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618商戦とは何か?中国のオンラインショッピングの未来を予測する

618商戦は、中国における大規模なECセールイベントの一つで、その規模と影響力はますます大きくなっています。

中国越境ECなどを行っている会社やブランドにとって、618商戦は知っておいて損はないビッグイベントでしょう。

また、2023年6月18日に行われた618商戦では、予想外の展開も起きており、中国のオンラインショッピングの未来を占うことができる興味深い動きがありました。

この記事では、618商戦とは何か、618商戦から読み取る中国のオンラインショッピングの未来、618商戦での売れ筋商品などについて、解説してきます。

目次

618商戦とは何か?

618商戦とは、独身の日に並ぶビッグセールイベント

618商戦とは、中国における大規模なECセールイベントの一つで、独身の日にも並ぶビッグセールイベントです。

星图数据(Syntun)というビッグデータ調査会社によれば、2023年の618商戦での総売上高は、7987億元(約16兆円)でした。

セール期間は、2023年5月31日20時~2023年6月18日24時まででしたので、約18日の間にこれほどの大きな売上を達成しています。

2021年の独身の日セールでの総売上高は、9651.2億元(約20兆円)ですので、あと一歩には及びませんでしたが、影響力が大きいのは確かです。

618商戦の起源とは

618商戦の起源は、1998年6月18日に京東モール(JD.com)を運営する京東(JD.com。

モール名と会社名は同じ)が創立されたのを記念して、2011年6月18日にビッグセールを開始したことに由来します。

中国では、「6月18日购物节(日本語:6月18日のお買い物フェスティバル)」と呼ばれ、6月1日からお祭りのような雰囲気で、多くの中国人が買い物を楽しんでいます。

618商戦では、期間限定セールや予約販売セールなど様々な割引形式で割引セールが行われ、価格の安さを売りにしたプロモーションが盛んに実施されます。

現在では、京東モール(JD.com)だけではなく、アリババグループが運用する天猫(Tmall)、中国版TikTok抖音(Douyin)や小紅書(RED)なども追随してセールが行われています。

独身の日セールは、基本的に24時間限定のイベントである一方で、618商戦は2週間という長期間のセールであるため、他社が容易に参加しやすいという面もあります。

独身の日セールについては、下記で詳細を紹介していますので、興味のある方はご覧ください。

独身の日 中国市場を攻略するためのマーケティング戦略 | CRESON Media | 中国SNS動画・越境EC支援のクレソン

618商戦の仕掛け人である京東モール(JD.com)とは

618商戦の仕掛け人である京東モール(JD.com)とは、いったいどんなモールなのか、興味を持った方もいると思います。

ここでは簡単に、京東モール(JD.com)について、紹介します。

618商戦の発起人である京東モール(JD.com)とは、劉強東氏により創設された中国ECモールです。

京東モール(JD.com)のECサイト自体は2004年にオープンし、2014年にはアメリカナスダックにIT企業として上場を果たしています。

星图数据(Syntun)によれば、直近の中国市場におけるシェア率ランキング第2位です。

アリババグループと京東モール(JD.com)で合わせると、中国EC市場の大半のシェアを占めることから、中国EC業界の2大巨頭と呼ばれています。

京東モール(JD.com)の強みは、PC機器関連の商品豊富さと、整備された物流インフラです。

京東モール(JD.com)は、もともとPC機器関連専門ECとしてスタートしていることもあり、天猫(Tmall)に比べて、PC機器関連商品が豊富です。

また、午前11時までに注文された商品をその日中に配送することを保証するサービスがあるほど、大規模な物流インフラを保有していることも大きな特徴です。

618商戦で占える中国のオンラインショッピングの未来

理性的になり始めた中国消費者

2023年の618商戦は、京東モール(JD.com)の創立20周年と重なるため、京東モール(JD.com)自体が非常に力を入れていました。

ところが、結果は前年の記録を超える売上高であったものの、予想されたほどの伸びは達成できませんでした。

直近数年では、前年比で20%以上の売上高の伸びがありました。

ところが、京東モール(JD.com)がかつてないほど力を入れたのにかかわらず、2023年では約15%の伸びだったのです。

コロナ政策の影響で中国景気が回復していないなどの憶測がありますが、中国消費者が理性的になり始めているのが根本的な原因です。

商店街に行っても商品購入は控えるようになった中国人

中国消費者が理性的になりはじめた一つの現象として、衝動買いを控えるようになったという動きがあります。

以前、中国人消費者は外食をすれば、必ずと言っていいほどショッピングも楽しんでいました。

ところが、今では、外食をしても、その後はウインドーショッピングをする中国人が増えてきているのです。

この消費行動は中国統計データにはっきり表れており、以前は外食売上の伸びと商品売上はほぼ同一の動きでしたが、直近では商品売上の伸びは鈍化しています。

【外食売上と商品売上の伸びを比較した図、中国統計局より】

※黄色ライン:外食売上の前月比の伸び

青色ライン:商品売上の前月比の伸び

つまり、商店街に人は戻っても、商品購入はいまいち伸びていないのです。

また、この動きは中国ECプラットフォームでも同様で、ECプラットフォームには入るものの、商品購入は冷静に見極める中国人が増えています。

コストパフォーマンスや機能を重視

さらに、注目すべき中国人消費者の動きとして、コストパフォーマンスや機能を重視するようになったということが挙げられます。

2015年から2019年にかけては、中国国民全体の収入の増加が大きかったこともあって、ショッピングにおいては、消費する楽しさなどの感情的要素が非常に強かった時代でした。

ところが、2020年以降は、コロナによる中国景気低迷もあり、収入がそれほど増えない時期が続きます。

そして、限られた予算の中で、いかにいい商品を買うかという思考に変化していきます。

その結果、電化製品ではどれだけ多くの機能や、どれだけ長持ちするかが重視されるようになりました。

スキンケア用品では成分で商品を選ぶ「成分党」と呼ばれる中国女性が急増し、ファッションにしてもどんな材料でつくられているかを詳細に見る中国消費者が増えています。

つまり、中国景気が回復していないというのは一つの側面であり、中国人消費者は感情で買い物をするような衝動買いを控え、商品のクオリティや機能性にまじめに向き合うようになったのです。

実際、中国でショッピングモールに入ると「理性的な買い物をしよう!」というスローガンをよく見かけるようになりました。

【中国上海市モール内の店内に張られているスローガン】

ただ、実はこの動きは、我々が既に経験していることでもあります。

日本経済バブル期は商品やサービス内容をよく見ずに、まさにショッピングを楽しんでいた時期でした。

ところが、バブル崩壊後、我々は消費に対して理性的になっていったのです。

中国で無印良品の人気が高まっているのも、このような歴史的な背景が影響しています。

中国ではこれまで、見栄を張るためのハイブランドや見栄えのいい商品の人気がありましたが、最近ではブランドや見栄えにこだわる傾向はなくなってきています。

そんな中で、素材や質の特性を大事する無印良品の理念が、中国消費者の新しい消費傾向にうまくフィットしているのです。

2023年の618商戦

伝統的なECモールの伸びは鈍化

2023年の618商戦では、そのほかにもいろいろな興味深い動きがありました。

ここではその代表的な動きを3つ紹介したいと思います。

まず1つ目として、天猫(Tmall)や京東モール(JD.com)、拼多多(Pinduoduo)などの伝統的なECモールの伸びが鈍化したことです。

天猫(Tmall)や京東モール(JD.com)、拼多多(Pinduoduo)合わせた売上合計額は、6124億元(約12兆円)でした。

前年比では5.4%の伸びで、全体の伸び約15%よりも大きく下回ってしまいました。

各プラットフォームの勢力図は、以前と変わらず、トップが天猫(Tmall)、次に京東モール(JD.com)、拼多多(Pinduoduo)と続いていますが、それぞれ特徴的な動きがあります。

天猫(Tmall)では、618商戦の期間だけで、ショートムービーのユーザーが113%伸び、閲覧回数や閲覧時間も100%以上伸びました。

さらに、ショートムービーのクリエイターの増加数は、200%以上の伸びでした。

アリババグループでは、618商戦での一番の収穫とは、ショートムービーの利用が盛んになったことだとコメントしているほどです。

京東モール(JD.com)では、2023年の618商戦において、社運をかけた壮大なキャンペーンを打ち出していました。

京東モール(JD.com)自身が、100億元相当の特別ボーナスをユーザーに提供すると宣言していました。

さらに、中国全国95%の地域で、翌日到着まで宣言し、その力の入れようは異常でした。

その結果として、昨年の売上を上回るものの、伸びが小さかったために、京東モール(JD.com)は大きく落胆させざるを得なかったのです。

最後に、低価格で共同購入ができるECサイトで、中国版グルーポンとも言われている拼多多(Pinduoduo)は、当初、京東モール(JD.com)などが大幅割引を実施するため、四面楚歌なのではないかと言われていました。

ところが、結果としては、以前と変わらないパフォーマンスをキープできました。

例えば、スマートフォンでは、荣耀(英文:HONOR)やiQOOなどの中国国産ブランドスマートフォンの売上が前年比100%以上の伸びを記録し、一加(英文:OnePlus)では500%以上の伸びを達成します。

その他の家電でも前年比100%以上の伸びを達成するなど、好調でした。

存在感を増していく中国版TikTok抖音(Douyin)

2つ目の興味深い動きとしては、ライブ販売に強い中国版TikTok抖音(Douyin)の勢いが止まらないことです。

618商戦でのライブ販売の売上高は、1844億元(約3.6兆円)で、前年同期比で約28%の伸びでした。

618商戦の全体的な伸びが数%に対し、ライブ販売まだまだ伸びる可能性を感じさせる結果です。

また、売上ランキングで見ると、中国版TikTok抖音(Douyin)がダントツの1位、2位が天猫(Tmall)、3位が快手(kuaishou、中国版TikTok抖音(Douyin)に次ぐ中国で人気の動画アプリ)でした。

ライブ販売において強い中国版TikTok抖音(Douyin)ですが、売上高の面でも、5月31日の予約販売までは天猫(Tmall)にも引けを取らない勝負をしていました。

開源証券研報(中国ローカルの市場調査会社)のデータによれば、5月31日の化粧品の予約販売における天猫(Tmall)の売上高は約85億9000万元(約1900億円)で、昨年とほぼ横ばいでした。

一方、中国版TikTok抖音(Douyin)のその売上高は、 35億元(700億円)で、前年同期比60.3%増加だったのです。

まだまだ2倍以上の開きはあるものの、中国版TikTok抖音(Douyin)の売上高の増加率を見ると、あと2-3年で追い抜くことが予想される勢いなのです。

さらに、2023年の618商戦でわかった中国版TikTok抖音(Douyin)の特徴として、爆発力が大きいことも明確になりました。

例えば、珀莱雅(PROYA)という、618商戦で大きく売上を伸ばした中国ローカル化粧品ブランドでは、全体として前年比100%増の売上高を達成しましたが、その際、天猫(Tmall)では前年比94%、中国版TikTok抖音(Douyin)モールでは前年比150%の伸びでした。

华熙生物という同じく中国ローカル化粧品ブランドでは、EC全体として前年比10%減の売上高でしたが、その際、天猫(Tmall)では前年比1%減、中国版TikTok抖音(Douyin)モールでは前年比32%減でした。

つまり、天猫(Tmall)は比較的安定した売上が期待できる一方、中国版TikTok抖音(Douyin)の爆発力は大きいが、失敗したときの売り上げ減少程度も大きいことが明らかになったのです。

2023年の618商戦での売れ筋商品とは

3つ目の興味深い動きとして、2023年の618商戦での売れ筋商品を紹介したいと思います。

2023年の618商戦では、売上高上位から順に挙げると、下記の通りです。

  • 美容商品300億元(約6000億円)
  • スポーツ用品258億元(約5000億円)
  • 洗浄剤などの日用品144億元(約3000億円)
  • 調味料105億元(約2000億円)
  • サプリ88億元(約1900億円)
  • スナック66億元(約1200億円)

【各プラットフォームでの売上高と売れ筋商品、星图数据(Syntun)より】

さらに、もう少し細かく見ていくと、面白い動きがあります。

例えば、最も大きな売上を占める美容商品は、2022年には前年比で18.9%減少していました。

ちょうどコロナ政策で基本的に外に出ることができず、外でもマスク着用だったため、この減少は妥当なものでしょう。

ところが、2023年の618商戦でも消費は依然として戻らず、前年比2.3%の減少だったのです。

洗浄剤などの日用品は、コロナ政策でいつ買うことができるかわからなかった2022年では買いだめが流行ったため、前年比33.7%の伸びを示しました。

コロナ政策が終わった2023年でも前年比5.9%であり、比較的高い成長率を維持しています。

つまり、中国人消費者は、化粧品ブランドに対して、最も理性的になり始めたということが言えるのです。

【売れ筋商品の売上高、2023年前年比伸び、2022年の前年比伸びを比較した表、星图数据(Syntun)より】

ただ、冷静になった中国人消費者は、話題性やインパクトで買うのではなく、クオリティや信頼性の視点で買い物をするようになり、真剣に商品やサービスと向き合うようになったとも言えます。

言い換えれば、商品開発やクオリティ向上に真剣に向き合ってきた日本ブランドにとって、大きなチャンスともとらえることができるでしょう。

最後に

以上、618商戦とは何か、618商戦から読み取る中国のオンラインショッピングの未来、618商戦での売れ筋商品などについて、解説しました。

弊社は現在、中国版TikTok抖音(Douyin)・小紅書(RED)を活用した中国SNSの運用代行や、中国への越境ECの支援などのサービスを展開しております。

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