高市政権と中国マーケティングとの関係——政治リスク時代における日本ブランドの生存戦略

国内では高市政権に対する期待が高まっている状況ではありますが、台湾問題をめぐる発言を契機に日中関係はかつてない緊張状態に陥っています。

中国国内のニュースでは、高市政権に対して厳しく非難しており、中国版TikTok抖音(Douyin)やRED(小紅書)などの中国SNSでは、高市首相があたかも軍国主義を語る動画が人気になるなど、異例な状況です。

また、この政治的な緊張は、中国市場でビジネス展開を行う日本ブランドにとって無視できないリスク要因でもあります。

本記事では、高市政権に対する中国の反応を整理し、それが日本ブランドの中国マーケティングに及ぼす影響、そして、私たちが取るべき注意点を紹介します。

目次

高市新政権をめぐる国内外の反応

高市新政権に対する国内外の反応はそれぞれです。

日本やアメリカでは期待が高まっている一方で、中国では大きな反発がある状況です。

国内で期待高まる高市新政権

2026年に発足した高市新政権は、小泉純一郎内閣の発足時に次ぐ歴代2位の80%の高支持率で誕生しました。

その後の衆院選でも、高市首相率いる与党連合が352議席を獲得し、これは憲法改正発議が可能な「3分の2」以上を十分に確保している歴史的な圧勝を意味しており、日本国内で今後の動きが期待されています。

高市新政権に対し強い反発を示す中国

一方で、中国は強い反発を示しています。

台湾有事の話題を機に日中関係が悪化

高市早苗首相は就任直後、「台湾有事は日本の存亡危機事態に該当し得る」との認識を示し、中国政府から即座に強い反発を招きました。

中国外交部の林剣報道官は2026年2月の会見で、「口では対話と言いながら、手では対抗措置を取る“対話”を受け入れる国はない」と指摘しています。

「誤った台湾に関する言論の撤回」などを明確に求める厳しい姿勢を崩していません。

さらに注目すべきは、高市首相が衆議院選挙で勝利した際、中国政府が祝電を送らなかったことです。

国際外交において祝電は政治的承認の表れであり、これを連続して見送ったことは、中国政府が高市政権との関係改善に極めて慎重な姿勢であることを示しています。

日本国内の中国関係者からも厳しい声

日本国内の有識者からも厳しい声が上がっています。

日中労働者交流協会会長の伊藤彰信氏は、高市首相の言動が「日中共同声明を明確に否定し、日中国交正常化の政治基盤を根本から損なうものだ」と批判しています。

さらに注目すべきは、東京の首相官邸前で行われた抗議集会の参加者からも「高市首相は戦争を単純に考えすぎており、戦争の恐ろしさを全く理解していない」といった批判が上がっている点です。

中国SNSでの過剰な反応

中国国内のニュースでは、高市政権に対して厳しく非難されています。

中国版TikTok抖音(Douyin)やRED(小紅書)の中国SNSでは、高市首相と軍国主義と関連付ける動画が人気になるなど、過剰な反応が見られます。

【高市首相が軍国主義を語る動画や戦争を指揮するコンテンツが一時期人気に、RED(小紅書)より】

また、ウルトラマンなどのヒーロー役に高市首相が倒されるAI動画が中国SNSを中心にバズっており、関係者の調べによれば、中国発信とみられています。

日中ビジネスにも大きな影響

中国側のより直接的な対応として、2026年1月6日、中国商務省は「両用品目対日輸出管制の強化に関する公告」を発表しました。

具体的には、1000以上のHSコード商品を対象に、日本の軍事関係者・軍事用途・日本の軍事力強化に寄与する可能性のある最終用途への輸出を全面禁止しています。

これは日本の製造業に深刻な影響を及ぼす可能性が大いにあります。

このような措置が示すのは、中国政府がもはや外交的な批判に留まらず、経済・貿易の領域で実際の圧力をかける段階に入ったといえるでしょう。

中国マーケティングへの具体的な影響

この政治的な緊張は、中国市場における日本ブランドのマーケティングにどのような影響を及ぼすのでしょうか?

具体的な影響を見ていきましょう。

中国消費者感情への影響

まず、中国の消費者感情の冷え込みがあります。

歴史的に見れば、2012年の尖閣諸島国有化問題の際には、日系車の販売が前年比40〜50%も急落する事態が発生しました。

また、2016年の韓国・THAAD配備問題では、現代自動車の中国販売台数が一年間で114万台から78万台へと三割以上減少しています。

これらの歴史的な事例が示すのは、領土・主権に関わる政治的対立が、中国消費者の購買行動に直結するという厳しい現実です。

中国における日本製品市場シェア構造の変化

次に、市場シェアの構造的低下です。

中国消費者感情への影響が大きいため、結果として、中国における日本製品市場シェア構造が長期的に変化されてしまう可能性があります。

高市政権発足前から厳しい中国市場における日本製品

実は、高市政権が発足される前でも、日本製品の中国市場シェアは厳しい状況です。

中国自動車業界団体のデータによれば、日系ブランドの中国乗用車市場における小売シェアは、2020年の約24%から2024年には15%を下回る水準まで継続的に低下しています。

さらに、三菱自動車は2025年7月、中国での現地生産・販売からの完全撤退を正式に発表し、近年では初めて中国市場から撤退する主要日系ブランドとなりました。

本田技研工業の2025年第一四半期の中国販売台数も前年同期比23.7%減少するなど、各社とも厳しい状況に直面しています。

背景には、日本の政権とは直接的な関係はなく、中国がEV車を強く推し進めており、日本の強みであるガソリン車が中国政策的に不利な状況ではあります。

高市政権が日本離れに拍車をかけている

ところが、高市政権の中国国内における日本ブランド離れは、これに拍車をかけ、市場シェアの構造的変化に影響を及ぼすと考えられています。

例えば、高市首相の台湾をめぐる発言の後、2026年1月の中国本土から日本への航空便の欠航率は47.2%に達しています。

日中間のフライトは、日本側では福岡、名古屋、仙台など地方都市の運休・欠航が目立っています。

中国国内では、中国政府などが日本へ渡航する中国人に対し、安全性に関する注意を呼びかけ、渡航注視を呼び掛けるなど、日本離れを促進している状況です。

【中国政府が日本の治安が年々悪化していることなどを報道している、中国領事館ホームページより】

中国人の日本渡航は、日本文化やブランドの良さを知ってもらう大きなチャンスですが、これが交通機関やメディアによって、制限されているのです。

もちろん、中国人全員がこれらの規制や報道をそのまま鵜呑みにするわけではありません。

ところが、一定層の中国人には影響があり、弊社の周りの中国人でも、最近では「最近日本は大丈夫なのか?」と気遣う声が増えてきました。

日本企業の中国ビジネスに対するリスク拡大

東京商工リサーチの調査によれば、日中関係悪化を受けて「調達面での中国依存の低減」を検討する企業は32%に上り、「中国への渡航自粛」を検討する企業も26%に達しています。

さらに、すでに受注減少が発生している、あるいは今後発生しそうだと懸念する企業は26%と、前回調査から11ポイントも増加しました。

これらの数字は、政治リスクが実際のビジネス現場に確実に浸透していることを示しています。

日本ブランドとして注意すべきこと——具体的な行動原則

このような厳しい中国ビジネスの環境下で、我々日本ブランドとして、どのような点に注意していけばよいのでしょうか。

中国ビジネスから撤退という選択肢もあると思いますが、中国という大きな市場を諦めることはビジネスチャンスとして大きな痛手になるでしょう。

ここでは、中国ビジネスを前向きに考える前提で、具体的に考察してみます。

日本ブランドが中国市場でビジネスを継続するためには、以下の点に注意を払う必要があります。

〇政治的発信は一切行わないこと
〇輸出入管理コンプライアンスを徹底すること
〇ブランドコミュニケーションを「現地化」すること

政治的発信は一切行わないこと

まず、政治的発信は一切行わないことです。

当たり前に思えるかもしれませんが、高市政権の姿勢に同調するような発言や、台湾問題に触れるような行動は絶対に避けるようにしましょう。

中国市場で活動する日本ブランドの公式アカウントが、日本の政治状況に言及することは、即座にブランドイメージのダウンにつながるためです。

直接的な政治的発言は簡単にコントロール可能なようにみえますが、間接的に政治的な意味としてとらわれないようにすることも大事です。

例えば、2026年1月、ポケモンが靖国神社でのイベント情報を掲載したことが発覚し、中国国内で大規模な炎上事件に発展した事例がありました。

イベント情報が発覚後、優衣庫や李寧、曼秀雷敦などそれまでポケモンと共同商品開発していた多数の中国メジャーブランドが、一斉にポケモン関連商品を中国市場から排除しました。

結果として、ポケモンの中国における年間80億元(1,600億円相当)規模のビジネスは一夜にして大きな打撃を受けたと言われています。

【ポケモンの靖国神社でのイベントを大きく非難、中国メディアの华声在线より】

当時、中国の多くメディアや大手ブランドは、ポケモンによる謝罪を求める声が絶えませんでした。

最終的には、ポケモンのホームページにより、当日謝罪と次回対策を発表することで、収まりましたが、政治的な問題が中国ビジネスに大きな影響を及ぼす教訓となりました。

輸出入管理コンプライアンスを徹底

次に、輸出入管理コンプライアンスを徹底することです。

前述の中国商務省の輸出管制強化措置は、日本の軍事ユーザー・軍事用途への輸出を全面禁止するものです。

問題は、日本が長年「軍需と民生の融合」の産業政策を取ってきたため、一見すると民生品に見えても、最終的には軍事用途に転用される可能性がある点です。

例えば、三菱重工や三菱電機などは大規模な防衛プロジェクトの主契約者であり、そのサプライチェーンには多数の中小企業が含まれます。

中国企業は、輸出先企業がこれらの防衛関連企業と関係がないか、徹底したチェックを行う義務が課されます。

実は中国だけでなく、日本国内でも軍事転用可能な商品や技術を輸出していないかどうかのチェックを厳重に行うよう規制強化が行われています。

中国と既に貿易しているブランドや、これから中国へ販売・ビジネスパートナーとして中国人とビジネスを行う際は、輸出入管理コンプライアンスをこれまで以上に徹底的に行う必要があるでしょう。

ブランドコミュニケーションを現地化する

最後に、ブランドコミュニケーションを「現地化」することです。

中国文化に寄り添い商品開発を行う無印良品(MUJI)

例えば、無印良品(MUJI)の中国戦略が示すように、日本の政治状況に言及することなく、ひたすら中国の地域文化や生活様式に寄り添う商品開発を積み重ねることが大事です。

2019年以降、無印良品(MUJI)は生活雑貨の70%を中国市場向けに開発し、気候特性や文化的嗜好に応じた商品群を投入しています。

実際、杭州の龍井茶をモチーフにした香り製品や敏感肌向けスキンケアシリーズは、機能性と中国文化への共感を両立させました。

中国人消費者は単なる「日本製」のブランド力よりも、「自分たちの生活課題を解決してくれるか」を重視しています。

無印良品MUJI中国商品開発責任者は、「現地化とは商品の移植ではなく、文化の翻訳である」と中国ビジネスおける重要な発言をしています。

中国へニーズの理解とリスペクトが大事

少し理解が難しいですが、この言葉が示すように、日本的良さをそのまま中国現地に売りつけるのではなく、中国のニーズを理解することが重要であることを示しています。

着実なプロセスこそが、政治の状況にびくともしないブランドの基盤を築きます。

中国消費者は、建前のメッセージではなく、商品とサービスに刻印された「誠実さ」を敏感に感じ取ります。

重要なのは、中国への地域文化へのリスペクトを形にすることこそが、政治的なノイズを超えて届くメッセージとなり得ます。

日本ブランドとして中国市場と真剣に向き合う覚悟が試されている

高市政権の対中姿勢と中国側の厳しい反応がありますが、この政治的な緊張は、少なくとも短期間で晴れる見込みがないと言われています。

高市政権が中国との「対話」を主張しながらも、中国側から真の信頼を得られていないという構図は、今後も続くでしょう。

しかしながら、このような政治的な状況が厳しくとも、中国市場で生き残る日本ブランドの条件はむしろ明確になったともいえます。

それは、政治的発信を一切しないこと、歴史認識問題で火種を作らないこと、輸出入管理コンプライアンスを徹底すること、そして何よりも、中国の消費者の生活に真摯に寄り添い続けることです。

ブランドの生存戦略は、もはや製品の機能や価格だけで決まるのではなく、中国をリスペクトしながら、中国のニーズと正確に読み取り、自らの行動を律することができるかという「ブランドの覚悟」そのものに委ねられています。

最後に

今回の記事でご案内した内容は、あくまで現時点の弊社の分析に基づくものです。

実際に自社ブランド商品を売り込みたい場合は、自社ブランドの特徴や中国市場状況に合わせて、マーケティングを行うことがおススメです。

弊社は現在、中国版TikTok抖音(Douyin)・RED(小紅書)を活用した中国SNSの運用代行や、中国への越境ECの支援などのサービスを展開しております。

ぜひご気軽にご相談ください。

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