抖音(中国TikTok)の企業案件とは、どのようなものなのでしょうか。また、稼げるのでしょうか。
日本では、YouTubeやTikTokの企業案件で、大きな報酬を受け取るYoutuberやその報酬額のニュースを見るようになりました。
お隣の大国、中国でも、一般人が抖音で企業案件を受注し、莫大な報酬を得ています。
この記事では、抖音の企業案件について、具体的な事例やメリット・デメリット、依頼されるコツなどを紹介していきます。
抖音の企業案件について
抖音の企業案件とは
抖音の企業案件とは、広告主である企業が、网红(WangHong)と呼ばれるインフルエンサーに対し、広告宣伝活動を依頼する案件を指します。
中国では、抖音をはじめするショート動画は、主要なプロモーションの一つになっています。
実際に、ショート動画を活用した広告収入は年々大きくなっており、その中でも抖音は、非常に大きく成長しています。
中国における広告収入ランキングNo.1
抖音は、中国におけるインターネット広告の中で、ダントツのランキングNo.1です。
Quest Mobile(インターネット専門の中国大手市場調査会社)の最新調査によれば、2022年1~10月における中国インターネット広告収入占有率で、ランキングNo.1は抖音でした。
さらに、驚くべきことに、抖音の中国インターネット広告収入占有率(抖音のインターネット広告収入額/中国インターネット広告全収入額)は、28.4%という高占有率です。
2位が微信(WeChat、中華圏最大級のメッセンジャーアプリで、中国版LINEとも言われる)、3位が快手(Kuaishou、抖音と並んで人気が高い中国版Instagram)と続きますが、いずれも十数%で抖音の半分にも満たない状況なのです。
【Quest Mobile、2022年1-10月中国インターネット広告収入ランキングより】
このランキングから、中国において、抖音が最も利用されているインターネット広告であることがわかります。
抖音の企業案件例
中国で、非常に有名な抖音の企業案件を2つ紹介したいと思います。
1つ目は、アカウント名:黑脸V(HeiLian V)の、1動画で72万元(1400万円相当)の企業案件です。
スマホメーカーOPPOの企業案件を受注し、結果として、85.8万いいね、4.3万のコメント、1.3万回シェアされる動画を作成しました。
黑脸Vは、顔をいつも隠し、神秘的なキャラクターと独創的な動画で、2000万を超えるフォロワーがおり、多くの中国人を魅了しています。
2つ目は、アカウント名:小兔姬の、1動画で2万元(40万円相当)の企業案件です。
The Green Partyという中国の雑貨屋さんからの企業案件でした。ちなみに、小兔姬はフォロワーが、100万人くらいです。
黑脸Vのフォロワー数と報酬金額の比率からすると、小兔姬の報酬は小さいように見えます。
ところが、黑脸Vの広告費の高さは異常ですので、小兔姬の報酬の方が一般的と言えます。
企業案件を受けるメリットとデメリット
企業案件を受けるメリット
まず、メリットについては、主に3つあります。
- 会社との関係性を構築できる
- 報酬を得ることができる
- 抖音の運用ノウハウを蓄積できる
1つ目の会社との関係性構築について、抖音のプラットフォームで企業案件を受けることを通じて、たくさんの会社とつながることができます。
仮に、受注した企業案件がうまくいき、その広告効果が認められれば、企業案件を依頼した会社から引き続きオファーが来ます。
それだけでなく、その動画を周りで見ていた企業などから声がかかり、様々なコネクションを構築できる可能性もあります。
2つ目の報酬の獲得については、企業からの案件の為、比較的報酬金額が大きく、さらに広告効果が認められれば、安定した報酬が期待できます。
また、一度でも企業案件を受注すると、それが実績にもなり、さらなる信頼やフォロワー増加につながります。
その信頼とフォロワー数増加があれば、次回の企業案件を受ける際、報酬アップにつながる可能性も大いにあります。
3つ目の抖音の運用ノウハウの蓄積について、一度、企業案件を受けた場合、継続して依頼を受ける可能性が高まり、さらに抖音の運用経験がたまり、同時にノウハウ蓄積が容易になります。
企業側からしても、経験のないインフルエンサーに依頼するよりも、実績があり、ある程度一定の広告効果が期待できるインフルエンサーに依頼したいと考えているのです。
企業案件の経験・ノウハウの蓄積→フォロワー数の増加→報酬単価アップという、好循環が作れれば、大きなビジネスに育てることも夢ではないでしょう。
企業案件を受けるデメリット
次に、デメリットについても、3つご紹介します。
- フォロワーが離れていくリスク
- 企業とのトラブル
- 抖音プラットフォーム上でのトラブル
1つ目のフォロワーが離れていくリスクについて、企業案件を受けることによって、現在のフォロワーが失望し、離れていくリスクがあります。
既存フォロワーがあなたの考え方や動画コンテンツに惹かれてフォローしていた方だとしましょう。
そのフォロワーが、あなたの動画をいつも通り楽しみに見ていたら、突然、これまでの動画とは全く異なる、企業案件がらみの商品紹介をされれば、少し裏切られた感覚を持つでしょう。
ただ、中国のショート動画視聴者へ調査を行ったレポートによれば、テレビや他のメディアに比べて、PRへの抵抗は少ないという結果が出ています。
何事も、加減が大事だと思いますが、既存のフォロワーの期待を裏切らない程度に、企業案件を受ける必要があります。
2つ目の企業とのトラブルについては、企業側から支払いを受けることができない、或いは契約した金額よりも少ないというトラブルなどが発生するリスクがあります。
企業側が要求するレベルと実際に提供したサービスクオリティに差異があり、企業側が納得しなかった場合に起こります。
また、意図的に、企業側が支払わないケースもあります。
このようなトラブルを可能な限り、事前に避けるには、企業側が信頼に足りる会社なのかという事前の確認だけでなく、企業側の求める内容の理解と、契約書にそれを正確に落とし込む作業が大事になります。
3つ目の抖音プラットフォーム上でのトラブルについて、抖音から規則違反として扱われた場合、一時的に動画のアップロードができなくなる、重大な規則違反と判断されればアカウント停止になるリスクがあります。
不適切な動画だと判断されただけでは、規則違反とはなりません。
注意を受けたのに改善がない或いは不正行為のために抖音を利用したということであれば、アカウントの一時停止などの措置が行われます。
通常の使い方であれば、規則違反に触れることはないと思いますが、複数人数で同一アカウントを運用していて、不注意でアカウント情報が洩れ、他人に悪用されることで、規則違反になってしまうことはあり得ます。
抖音で企業案件を受ける際には、これまで以上に、抖音の運用ルールのチェックやアカウントの管理は、細心の注意で徹底して行うとよいでしょう。
抖音の企業案件の料金相場
企業案件の報酬形態
抖音の企業案件の報酬形態は、多種多様ですが、主に3つに分類することができます。
- 売上に応じた出来高制
- 固定報酬額
- 出来高制と固定報酬額の混合
まず、売上に応じた出来高制について、売上金や売上個数に応じて、報酬が決まる契約形態です。
報酬と売上高の比率や、販売個数あたりの報酬については、業界や商品種類などによって大きく異なります。
次に、固定報酬額について、売上高などの成果に関係なく、お互いに同意した固定の報酬額で決める形態です。
出来高制と同様に、ケースバイケースで報酬額は大きく異なりますが、フォロワー数が報酬額を決める一つの基準になる傾向があります。
最後に、出来高制と固定報酬額の混合について、出来高制の報酬と固定報酬額をあらかじめ決めておき、いずれか高い方を報酬額とする。或いは、両方を合計した金額を報酬とする形態です。
例えば、1つの動画を作成する際、最低報酬額を2万元と定め、出来高制報酬を100元/販売個数とし、いずれか高い方を報酬額とすると決めたとします。
100個売れた場合、報酬額は2万元(最低報酬額2万元>出来高制報酬額1万元)。
300個売れた場合は、報酬額は3万元(出来高制報酬額3万元>最低報酬額2万元)というように計算します。
料金相場はどのくらい
抖音の企業案件の料金相場は、2.5〜10銭/フォロワー です。
1銭は0.01元で、1元を20円で換算すると、約0.5円~/フォロワーと計算できます。
例えば、抖音で200万人のフォロワーがいる人が、企業案件を1件受注した場合、その報酬額は、約100万円(=200万人フォロワー×約0.5円/フォロワー)~です。
ただ、注意が必要なのは、この料金相場は、あくまで目安であることです。
実際は、フォロワーの質、広告依頼主との契約内容などによって、価格が大きく変化します。
事例でいえば、100万人のフォロワーを持つインフルエンサーでも、そのフォロワーの購買能力が高くて、影響力が大きい場合は、200万円の依頼が来ることもあります。
日本のインフルエンサーは2〜3円/フォロワーかかります。
それと比較すると、抖音の企業案件の料金相場は、相対的に低いことがわかります。
依頼されるコツと注意点
依頼を受ける方法
どのようにして企業から依頼を受けるのでしょうか。依頼を受ける方法を紹介したいと思います。
依頼主から企業案件を受ける主な方法は、下記の2つです。
- 抖音星图(DouyinXingtu)というマッチングプラットフォームを活用
- MCN(マルチチャンネルネットワーク)会社から依頼を受ける
1つ目の抖音星图は、広告主とインフルエンサーのマッチングプラットフォームです。
2018年9月3日に抖音がオープンし、広告主と広告代理店やインフルエンサーなどのマッチングだけではなく、契約管理や取引データ管理なども行えるシステムがあります。
抖音星图では、広告主からインフルエンサーへ、インフルエンサーから広告主へ自主的にオファーすることができ、活発に取引が行われています。
また、抖音自体は、抖音星图以外での広告取引を禁止しており、すべて抖音星图内で取引を行うよう促しています。
さらに、抖音星图でインフルエンサーとして登録できるのは、10万以上のフォロワーが必要など、ハードルが高いのも特徴です。
2つ目のMCN(マルチチャンネルネットワーク)会社から依頼について、MCN会社とは、名前の通り、複数のチャネルネットワークを持ち、コンテンツ作成や広告サービスなどを提供する会社を指します。
もう少しわかりやすく説明すると、人気インフルエンサーが所属しているタレント事務所のような会社です。
MCN会社は広告主の要望に従い、インフルエンサーの選別や宣伝効果を高めための魅力的なコンテンツ作成、広告サービスなど提供しています。
抖音星图で登録条件を満たすことができないインフルエンサーは、このMCN会社に所属していれば、MCN会社が抖音星图で受注した案件について、MCN会社からの下請けで業務を行うことができます。
一方、個人でも十分実力のある個人インフルエンサーでも、MCN会社に所属しています。
理由は、広告主からすると、費用は高くなりますが、MCN会社の広告クオリティはある程度一定に保たれるため、安心感があり、多くの広告案件はMCN会社に集まりやすいためです。
依頼されるコツ
依頼されるためのコツは、挙げればきりがないですが、ここでは3つ紹介したいと思います。
- フォロワー数が20万以上
- 良質なコンテンツ
- 良質なフォロワー
1つ目のフォロワー数について、一般的に、20万以上のフォロワーがいれば、企業側からオファーがあります。
フォロワーの数は、必ずしも広告効果を保証するものではありませんが、企業側からすれば、影響力や関心度などを測るわかりやすい指標です。
フォロワーが20万未満でも、企業から依頼を受けているインフルエンサーは多くいます。
ただ、多くの企業案件を見ていると、広告主にとって、20万のフォロワーは、インフルエンサーを選ぶ際の一つの基準としている傾向があります。
2つ目の良質なコンテンツについて、発信しているビデオコンテンツが良質に保たれている必要があります。
コンテンツの内容だけでなく、撮影テクニックや多くの人を引き付けるための施策など、様々な面で、視聴者にインスピレーションを与える動画であることも大事です。
3つ目の良質なフォロワーについて、例えば、購買力を持っているフォロワーが多くいるかということです。
広告を依頼する企業側からすると、フォロワーの質は、インフルエンサーが影響を与えることができる層の一つの目安としてとらえています。
例えば、フォロワーがたくさんいても、購買力のないフォロワーばかりであった場合、そのインフルエンサーに企業案件を依頼しても、広告効果はあまり期待できないと企業側に判断されるのです。
依頼を受けるときの注意点
依頼を受けるときに、最も注意すべき大事なことは、2つあります。
1つ目は、動画を作成したら、依頼主へチェック依頼をしますが、チェック後の修正回数について、どこまで無料で対応するかを事前に決めておくことです。
依頼主からチェック受ける際、細かい修正依頼を受けることもあります。
一般的には、2回目の修正依頼までは無料、3回目からは有料としている契約内容がほとんどです。
2つ目は、抖音で動画を投稿した後に、削除されてしまうリスクを可能な限り抑えておくことです。
抖音から不適切な動画、利用規約に反していると判断されれば、投稿した動画は削除されてしまいます。
また、日本やアメリカと大きく異なる点は、中国では中国政府に不利な発言は一切認められていないことです。
敏感文字と言われる中国政府側が敏感になっている文字(ジャスミン革命など民主主義を連想させる文字など)を使っているだけで、不適切と判断されることがある点にも、十分に注意する必要があります。
最後に
以上、抖音(中国TikTok)の企業案件、そのメリットやデメリット、料金相場や依頼されるコツについて解説していきました。
弊社は現在、抖音をはじめとした中国SNSの運用代行や、中国への越境ECの支援などのサービスを展開しております。
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