中国国内において長期で続いているトレンドのひとつに、国潮があります。
国潮とは、簡単に言うと、中国伝統文化と現代文化が融合した新しいカルチャーを指します。
この国潮が、中国SNSだけでなく、ファッションやコスメ、電化製品などの分野でも大きな影響を与えており、売れ筋商品が変わってきているほどです。
この記事では、国潮とは何か、国潮が中国ビジネスに与えている影響、そして国潮トレンドで成功した事例などについて、紹介していきます。
国潮とは何か
国潮とは中国伝統文化と現代文化が融合した新しいカルチャー
国潮とは、中国伝統文化と現代文化が融合した新しいカルチャーを指します。
もう少しシンプルに言うと、国潮とは、中国要素を取り入れたトレンド商品を意味します。
国潮のうち、「国」は中国を意味し、「潮」はトレンドを意味します。
また、国潮は、広告会社やブランド、キャンペーン時期などによって意味が多少異なり、中国国産品、中国古典文化要素が入った商品、中国ファッションブランドを指すこともあるのです。
いずれにしても、国潮は、中国の伝統文化と現代的な要素を組み合わせた新しいアプローチで、中国Z世代の間で特に人気があります。
国潮の発端
中国スポーツブランドである李寧(LiNing)が、アメリカニューヨークのファッションショーで、中国風の衣装でショーを行ったのが発端と言われています。
当時、李寧(LiNing)は、中国の象徴でもある漢字や赤を衣装デザイン取り入れ、中国古典文化と現代文化の要素をうまく融合させ、ファッション業界に大きな反響をもたらしたのです。
国潮は2017年頃から始まり、中国現地では、2023年は国潮第7年目とよく言われます。
中国政府側の中国国産製品を強化する意向も背景にあり、長期のトレンドになっています。
いずれにしても、長い期間、多くの企業会社が、国潮というキーワードを使って、プロモーションやキャンペーンを行っています。
国潮トレンドが長く続いている理由
国潮のトレンドが長く続いている理由は、単に一時的に流行っているということではなく、歴史的な背景が関係しています。
1978年前の中国では、すべての企業が国営企業であり、すべてのものが計画的に製造され、クオリティを意識することはほとんどありませんでした。
1978年に鄧小平の主導により市場経済への移行が始まり、商品のクオリティに対する要求が高まります。
実際、中国スポーツブランドの「回力」や「李寧」などの中国ブランドが台頭し、中国国内でクオリティの高い商品が出回るようになりました。
ところが、2001年に世界貿易機関(WTO)に中国が加盟したことをきっかけに、多くの外国ブランドが中国に進出していきます。
その結果、多くの中国ブランドのデザインがカッコ悪い、クオリティが悪いという評価を受けてしまい、中国国内外で中国ブランドは「安かろう悪かろう」というレッテルを張られてしまったのでした。
そして、多くの工場は、海外ブランドのOEM工場になるか、或いは高級ブランドのコピー商品を作るという選択をせざるを得ない状況だったのです。
その後、20年の年月が経ち、最先端の技術とデザイン性を備えた中国工場や中国ブランドが出てきます。
それらの中国ブランドが評価され、国潮というトレンドが生まれているのです。
特に、中国ブランドを高く評価しているのは、中国Z世代です。
中国Z世代以前の世代は、未だに中国ブランドが低品質で、海外ブランドが信用できるという考え方を持っている方が多いです。
一方、中国Z世代は、1990年以降に生まれた世代であり、過去の中国ブランドに関する衝撃的な事件などの当事者ではないため、ニュートラルな目で、現在の中国ブランドを評価できるのです。
このように、国潮トレンドは、歴史的な流れが根底にあるため、一時的なトレンドではなく、長期で続いているトレンドなのです。
広範囲で大きな影響を与え続ける国潮
国潮で大きく影響を受けているジャンル
国潮トレンドは、中国国内の一部の商品だけなく、あらゆる分野、エンターテインメントにまで影響を与えています。
中国越境ECビジネスでも大きく影響を与えおり、中国市場を狙う日本企業にとっても無視できないトレンドなのです。
国潮で大きく影響を受けているジャンルは、ファッション、化粧品、デジタル製品です。
具体的には、中国風を取り入れたスポーツウエアや、口紅、電化製品などが売れ筋になっています。
そのほか、中国ドラマ・映画、中国マンガ・ゲーム、中国音楽、中国グルメ、文化遺産などにも影響を与えています。
例えば、中国アニメーション映画「ナタ~魔童降臨~(中国語:哪吒之魔童降世)」は、興行収入50億元(1000億円)以上を達成し、中国映画歴代2位、中国国産アニメーション映画歴代トップの興行収入を記録しました。
このように、国潮は様々なジャンルで、広範囲に大きな影響を与えているのです。
中国版TikTok抖音(Douyin)・小紅書(RED)が国潮の人気を牽引している
中国版TikTok抖音(Douyin)は、中国で最も人気のあるショート動画プラットフォームの1つであり、国潮の台頭にも大きな影響を与えています。
中国の若者たちは中国版TikTok抖音(Douyin)を活用して、中国の伝統的な衣装や文化に関連する動画を共有しています。
例えば、伝統的な中国の衣装であるチャイナドレスをモダンなスタイルで着こなすビデオや、中国の伝統的な音楽や舞踏を取り入れたパフォーマンスなどが盛んに投稿されています。
これらのコンテンツは、中国の若い世代に中国伝統文化を再評価させ、中国という存在を見直す機会さえも提供しているのです。
小紅書(RED)も国潮の普及に寄与しています。
小紅書(RED)は、ファッション、美容、ライフスタイルに焦点を当てたプラットフォームで、若者たちがお気に入りのファッションやトレンドを共有し、商品を紹介する場所として知られています。
国潮の影響を受け、小紅書(RED)上では伝統的な中国製品や工芸品、ファッションアイテムが注目されており、中国の文化的アイデンティティに誇りを持つ若者たちによって積極的に紹介されています。
伝統的な中国の手工芸品や衣料品、美容製品などが中国SNSを通じて、国内外のユーザーに広まり、中国のカルチャーが世界に発信されています。
このように、中国版TikTok抖音(Douyin)と小紅書(RED)のような中国SNSは、国潮トレンドを支え、さらにより広める重要な役割を果たしているのです。
中国と関わりがなくても、流行に少し敏感な方であれば、中国風の商品やエンターテインメントが最近少し増えてきたかもと感じることがあるかもしれません。
今後も国潮は、中国のカルチャーに新たな風をもたらし、その影響力は今後も拡大していくことでしょう。
日本企業が国潮トレンドに乗る方法
国潮トレンドによって中国伝統文化が再評価されており、さらに国潮とは厳密には中国ブランドを指すことが多いのも事実です。
そのように聞くと、日本企業は国潮トレンドに乗ることは難しいのではないかと考える方も多いと思いますが、日本企業も国潮トレンドに乗ることは可能です。
日本企業が国潮トレンドに乗る具体的な方法は、2つあります。
1つは、自社ブランドや製品で、中国文化を取り入れた商品開発をすることです。
国潮は、中国国産品を指すこともあるため、厳密には国潮ではないと言われるかもしれませんが、実際は中国風というだけで、中国消費者に受け入れてもらえます。
2つ目は、中国ローカルブランドと共同で商品設計や開発をすることです。
中国ローカルブランドと共同開発した商品であれば、中国国産商品として、受け入れてもらえる可能性が高まるのです。
国潮トレンドで成功したブランド事例
李寧
国潮トレンドにうまく乗り、成功したブランド事例をいくつかご紹介しましょう。
国潮トレンドで成功したブランドで絶対に欠かせないのが、中国スポーツウエアブランドの李寧です。
李寧は国潮トレンドの火付け役でもあるのですが、自分自身でもそのトレンドに乗り、成功しています。
李寧は、TikTok抖音(Douyin)のキャンペーンを行うとともに新商品の発表をします。
具体的には、TikTok抖音(Douyin)上で、変装チャレンジ企画を実施して盛り上げました。
例えば、李寧の新商品が入っている箱を開けて服を着た途端に、よぼよぼだったおじいさんが、突如として中国風の雰囲気をまとい、肩で風を切るように歩く動画などがアップされました。
李寧の新商品や漢服を身につけることで、突然変装するというチャレンジキャンペーンに、多くの中国人消費者が参加しました。
【TikTok抖音(Douyin)上での変装チャレンジ企画】
結果として、このチャレンジ企画に投稿された動画は合計で8523万以上再生され、大きな話題を呼びました。
そして、李寧にとっては、新商品のプロモーションに大きく貢献したのです。
なお、TikTok抖音(Douyin)上のキャンペーン企画については、下記の記事でも紹介していますので、ご興味のある方はご覧ください。
企業が中国版TikTok抖音(Douyin)で実施するキャンペーン成功のポイントと事例 | CRESON Media | 中国SNS動画・越境EC支援のクレソン
回力
2つ目の国潮トレンドで成功したブランド事例は、中国ローカルシューズブランドの回力です。
回力が成功した大きな要因は、TikTok抖音(Douyin)をはじめとする中国SNS上でのインフルエンサーをうまく使い分け、さらにタイミングを見極めプロモーションやライブしたことです。
回力は、まず、同道大叔などの中国若者に人気なキャラクターとタッグを組み、TikTok抖音(Douyin)上で動画投稿などを開始します。
それと同時に、厚底靴などの中国若者のニーズを取り入れた新商品を発表します。
そして、2021年7月から、トップインフルエンサー、ミドルインフルエンサー、ローインフルエンサーによる口コミマーケティングを開始します。
半年以上の口コミマーケティングを実施したのち、2022年5月ごろから、回力自身でのライブコマース実施を強化することで、大きな販売実績を残すことに成功したのです。
結果として、回力はTikTok抖音(Douyin)にて、昨年比6倍の売上を記録しました。
花西子
3つ目の国潮トレンドで成功したブランド事例は、花西子です。
花西子は、中国ローカルの化粧品ブランドで、中国の伝統的な文化要素とコスメ商品を組み合わせたユニークなブランドとして知られています。
まさに、正真正銘の国潮ブランドと言っても過言ではないでしょう。
花西子は、中国の伝統的な美学や芸術、風俗、花鳥風月などの要素を取り入れ、自社商品のデザインに反映させています。
特に、彫刻や花鳥模様を施した美しいパッケージと製品デザインで知名度を上げ、中国の伝統文化を美容製品に取り入れたユニークなアプローチで商品開発を行っています。
その美しいデザインと高品質な化粧品により、多くの女性に支持されています。
口紅を使用することはない男性であっても、精巧につくられたデザインを見ているだけでうっとりとするくらいです。
また、花西子は中国の伝統文化を活かした製品デザインにより、国内外で成功を収めており、昨今、売上高が急成長しています。
2020年の花西子の売上高は既に30億元(600億円相当)を突破し、前年比の165%増しのペースで売上高を更新し続けています。
SK-II
4つ目の国潮トレンドで成功したブランド事例は、SK-II です。
SK-IIは、自社ブランドで中国風を取り入れ、商品開発し、国潮トレンドにうまく乗りました。
SK-IIは中国七夕セール時に、パッケージを中国風にして限定品を販売します。
その後、アルマーニやロレアルなども追随して、オリジナルの中国風のパッケージの限定品を販売しました。
当時、中国現地のメディアでは、中国ローカル企業でない外資化粧品ブランドの国潮商品を中国は受け入れるのか?といった記事が出るほど話題になりました。
いざ結果を見てみると、SK-IIはじめ、外資の化粧品売れ行きは非常に好調だったのです。
この事実から、中国ローカル企業でない外資化粧品会社の国潮商品であっても、中国消費者は受け入れることがわかります。
NEW BALANCE
5つ目の国潮トレンドで成功したブランド事例は、NEW BALANCE です。
NEW BALANCEは、中国ローカル会社とタッグを組み、商品開発を行いました。
具体的には、中国ローカル企業ANB BRANDとタッグを組んで、「国潮」シューズを販売しました。
ANB BRANDは、欧米系のファッションの影響を受けている、中国厦門発祥のブランドです。
当時、国潮をそれほど前面に出していないこともあり、最も控えめな国潮ブランドとタッグを組んだと、一部の中国メディアからは批判されていましたが、商品の売れ行きは非常に好調でした。
最後に
以上、国潮とは何か、国潮が中国ビジネスに与えている影響、そして国潮トレンドで成功した事例などについて、解説しました。
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