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【クレソン株式会社】

医療業界必見、中国人旅行客を獲得する秘訣

訪日中国人が増加し続けていますが、訪日目的は定住や観光だけではありません。

医療目的で日本へ訪れる中国人も、一定数いるのです。

コロナ期間中は、移動の制限が厳しかったことから、医療目的として日本へ訪れる中国人は激減しましたが、コロナ後、その数は増加の一途をたどっています。

この記事では、美容医療業界向けに、中国人旅行客を獲得する秘訣について、最新事例を交えながら、ご紹介します。

目次

現状分析―中国医療市場の光と影

急成長する美容医療市場規模と若年層の需要拡大

医療業界の中でも、美容医療市場が大きく伸びています。

中国の美容医療市場は、過去10年で驚異的な成長を遂げています。

艾媒(iimedia)コンサルティングの調査によると、2022年の市場規模は2500億元(約5兆円)に達し、2025年には4100億元(約8兆円)に拡大する見込みです。

これは世界平均約の成長率5%を大きく上回る年率10~20%で、特に20~30代の若年層を中心に需要が爆発的に増加しています。

都市部では、「顔の骨格診断」「脂肪吸引」「二重瞼形成」などの美容整形が日常会話に上り、SNS上では「#整形成功」や「#美容メイク」といったハッシュタグがトレンドを牽引しています。

上海市の調査では、20代女性の約40%が「将来的に美容整形を検討している」と回答し、未経験者でも「美容医療への興味」は80%に達します。

この背景には、中国社会における「外見重視」の風潮や、インフルエンサー(KOL)による美容コンテンツの普及が大きく影響しています。

しかしながら、この急成長の裏側では深刻な矛盾が生じています。

市場の拡大に伴い、無資格業者の参入や低品質な施術が横行し、2021年以降は「整形失敗」や「医療事故」が社会問題化しました。

北京市の消費者保護団体の報告によると、美容整形に関する苦情件数は2021年に前年比で2.3倍に急増、中には、施術後に顔の神経麻痺や重度の炎症を起こした患者が、「SNSへの投稿禁止」を条件に無料治療を迫られるケースも相次ぎました。

信頼崩壊と消費者心理の変化

医療業界への不信感は、消費者行動に明確な影響を及ぼしています。

2021年に百度(中国最大の検索エンジン)で最も検索された医療関連キーワードは、「整形失敗」「医療訴訟」「美容クリニック 評判」といったネガティブな言葉が上位を占めました。

ある調査では、美容整形を検討する中国人女性の60%が「施術のリスクを不安に感じる」と回答し、従来の「安さや手軽さ」よりも「安全性と信頼性」を重視する傾向が強まっています。

この信頼危機は、業界全体の構造的な問題に起因しています。

多くのクリニックが「即日施術」「低価格キャンペーン」を謳い、十分なカウンセリングや術前検査を省略していました。

さらに、SNS上では「術前術後の加工写真」や「虚偽の施術効果」を掲げる広告が氾濫し、消費者との間に大きな情報格差が生まれました。

2022年には、広州市の美容クリニックが「レーザー治療でシミが完全消滅」と偽り、実際には火傷を負わせた事例が発覚します。

患者側が集団訴訟を起こし、業界の倫理観が問われる事態に発展するなど大きな社会現象になったのです。

実際、中国では、美容医療専門の医者に関わらず、医者全体の社会的地位は、日本ほど高くありません。

高額医療報酬目当てに、受ける必要もない手術を医師から勧められ、術前よりもひどい状態となり、深い恨みを持っている中国国民が多くいるのです。

政府の規制強化と業界の再編

こうした混乱を受け、中国政府は2022年から医療業界に対する規制を段階的に強化しています。

主な措置は以下の3つです。

ライセンス制度の厳格化

医療サービスを提供するには、衛生部門による厳格な審査を通過する必要があります。

申請書類には「施設の衛生基準証明」「医師の資格証明」「医療機器の安全性報告書」が追加され、無資格業者の排除が進みました。

2023年には、北京市で100件以上の無許可クリニックが閉鎖に追い込まれています。

広告規制の徹底

「完全安全」「効果保証」などの誇大表現を含む広告が禁止され、違反者には最高500万元(約1億円)の罰金が科せられます。

中国版TikTok抖音(Douyin)や小紅書(RED)でも、医療ライセンスを持たないアカウントの施術動画投稿が規制対象となり、2023年上半期だけで10万件以上のコンテンツが削除されました。

消費者保護の強化

施術前の「リスク説明書」の提出が義務化され、同意なしの施術は刑事罰の対象になりました。

さらに、施術トラブルを迅速に解決するため、全国に「美容医療紛争調停センター」が設置されました。

インフルエンサーとSNSの役割変化

政府の規制強化は、医療や美容系インフルエンサー(KOLやKOC)の活動にも大きな影響を与えています。

2022年6月、「医療関係者の商品販売禁止」が施行され、医師がSNSで美容製品を宣伝する行為が違法となりました。

これにより、人気インフルエンサーの「Dr.王」がWeChatで展開していた化粧品販売アカウントが凍結されるなど、業界に衝撃が走りました。

一方で、規制を回避する新しい動きも生まれています。

一部のKOLは、美容医療の直接的な宣伝を避け、「骨格診断に基づくメイク術」や「アンチエイジング食生活」などといったコンテンツに軸足を移しています。

例えば、小紅書で15万フォロワーを持つ「姨本整经」は、施術の代わりに、芸能人の顔を分析して、「顔の黄金比」などを解説します。

弊社調査によれば、集客後は個別相談で提携クリニックを紹介し、間接的なマネタイズを実現しています。

日本への期待:信頼と安全性の追求

中国国内の混乱を受け、日本への医療観光需要が高まっています。

日本の医療は「高度な技術」「厳格な品質管理」「患者本位のカウンセリング」が評価され、中国人患者の間で「失敗リスクが低い」との認識が広がっているのです。

中国消費者は「安全性」と「透明性」を強く求めるようになり、日本の医療サービスへの期待が高まった結果、中国版TikTok抖音(Douyin)やRED(小紅書)で、日本旅行でがん検診に行ってきたなどを投稿すると、瞬く間にバズるという現象が起きています。

【RED(小紅書)でがん検診を受けたという投稿があった直後、コメント欄で場所や金額について質問が絶えない】

中国市場攻略――規制を逆手に取る3つの戦略

中国版TikTok抖音(Douyin)や小紅書の厳しい規制は、情報発信のハードルを上げており、業界関係者には新しい戦略が求められています。

こうした課題をどのように乗り越え、中国人旅行客を獲得していったらよいのかについて、具体的な手法を紹介します。

戦略1:旅行インフルエンサーを活用した「間接体験」の共有

中国SNSの厳しい医療広告規制を突破するためには、美容医療を「旅行体験」に融合させる手法が有効です。

中国人旅行インフルエンサー(KOL)は、観光コンテンツを通じて医療サービスの魅力を自然に伝えることができます。

西资卡という中国インフルエンサー(KOL)が、日本旅行というテーマで、動画の真ん中あたりで、日本の美容クリニックを紹介しています。

【美容クリニックを全面的に投稿してしまうと、投稿がバン(削除)されるため、動画の真ん中あたりで、日本の美容クリニックを紹介】

中国人インフルエンサーに無料体験を提供し、旅行記として小紅書で「#日本美容」タグを展開しました。

動画では、検診施設の清潔さや医師の丁寧な説明に焦点を当て、「観光中に健康管理もできる」とアピールしています。

この動画の投稿後、予約問い合わせが増加しました。

フォローアップ体制としては、インフルエンサーと個別契約を結び、投稿後にDMでクリニック紹介リンクを共有するなどで対応します。

注意点としては、中国版TikTok抖音(Douyin)やRED(小紅書)では「病院」「治療」などのキーワードが規制対象となるため、「健康チェック」「体質改善」など曖昧な表現を使用するのがコツです。

戦略2:中国仲介機関との提携で信頼を担保

中国版TikTok抖音(Douyin)・RED(小紅書)などでKOLやKOCを活用するのが王道でしたが、最近では、仲介機関との提携で集客する事例も増えています。

美容医療仲介機関は、現地の顧客ニーズを把握し、日本医療機関との橋渡し役として機能します。

ある日本の美容医療機関は、仲介機関と提携し、中国側が患者の事前審査(健康状態・支払い能力)を行い、日本で施術を実施します。

契約では「紹介1件あたり治療費用の40%の成功報酬」を設定し、初期費用をゼロに抑えました。

成功報酬が高すぎではないかと感じる方がいるかもしれませんが、中国美容業界の仲介手数料の比率は他業界とは非にならないほど高いです。

また、中国には日本医療機関とつなぐ仲介機関が複数存在します。

ただし、仲介機関の中には虚偽広告を行う業者も存在するため、提携先の実績確認が必須です。

戦略3:中国語インターネットサイトの戦略的強化で検索による集客を増加

中国人旅行客の半数以上が渡日前に情報収集を行うため、中国語サイトは「信頼の窓口」として極めて重要です。

その中でも、SEO対策とユーザー利便性の向上が鍵となります。

多くの医療センターやクリニックでは、以下の施策を実施し、中国語サイトの月間アクセス数を大きく伸ばしています。

① SEO最適化
キーワード設計が最も大事です。

「日本 がん検診」「沖縄 長寿医療」など、地域名と治療名を組み合わせた検索ワードを選定するとよいでしょう。

ブログ記事も大切です。

「胃カメラ検査の流れ」「アンチエイジング食品ランキング」など、悩みに直結するテーマで更新するとよいでしょう。

② オンライン相談システム
ある医療機関では、AIチャットボットを導入し、24時間対応で症状に基づく検査プランを自動提案できるようになりました。

また、問い合わせから予約までの時間を短縮している事例もあります。

③デジタルレポートの提供
ある医療クリニックは、検査結果を中国語のPDFと動画で解説しました。

また、WeChatに直接データ送信することで、帰国後も継続的な健康管理をサポートできるようにしている事例もあります。

補足戦略:規制が緩いプラットフォームの活用

中国版TikTok抖音(Douyin)・RED(小紅書)以外にも、規制が緩いプラットフォームを活用することで、情報発信の幅を広げられます。

例えば、BiliBili(ビリビリ)での動画展開することが挙げられます。

名古屋のある歯科医院は、抖音で削除された矯正治療の動画をBiliBili(ビリビリ)で再投稿。専門用語を避け「歯並びと顔のバランス」に焦点を当てた内容に編集し、月数万回の再生を達成しました。

例えば、「正しい歯磨き法」など、医療広告と見なされないテーマを選定することも有効でしょう。

BiliBili(ビリビリ)の使い方については、下記記事で紹介していますので、興味のある方はご覧ください。

哔哩哔哩(bilibili)の使い方!日本のアニメファンが知るべき登録から視聴する方法とコツ | CRESON Media | 中国SNS動画・越境EC支援のクレソン

リスク管理

中国市場攻略には攻めだけではなく、守りも大切です。

ここからは、リスク管理について、お伝えしましょう。

基盤1:法規制順守――中国のルールを徹底理解

中国の美容医療市場で活動するには、現地の法規制を厳密に遵守することが不可欠です。

特に「個人情報保護法(PIPL)」と「医療広告管理法」は、日本企業が最も注力すべき領域です。

個人情報保護法(PIPL)

ある医療センターは、中国人患者の予約データを日本国内サーバーで暗号化保存しました。

中国側の監査が入った際も、データ管理の透明性が評価され、違反指摘ゼロを達成しています。

予約フォームに「個人情報利用の同意チェックボックス」を設置するなど、同意取得の徹底も大切です。

仮に中国側の監査が入り、個人情報保護が不適切と判断された場合は、ホームページが中国側ユーザーからアクセスできなくなるなどの措置が実施されるリスクがあるため、十分に注意しましょう。

医療広告規制への対応:

抖音や小紅書での投稿前に、社内や専門外注先にコンテンツを審査することを欠かさずに行いましょう。

例えば、治療効果を謳う表現を避け、「体験談」や「教育コンテンツ」に限定します。

ある温泉療養施設は「疲労回復の科学的根拠」を動画で解説し、「治療」ではなく「学術情報」として発信するなどしています。

仲介パートナーとの契約と定期的な関係性のチェック

中国の仲介パートナーを活用した中国人旅行者の集客においては、契約内容と定期的な関係性のチェックが大切です。

ある医療機関は、中国の仲介機関と「紹介1件あたり数十%の成功報酬」と明確に記載し契約しました。

さらに「虚偽広告禁止条項」を追加し、違反時は契約解除と損害賠償を明記することにより、誇大広告によるクレームを防止し、提携先の質が向上にも貢献しました。

効果的なパートナーシップ構築には、厳格な選定基準の設定(中国当局の認可有無など)、過去2年の顧客評価を分析、評判の良い業者のみをリスト化など、やることが意外と多いです。

さらに、定期的なパフォーマンス評価においても、月1回の報告書提出を義務付け、紹介患者の満足度を数値化、低評価が続く場合は契約更新を見送るなど、厳しい基準で関係性を再確認する必要があります。

法的サポートの確保

問題が起きた際の法的サポートの確保もしておきましょう。

中国現地の法律事務所と提携し、訴訟リスクに備えることが大切です。

今お付き合いしている法律事務所でも国際ビジネスにたけているかどうか確認してみると良いでしょう。

最後に

中国人旅行客の獲得競争は「スピード」と「独自性」が鍵です。

医療業界がリスクを最小限に抑え、大きく成長するためには、今日の成功事例に甘んじず、常に未来のトレンドを先読みする姿勢が求められます。

今回の記事でご案内した内容は、あくまで現時点の弊社の分析に基づくものです。

実際に自社ブランド商品を売り込みたい場合は、自社ブランドの特徴や中国市場状況に合わせて、マーケティングを行うことがおススメです。

弊社は現在、中国版TikTok抖音(Douyin)・RED(小紅書)を活用した中国SNSの運用代行や、中国への越境ECの支援などのサービスを展開しております。

ぜひご気軽にご相談ください。

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