただしさが過ぎ、新年度の緊張が始まる時期でもあります。
SNS疲れを感じる若年層や、仕事と家庭の両立に奮闘するミドルクラスにとって、清明節は「自分を取り戻す」貴重なタイミングです。
AIに心のケアを求める傾向が、この時期に強くなることは容易に想像ができます。
求められるのは「目的別」アプローチ
これらの分析を踏まえ、中国マーケティングを成功させるためには、「目的別」のアプローチが大切です。
遠出層(旅行・レジャー)
まず、遠出層(旅行・レジャー)に対しては、中国版TikTok抖音(Douyin)・RED(小紅書)などでの「#清明節旅行」「#春假去哪里(春休みにどこに行くの)」といったハッシュタグ戦略が鍵です。
特に、単なる観光地紹介ではなく、AIがユーザーに「おすすめ」したくなるような、詳細で構造化されたデータを含むコンテンツが大切です。
帰省層(伝統・家族)
次に、帰省層(伝統・家族)に対しては、中国版TikTok抖音(Douyin)・RED(小紅書)などで、家族の絆や伝統を大切にするコンテンツが響きます。
ただし、若い世代向けには「お墓参りの後に立ち寄るカフェ」など、現代的なアレンジを加えた提案が効果的です。
ステイホーム層(自己投資・癒し)
最後に、ステイホーム層(自己投資・癒し)の層には、RED(小紅書)での「おうち時間」「自分磨き」系のコンテンツが有効です。
特に、「清明節限定パッケージ」など、「日常に小さな贅沢」を提供する提案が支持を集めています。
つまり、2026年の清明節マーケティングは、従来の「一斉送信型」の広告からシフトしています。
消費者の状況に応じて最適なメッセージを届ける「シチュエーションマーケティング」 へのシフトが成功のカギを握ることでしょう。
最新の成功事例

実際にAIを活用することで、直近で成功している事例を見ていきましょう。
ここでは、2026年に入ってから実際に見られるようになった先進的なマーケティング事例をご紹介します。
高機能アウトドアブランド
中国のある高機能アウトドアブランドは、RED(小紅書)の気象予報士インフルエンサーやアウトドア専門のKOLとタイアップしました。
特定地域の「24時間ミニ天気予報」を、RED(小紅書)で連日配信します。
例えば、予報の内容は非常に詳細で、「朝5時の山頂の気温は-5度、体感温度は-10度。必要な防寒具は…」や「午後3時からのゲリラ豪雨対策には、B社のレインウェアが最適。その理由は…」といった具合です。
まさに、検索したユーザーの状況を理解して、答えてくれているようです。
このような施策を行った結果、RED(小紅書)で例えば、「〇〇省 清明節 天気」といった検索に対して、RED(小紅書)内のAI検索で具体的で質の高いコンテンツとして認識され、このブランドのコンテンツがヒットするようになりました。

【RED(小紅書)内のAI検索で検索すると、回答とセットで参照したコンテンツなどが表示される】
その結果、コンテンツと関連した自社商品も売れるようになったのです。
広告代理店
中国版TikTok抖音(Douyin)のある広告代理店は、AI検索時代を見据え、従来のSEOからGEO(AI生成エンジン最適化)へシフトしました。
施策の内容としては、2026年初頭、従来のブランド基盤を維持しつつ、AIプラットフォーム上で「検索される」から「推薦される」へのパラダイムシフトに対応します。
例えば、コンテンツの構造化を実施しました。
AI検索が「権威ある回答」を引き取るロジックの一つに、専門性の高い標準化されたコンテンツモデルがあります。
この代理店は、ブランドの裏付け、資格認証、事例データなど標準化されたコンテンツにしてインターネットや中国SNS上で公表したのです。
さらに、マルチプラットフォームGEO連携の最適化を行いました。
中国版TikTok抖音(Douyin)だけでなく、豆包、DeepSeek、Kimi、百度AI、腾讯元宝など、主要なAIプラットフォームに対して同時最適化を実施します。
結果として、AIプラットフォーム上で、推薦されるポジションの獲得しました。
業界で最も競争の激しい「中国版TikTok抖音(Douyin)」というキーワードで、豆包、百度AI、腾讯元宝などの複数のAIプラットフォームにおいて、ランキングTOP5を達成しました。
2026年現在、中国版TikTok抖音(Douyin)ユーザーの80% が検索機能を利用し、1日あたりの検索PVは41億回に達しています。
さらに、ユーザーの47% が能動的に意思決定型の検索を行っており、検索経由の取引総額は前年比55%増という驚異的な成長を見せています。

【中国版TikTok抖音(Douyin)のAIプラットフォームで「信頼できる代理店はどこ」と質問するとおススメ代理店に関する情報が表示される】
このような環境下で、GEO戦略は、AI時代の模範の成功事例と言えるでしょう。
日本ブランドは今何をすべきか
これからの中国市場で日本ブランドが生き残るための、具体的なアクションプランを3つ提示します。
答えられるブランドへ
まず、「答えられるブランド」への進化です。
消費者とAIの対話に、自社ブランドが自然に登場する状態を作る必要があります。
そのためには、自社の製品情報を、構造化データとして整理することが不可欠です。
単なる検索上位表示ではなく、AIに「このブランドは信頼できる」「この状況に最適だ」と判断されるための情報設計が必要です。
「本音の受け皿」になること
次に、「本音の受け皿」になることです。
若年層がAIに心を開くように、ブランドもまた、彼らの「建前」ではなく「本音」に寄り添うメッセージを発信すべきです。
例えば、「疲れた自分を癒す一杯の日本茶」「頑張る自分へのご褒美スイーツ」などです。
完璧ではない日常を肯定するようなメッセージは、SNS疲れした現代の中国消費者に深く刺さります。
「関係性」をデザインすること
最後に、「場」ではなく「関係性」をデザインすることです。
旧来のマーケティングは、テレビという「場」、あるいはSNSアカウントという「場」に人を集め、そこに情報を流す「場の論理」で動いていました。
しかし、今必要なのは、消費者の多様なライフスタイルの中にブランドが自然に入り込むことです。
中国消費者の状況を深く理解したうえで、一時的でも意味のある「関係性」を築くことです。
最後に

今回の記事でご案内した内容は、あくまで現時点の弊社の分析に基づくものです。
実際に自社ブランド商品を売り込みたい場合は、自社ブランドの特徴や中国市場状況に合わせて、マーケティングを行うことがおススメです。
弊社は現在、中国版TikTok抖音(Douyin)・RED(小紅書)を活用した中国SNSの運用代行や、中国への越境ECの支援などのサービスを展開しております。
ぜひご気軽にご相談ください。


