中国BtoB越境ECで成功するためには、ブランディング戦略が必須です。
中国市場では、日本ブランドというだけで売れる時代は既に終わっており、商品やサービスの価値で勝負しなければいけないためです。
自社や商品・サービスの価値を認知してもらい、ブランドイメージを高めるために、しっかりとしたブランディング戦略が必要なのです。
この記事では、中国BtoB越境ECで成功するためのブランディング戦略や成功事例などを紹介していきます。
中国BtoB越境ECで成功するためのブランディング戦略
ブランディング戦略とは
ブランディング戦略とは、消費者が抱く自社や自社商品のイメージをあらかじめ定めて、ブランディング化しつつ、認知拡大を狙う戦略を指します。
日本の大手化粧品メーカーなど、国際的に有名な企業であれば、「品質の良い定評あるブランド」というイメージを消費者に抱かせます。
一方、日本では有名であっても、国際的にはあまり有名ではない日本企業が、中国市場で自社商品を販売しようとした場合、中国消費者にとって具体的にどんなメリットがあるのかを明示しない限り、物が売れることは難しいのです。
特に、一昔前は、日本ブランドというだけで物が売れた時代がありましたが、今はそのような時代ではなくなってきています。
中国は既に豊かな国になっており、品質の良い商品を作る中国ローカル会社もいれば、中国消費者のニーズに合わせた多種多様な商品が多く出回っています。
そんな競争の激しい中国市場で、日本ブランドというだけで、ブランディング化ができることは期待できません。
だからこそ、「中国消費者に与えるブランドイメージ」を戦略的に考えることが、重要なカギを握るのです。
ブランディング戦略のメリット
ブランディング戦略を行うことのメリットは、主に下記の5つです。
- 他社との差別化
- 顧客のロイヤリティ獲得
- 高い価格設定
- 幅広い消費者へ認知
- 会社の価値向上
1つ目の他社との差別化について、ブランディング戦略をしっかり行えば、自然と類似商品・サービスとの違いが明確になり、結果として、他社との差別化ができるようになります。
中国では、中国国内企業のみならず、アメリカなどの国外企業の類似商品が中国市場に投入されているケースがあるため、日本よりも競争が激しいケースがあります。
競争が激しい状態であっても、ブランディング戦略により、差別化を行い、中国消費者にうまく訴求できれば、売れる見込みは出てきます。
2つ目の顧客のロイヤリティ獲得について、ブランドへの結びつきや忠誠心が強くなると、そのブランドに対する良好なイメージが確立されていきます。
その結果として、顧客のロイヤリティを獲得することができるようになります。
3つ目の高い価格設定について、ブランディング戦略が成功すると、価格競争に巻き込まれにくくなり、結果として、高い価格設定が容易になります。
ブランディング化し、顧客からのロイヤリティ獲得ができれば、ある程度高い価格帯でも購入してくれる顧客層の構築につながり、無理してまで価格を低くする必要はなくなるためです。
4つ目の幅広い消費者への認知について、会社やその商品へロイヤリティを持つファンが増えれば、そのファンの周りへの紹介などにより、さらに幅広い層への認知が可能になります。
中国では、商品やサービスを購入する際、口コミや購入者からの評価を日本以上に重視するため、購入者であるファンの紹介こそが認知拡大に大いに役立つのです。
5つ目の会社の価値向上について、そのブランドへのロイヤリティや認知が大きくなっていくと、会社そのものの価値が自然と向上していきます。
例えば、他企業とのタイアップや資金調達、会社買収など、様々な場面で、交渉を有利に進めることができるようになります。
ブランディング戦略の手順
ブランディング戦略の手順は、一般的には、下記のような手順で行います。
1、現状認識
2、ブランドのコンセプトの明確化
3、ブランディングの具体的施策
1つの現状認識について、自社や自社商品が、中国市場でどの立ち位置にいるのか、現状認識を行います。
具体的には、販売実績や市場調査により、情報を整理していきます。
販売実績では、現在よく買ってくれる顧客はどの消費者層なのか、顧客層の変化、商品レビューやキャンペーンの反応などから入手できた自社及び自社商品へのイメージをまとめます。
市場調査では、中国における類似商品の市場規模、競合状況、最新トレンドを含む現状について、まとめます。
最後に、入手できた情報に基づいて、ブランドの認知率、消費者が持っているイメージ、競合商品との違いなどを整理します。
2つ目のブランドのコンセプト明確化については、まず自社が目指しているブランドイメージを明確化し、具体的にコンセプト設計していきます。
消費者に持ってもらいたいブランドイメージを明確化できたら、ロゴ、キャッチコピー、会社カラーなどにそれを落とし込んでいきます。
特に、ロゴや会社カラーは、ブランドイメージの軸となり、中国越境ECサイトや商品パッケージ、販促グッツなどへの統一感も大事になってきます。
3つ目のブランディングの具体的施策について、消費者への訴求方法の比較検討を行い、実施していきます。
具体的には、どのようなプロモーションを行い、ブランディング化していくかを決めていきます。
プロモーションを行う方法は、展示会、野外広告、インターネット広告など様々な方法がありますが、中国の最新トレンドでは、抖音(Douyin)やRED(小红书)を使ったプロモーションが主流になりつつあります。
Quest Mobile(中国市場調査会社)の2022年1-10月によれば、抖音(Douyin)は、企業のインターネット広告において、中国でNo1を占めるようになっています。
RED(小红书)は、ユーザー数や広告収入では、抖音(Douyin)に劣るものの、ユーザー層は18~30歳がメインで、そのうち70~80%が可処分所得が高い女性いう特徴があります。
可能な限り広くプロモーションを行いたいのであれば、抖音(Douyin)。
若い女性をターゲットにプロモーションを行いたいのであれば、RED(小红书)を使うなどのプラットフォームの選択も大事になってきます。
また、日本では、知名度のあるタレントを起用してプロモーションを行うのが一般的ですが、中国ではそれは受け入れられていません。
中国では、KOL(Key Opinion Leader)と呼ばれる中国SNS上で大きな影響力をもつインフルエンサーの情報が、最も受け入れられています。
食品加工会社による食品問題やECサイトに出店する企業の信頼性問題などにより、企業側が手配する広告よりも、信頼できるKOLや一般人による口コミを重視する傾向があるのです。
中国BtoB越境ECプラットフォーム
Alibaba
Alibabaは、ジャックマーが創立したアリババグループ傘下にある、BtoB越境ECプラットフォームです。
200か国以上の会社が参加しており、4000万以上のアクティブ海外バイヤーがいる、1000億米ドルの輸出が行われている巨大プラットフォームです。
日本企業がAlibabaのプラットフォームを使って、日本から中国へのBtoB越境を考える場合、最も注意しないといけないのは、2点あります。
1つ目は、Alibabaは中国向けの仕様ではなく、あくまでグローバルECプラットフォームとして、位置づけられていることです。
2つ目は、年間維持費用が高いことです。日本企業向けにサポートしている日本Alibabaは個別で見積もり対応しているため、公開されている価格はありませんが、中国企業向けにサポートしている中国Alibabaでは、60万円相当~/年です。
1688.com
1688.comは、Alibabaの中国国内版です。
アクティブユーザー数が5,000万を超える、中国最大の中国国内卸売プラットフォームです。
プラットフォームのコンセプトとしては中国越境ECではないですが、日本から中国へのBtoB越境を考える場合、工夫次第で中国越境ECとして利用可能です。
1688.comとAlibabaを比較して見てみると、特徴は下記通り、4つあります。
- 純粋に中国市場を狙える:1688.comは、中国国内取引を前提にしているため、中国バイヤーが多数を占め、中国市場へ商品を販売したいという場合は、適しています。日本製品の購入を考えている中国バイヤーも一定数います。当然ながら、Alibabaでも、中国バイヤーはいますが、グローバルECモールのため、東南アジアのバイヤーも入り交じり、純粋に中国市場を狙いたいという場合は、少し軸がずれるのが実情です。
- 運用コストが安い:Alibabaを比較すると、1688.com の運用コストは圧倒的に安いです。具体的には、契約期間によって若干差がありますが、年間費用6688元(13万円相当)、保証金3000元(6万円相当)です。
- 敷居が低い:Alibabaは比較的大きいロットで価格も高めに設定されています。一方、1688.comは、中国国内のBtoBということもあり、小ロットで価格も安く設定されています。このように敷居が低いため、試しに買ってみようというバイヤーも多く、小さな取引からはじめることができるというメリットがあります。
- 登録条件が厳しい:BtoBの中国越境ECを検討している日本企業にとって、最も大きいハードルは、中国で会社登記された企業でないと1688.comで登録ができないことです。中国で貿易会社を設立することは、以前よりはハードルは低くなってはいますが、2か月以上かかることや一定の資本金がいるなどの手続きを考慮すると、依然として厳しい条件と言えます。
愛采購(AiCaiGou)
愛采購(AiCaiGou)は、百度(Baidu、中国最大検索エンジン)傘下のBtoBのECプラットフォームです。
サイトの作りや機能が1688.comと似ているため、1688.comとよく比較され、中国では成長性の高いプラットフォームとして期待されています。
1688.comとの比較で特徴を紹介すると、下記の通りです。
- 運営料金はほぼ同じ:愛采購(AiCaiGou)の運営費用は、プランによって差がありますが、年間費用は6980元(13万円相当)/年で、1688.comとほぼ同様です。
- 検索量で圧倒的優位性:愛采購(AiCaiGou)の最も大きな優位性は、検索量が圧倒時に多いことです。これは、百度が中国国内で最大のインターネット検索エンジンであることが背景としてあります。
- 成長性が期待されている:愛采購(AiCaiGou)は、2018年10月19日にオープンしたばかりで、今後の成長性が期待されています。長い歴史がある1688.comは既に飽和状態であると言われており、1688.comと比較したとき、愛采購(AiCaiGou)は大きな成長可能性があると見られています。
その他
中国には、敦煌网(DHgate.com)や慧聪网(hc360.com)などのプラットフォームが多数あります。
ところが、日本側からでは情報がなかなか入ってこず、管理を行うのは非常に難しくなります。
管理がしやすい最も無難な中国越境ECプラットフォームは、Alibaba、1688.comあたりになるでしょう。
中国BtoB越境ECでブランディング戦略を成功させるための秘訣
成功の秘訣
中国BtoB越境ECにて、ブランディング戦略を成功させるための秘訣は、主に2つです。
1つ目は、中国特有の市場環境を考慮することです。
例えば、中国には特有の文化があり、購入時に重視することも日本と異なります。
中国の歴史、中国消費者の生活環境や考え方、最新トレンドを理解することが、ブランディング戦略を成功させるための秘訣と言えます。
2つ目は、日本国内事業と同様に、本気でやってみることです。
中国ビジネスは、片手間でできるほど甘くはないです。
中国越境ECに限りませんが、中国ビジネスで成功している事例を分析してみると、創業者が自ら中国にきてビジネスを立ち上げているケースや、起業家精神あふれる人材が中国ビジネスを成功させているケースが多いです。
マーケットが大きそうだからという感覚で中国ビジネスを始めて成功できる確率は低く、本気で中国ビジネスを成功させるぞという気概こそが、成功への秘訣と言えるでしょう。
成功事例
株式会社秋田屋は、愛知県に本社を構え、酒類・食品卸をメインとする事業を展開しています。
Alibabaでは7年の販売実績があり、中国越境ECだけでなくグローバルに成功している企業です。
株式会社秋田屋は、日本国内ビジネスにおいて、消費者のニーズに幅広く対応できる強い商品力と1855年から続いている社歴そのものが、他社との差別化となっていました。
中国含むグローバルビジネスでも商品力と社歴を強みとしていました。
Alibabaの紹介ページでは、その商品力と歴史ある企業であることをしっかりアピールされており、それが会社のブランディング化に大いに役立っています。
実は、中国の日本酒市場では、多くの偽物が出回っているという問題があります。
また、日本側の多くの酒蔵は、中国で販売数が伸びるのはいいが、同時に偽物が出回ることによるイメージダウンを恐れており、いいお酒が中国に出回りにくいという問題もあります。
株式会社秋田屋は、東海4県を地盤として、長年に渡り信頼とコネクションを構築していたことにより、数多くの酒蔵から海外販売の許可を取得し、商品力強化につながっています。
中国卸売業者にとっても、100年以上続く酒類卸ビジネスを行っているという信頼性から、安心して購入できる仕入れ先として選ばれ続けているのです。
さらに、注目すべきは、商品力と歴史ある株式会社秋田屋でも、はじめから順風満帆ではなかったことです。
もともと、株式会社秋田屋は、中国免税店の売上の調子が良かったため、海外ビジネスに対して、大きな可能性を感じていました。
2016年からグローバル展開を図りますが、2020年までの取引実績は、わずか数社でした。
その後、コンサルティング会社の専門的なサポートを受け、また自社内で国際ビジネス人材を採用し、本気で取り組むことで、1年で中国含む海外新規取引先を10社増やすことに成功しているのです。
最後に
以上、中国BtoB越境ECで成功するためのブランディング戦略や成功事例などについて、解説しました。
弊社は現在、抖音(Douyin)・小紅書(RED)を活用した中国SNSの運用代行や、中国への越境ECの支援などのサービスを展開しております。
ぜひご気軽にご相談ください。
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