現在、中国における医療情報の発信の仕方が大きく変化しています。
その中でも、医療系インフルエンサーが重要な役割を果たすようになりました。
医療系インフルエンサーとは、医療分野において高い専門知識と信頼性を持ち、多くのフォロワーを持つインフルエンサーを指します。
この記事では、中国の医療系インフルエンサーの特徴や、どのようにして信頼できる情報源として台頭してきたのか、具体的な事例を交えて紹介します。
中国における医療情報の課題
医療情報の信頼性
中国では、医療情報の信頼性が長年にわたり問題視されてきました。
インターネット上には誤った情報や根拠のない治療法が氾濫し、患者やその家族が正確な情報にアクセスすることが困難な時期さえありました。
結果としてインターネットの情報による誤った判断や、自己治療による健康被害が頻発し、医療情報の信頼性向上が急務とされていました。
実際、中国現地では、「病気になったら、インターネットで検索しない方がいい」という人までいるほどです。
特に、中国の美容整形医療に関する情報の信頼は非常に低く、その背景には、美容整形医療業界の信頼性の問題が2021年頃から顕在化したことが関係しています。
例えば、インターネットによる虚偽広告や、詐欺まがいの美容整形医療サービス、整形後のトラブルをSNSに投稿しないよう条件を付けられた事例などが多発しました。
2021年の医療訴訟件数が、前年の2倍以上になっていたくらいです。
中国医療に対しての厳しい措置
この問題を受け、中国政府は2022年頃から医療サービスの規制を強化しました。
- 医療ライセンス取得手続きの厳格化
- 医療機関の監視強化
- 無許可の医療サービス提供者への取り締まり
これらへの規制の強化が進められます。
また、中国SNSでも同様の対策が取られ、医師免許やライセンスを持たない者の医療関連投稿や虚偽情報の投稿が規制され、一部アカウントの停止や削除が実施されました。
その結果、当時人気のあったアカウントが突然見られなくなることもあり、医療業界にとっては非常にショッキングな出来事でした。
医療系インフルエンサーの台頭
こうした背景の中で、医療系インフルエンサーが注目されるようになりました。
医療系インフルエンサーは、医師や専門家、医療関連の研究者など、医療分野における高い知識と経験を持ち、中国SNSなどで情報発信を行い、一定の影響力を持つ人を指します。
医療系インフルエンサーとして、最も代表的な人物は、张文宏医師です。
【张文宏医師の中国版TikTok抖音(Douyin)のアカウント】
张文宏医師は、新型コロナウイルスが世界で蔓延した際、客観的でわかりやすい解説をしてくれた中国医師でした。
张文宏医師をはじめとする医療系インフルエンサーは、中国版TikTok抖音(Douyin)や小紅書(RED)などの中国SNSを通じて、正確で信頼性の高い医療情報を発信しています。
信頼性の高い医療情報として扱われる理由は、主に下記の3つです。
- 専門知識と経験
- エビデンスベースの情報提供
- 双方向のコミュニケーション
専門知識と経験
多くの医療系インフルエンサーは、医師や研究者としての豊富な経験を持ち、その知識をもとに情報を発信しています。
これにより、フォロワーは安心して情報を受け取ることができます。
エビデンスベースの情報提供
医療系インフルエンサーは、科学的根拠に基づいた情報を提供することを重視しています。
これは、信頼性の高い医療情報を求める中国人にとって大きな魅力です。
双方向のコミュニケーション
中国SNSを活用することで、医療系インフルエンサーはフォロワーとの双方向のコミュニケーションを実現しています。
フォロワーからの質問やコメントに対して直接回答することで、信頼関係を築いています。
中国の医療系インフルエンサーの特徴
信頼できる情報源として、医療系インフルエンサーが台頭していることがわかったと思います。
ここでは、医療系インフルエンサーの特徴を詳しく見ていきましょう。
影響力が大きい
1つ目として、他ジャンルのインフルエンサーと比較しても影響力が大きいです。
医療系インフルエンサーの影響力は、中国全土に広がっています。
都市部だけでなく地方都市や農村部においても、医療系インフルエンサーの情報が浸透し、多くの中国人がその恩恵を受けています。
中国の都市部と農村部では、医療情報だけではなく、医療サービスの格差は非常に大きいです。
実際に、多くの中国農村部の患者や高齢者が、高度な医療サービスや良質な医療情報入手のためだけに、上海市などの都市部に数日かけて移動しています。
現在、医療系インフルエンサーが中国SNSで信頼性の高い情報を発信することにより、医療情報の格差が縮小し、より多くの中国人が適切な医療情報を得ることが可能になりました。
それほど、医療系インフルエンサーが中国に与えた影響は大きいのです。
志の高いインフルエンサーが多い
2つ目の医療系インフルエンサーの特徴として挙げられるのが、志の高いインフルエンサーが多いことです。
もともと、「病人を助けたい」という高い志を持って医師になっており、医療系インフルエンサーとしても、医師としての責務を全うしたいと考えて情報発信している人が多いです。
中国浙江省人民医院の皮膚科に勤務しており、医療系インフルエンサーでもある樊一斌氏は、一般市民に正しい情報を届けられることが高いモチベーションになっているとコメントしています。
【皮肤科主任医师樊一斌の中国版TikTok抖音(Douyin)アカウント】
一方で、「医療に関する論文と違って、中国SNSで情報発信するときは、一般市民が分かる言葉で説明する難しさがある」とも言ってます。
ビジネス的なつながりが見えにくい
3つ目の医療系インフルエンサーの特徴は、プロモーションなどのビジネス的なつながりが見えにくいことです。
その背景には、医療系インフルエンサーの高い志も関係しているのですが、中国SNS上での医療サービスへの厳しい規制が大きく影響しています。
具体的には、2022年6月から、医師や医療機関の身分を利用して中国SNS上で物販などの商売を行うことが禁止されています。
もともと、多くの医療系インフルエンサーは、物販やブランドとのコラボは拒否していました。
ところが、2022年6月から始まった規制強化によって、物販やプロモーションに協力する医療系インフルエンサーは一掃されました。
美容系や旅行系インフルエンサーなどと異なり、医療系インフルエンサーの活用は難しいと言われるゆえんはここにあるのです。
中国の医療系インフルエンサーの活用方法と注意点
2022年以前は、ブランドと医療系インフルエンサーとのコラボライブが行われていましたが、2022年6月以後はそのようなコラボも見られなくなりました。
それでは、ブランド側は、中国の医療系インフルエンサーの活用はできないのでしょうか?
結論から言うと、工夫すれば活用は可能です。
工夫した活用方法について、その一部を紹介したいと思います。
話題づくりに協力してもらう
1つ目は、中国の医療系インフルエンサーに、話題づくりに協力してもらうことです。
医療系インフルエンサーは、中国SNS上で物販などの商売を行うことは禁止されていますが、話題づくりは禁止されていません。
つまり、ブランド側から医療系インフルエンサーに対して、直接的な物販やプロモーションを依頼するのはなく、「このようなトピックを扱ってほしい」と依頼をすることは可能なのです。
例えば、医療系インフルエンサーへ「朝と夜で化粧水を分けた方がよく、朝はA成分、夜はB成分が多めの方がいい」というトピックを扱ってほしいと依頼します。
医療系インフルエンサーが納得し、同意してくれれば、そのトピックが中国SNSで話題になり、中国人はすぐに「朝はA成分、夜はB成分が多め」の化粧品をインターネットで検索します。
その行動をあらかじめ読んでおいた広告依頼主であるブランド側が、商品ページや広告ページを作っておけば、自然と多くの中国人に購入されるのです。
ちなみに、商品ページや広告ページへの導線について、以前はコメント欄にURLや商品名を記載する方法が流行っていました。
ところが、最近では規制が厳しく、自分にはコメントが正しく表示されていても、他人に表示されないなど、制限がかけれられることが多くなっています。
現在では、Wechat(微信,中国版LINEとも言われるチャット系SNS)で公式ページを探す中国人も増えていますので、Wechat上で公式ページを作るなどが有効な方法でしょう。
隠れ医療系インフルエンサーを活用
2つ目の医療系インフルエンサーを活用方法は、隠れ医療系インフルエンサーとコラボすることです。
ここで、隠れ医療系インフルエンサーとは、一見医療系には見えないインフルエンサーで、実際は医療ビジネスを手掛けているインフルエンサーを指します。
例えば、ある中国インフルエンサーは、芸能人の顔分析や老けない方法などをコンテンツとして、実際の治療法などは投稿しないという方法を採用しています。
その代表的なアカウントが、「姨本整经」です。
【姨本整经のアカウントトップページ、小紅書(RED)より】
このアカウントでは、有名な芸能人やモデルを例に挙げており、
- なぜ老けて見えるのか
- 若く見せる秘訣
- 童顔と顔の骨格の関係性
などを解説しています。
この方法を採用することにより、医療規制ジャンルを回避し、微量医療に興味を持っている中国人をうまく集客しているのです。
集客後は、中国SNSからの監視が緩いダイレクトメールや個人チェットで顧客と連絡し、うまく自分のビジネスにつなげています。
例えば、Wechatなどで直接連絡をくれたユーザーに、タオバオ(アリババが運営する中国最大のECモール)にて顔分析レポートを購入させています。
その後、自分の顔をどのようにすれば、今よりも美しくなることができるのかというニーズをユーザーから引き出し、最終的に美容医療機関の紹介というビジネスにつなげています。
姨本整经の場合、中国版TikTok抖音(Douyin)と小紅書(RED)では、医療サービスとは全く関係ないようにカモフラージュし、最終的には医療サービスの提供へとつなげているのです。
ブランド側としては、このような中国インフルエンサーと手を組み、彼らの顧客の紹介先として、提案することなどができます。
中国の医療系インフルエンサー活用時の注意点
中国の医療系インフルエンサー活用方法の一部をご紹介しましたが、注意点もありますので、簡単に紹介したいと思います。
注意すべき点は、下記の3つです。
- 短期的な効果しかない場合がある
- 風評被害にあうリスク
- インフルエンサーを手配するのが大変
短期的な効果しかない場合がある
医療系インフルエンサーを活用しても、数日や数か月の短期的な効果しかないケースがあります。
原因としては、中国SNSの時流にうまく乗れなかったことや、投稿内容と実際のギャップが大きかったなど様々です。
いずれにしても、広告効果の確度を高めることはできても、必ずしもヒットすることは限らないことは理解しておく必要があるでしょう。
風評被害にあうリスク
過去に投稿依頼したインフルエンサーが不祥事を起こし、それが火種となって、ブランド側にも悪い影響を及ぼすケースがあります。
それほど、インフルエンサーの影響力が強かったことの裏返しですが、インフルエンサーの影響に頼りすぎた結果でもあります。
インフルエンサーの活用はあくまで起爆剤として使い、ブランディングやロイヤリティを高めることが大事です。
特に、医療系インフルエンサーが発信する情報には、医療の専門家であるとはいえ、医療業界としては、未解明の内容が絶対的真実のように聞こえてしまう内容も含まれています。
このような問題は、中国国内では定期的に問題視されており、人気の医療系インフルエンサーのアカウントが突然バンされることもあります。
インフルエンサーを手配するのが大変
インフルエンサーの手配は、簡単なことではなく、一定の時間とコストがかかります。
インフルエンサーの中にはクセのある中国人も多く、長い時間をかけて商談をしていたのにもかかわらず、突然連絡が取れなくなることもあります。
インフルエンサー手配は、言語の問題だけなく、中国人個人とのビジネス習慣の違いなども勉強しておく必要があります。
中国語がわかるスタッフや中国人スタッフがいたとしても、中国インフルエンサーとの交渉は独特で、知見や経験がないとうまくいきません。
はじめて中国インフルエンサーと仕事するということでしたら、外部専門家からのサポートを受けるのがよいでしょう。
中国SNSの運用代行会社については、下記の記事でも解説していますので、興味のある方はご覧ください。
中国SNS運用代行の成功への道: 最適な中国SNS運用代行パートナーの探し方 | CRESON Media | 中国SNS動画・越境EC支援のクレソン
最後に
以上、中国の医療系インフルエンサーの特徴や、どのようにして信頼できる情報源として台頭してきたのか、具体的な事例について解説しました。
弊社は現在、中国版TikTok抖音(Douyin)・小紅書(RED)を活用した中国SNSの運用代行や、中国への越境ECの支援などのサービスを展開しております。
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