Tmall Global(国際天猫)は、中国市場を狙いたいと考えるブランドや企業にとって必須のプラットフォームです。
Tmall Global(国際天猫)への出店条件や費用、手続きは確かに面倒ではありますが、一度出店ができれば、中国向け販売を大きく伸ばすことができます。
今すぐに始めることは難しいとしても、知識として知っておくだけでも有効です。
この記事では、Tmall Global(国際天猫)を活用した越境ECビジネスのはじめ方について、紹介していきます。
Tmall Global(国際天猫)の使い方
Tmall Global(国際天猫)とは
Tmall Global(国際天猫)とは、アリババグループが運営する、中国国内消費者向けの国外商品販売ECモールです。
日本企業や日本ブランドが国際ブランドとして中国市場を攻略しようと考えるなら、最もスタンダードな方法はTmall Global(国際天猫)を活用した越境ECです。
もともとアリババグループは、2003年からCtoC向けのECであるTaobao(淘宝)を運営していました。
その後、BtoC市場を開拓するために、2008年に中国国内の企業会員だけが販売できるTmall(天猫)を創設しました。
ちなみに、Tmall(天猫)の名前の由来は、「天猫」の中国語読み(tianmao)が、Tmallと似ているからと言われています。
2014年には、外国法人が出店可能なTmall Global(国際天猫)を立ち上げます。
ところが、中国消費者ユーザー視点から見ると、Taobao(淘宝)、Tmall(天猫)、Tmall Global(国際天猫)の違いを意識する人はそれほど多くはありません。
なぜなら、Taobao(淘宝)アプリを使って商品を検索すると、これらの3つの市場が区別されずに表示され、決済までスムーズに進められるからです。
商品に問題があった場合は店舗情報や、どこの市場の店舗を構えているかを確認することはあっても、購入時にはあまり気にならないようです。
さらに、中国の市場調査会社からの調査データでは、Taobao(淘宝)、Tmall(天猫)、Tmall Global(国際天猫)を区別して市場分析されている資料は少ないです。
一方、中国の一部の消費者は商品の品質に非常に敏感であり、海外ブランドを信頼する傾向があります。
このような消費者は、非正規ブランドの中国個人店舗からの購入を避け、代わりにTmall Global(国際天猫)の正規店舗から購入し、消費額も高くかつロイヤルカスタマー(ブランドに愛着を持ち長期的に購入してくれる顧客)になる傾向があります。
そのため、ブランディングを重視する企業は、Tmall Global(国際天猫)を活用した越境ECを検討することをおすすめします。
Tmall Global(国際天猫)の魅力
Tmall Global(国際天猫)の概要がわかったところで、Tmall Global(国際天猫)の魅力をみていきましょう。
Tmall Global(国際天猫)の魅力は、主に3つあります。
- 中国最強の集客力
- ブランディングしやすい
- 日本にいながら中国販売が完結
中国最強の集客力
Tmall Global(国際天猫)の最大の魅力は、なんといっても中国最強の集客力です。
中国ECマーケットシェアでみると、Tmall Global(国際天猫)は圧倒的No.1です。
期間やジャンルなどによってシェア率が変わってきますが、Taobao(淘宝)、Tmall(天猫)やTmall Global(国際天猫)を合わせると、概ね中国EC市場の60%を占めています。
中国のEC市場シェア率は、世界でもNo.1ですから、世界市場の目線から見ても、世界最強の集客力を持っていると言えるでしょう。
ちなみに、中国において、中国市場におけるシェア率ランキング第2位は、京东(Jingdong)です。
京东(Jingdong)の強みは、PC機器関連の商品豊富さと整備された物流インフラです。
3位は、拼多多(Pinduoduo)ですが、2位の京东(Jingdong)とは僅差です。
拼多多(Pinduoduo)は、低価格で共同購入ができるECサイトで、中国版グルーポンとも言われています。
ユーザー層は、中国の三・四級都市や中所得者が多いのも特徴です。
他の中国ECプラットフォームと比較しても、大きなシェアを確保しているTmall Global(国際天猫)は、大きな存在感があります。
ブランディングしやすい
2つ目のTmall Global(国際天猫)の魅力は、ブランディングしやすいことです。
ブランディングを行うためには、消費者に統一されたブランドイメージを持ってもらう必要があります。
中国でよく失敗する事例として、以下のようなことが挙げられます。
中国代理店などに商品やサービス販売を全面的に任せ、目先の売上のために中国代理店にバーゲンセールされてしまう。
結果、一時的な売上は獲得できても、ブランディングがうまくできず、中国ビジネスではうまくいきません。
その点、Tmall Global(国際天猫)では代理店を介さず、越境ECで直接中国消費者へ販売することができます。
また、Tmall Global(国際天猫)のページや商品紹介もきれいに設定でき、プラットフォーム自体の信頼度が高いため、ブランディングがしやすいのです。
日本にいながら中国販売が完結
3つ目のTmall Global(国際天猫)の魅力は、日本にいながら中国販売が完結することです。
Tmall Global(国際天猫)では、中国現地法人や中国現地スタッフ、中国現地の倉庫、中国銀行口座などは不要です。
基本的にTmall Global(国際天猫)が指定した通りに、中国へ自社商品を送付すれば、中国販売が完結します。
中国越境ECを行う際、実務的に問題になるのは、中国現地法人、中国現地スタッフや在庫管理などです。
Tmall Global(国際天猫)では、中国に発送された後の商品は、基本的に管理を委託できるため、自社では、販売管理に集中することができます。
Tmall Global(国際天猫)を活用した中国越境EC
Tmall Global(国際天猫)の魅力がわかったところで、具体的なTmall Global(国際天猫)の活用方法を紹介しましょう。
Tmall Global(国際天猫)での商品販売形態
Tmall Global(国際天猫)で商品を販売しようとした際、販売形態は3つあります。
- 旗艦店(フラッグシップショップ)モデル
- Tmall Global(国際天猫)への卸売販売モデル
- フルフィルメント越境ECモデル
旗艦店(フラッグシップショップ)モデル
1つ目の旗艦店(フラッグシップショップ)モデルは、Tmall Global(国際天猫)に自社店舗を構えて、そこから中国消費者に商品を販売していくモデルです。
自社管理でお店運用を行っていきますので、ブランディングを行うのに最適です。
出店条件が厳しく、費用も大きくかかりますが、Tmall Global(国際天猫)のスタッフから手厚いサポートを受けることができます。
また、Tmall Global(国際天猫)独自の顧客管理システムなども使うことができるため、効率的に、中国消費者市場を管理することもできます。
【旗艦店モデル、Tmall Global(国際天猫)サイトから抜粋】
Tmall Global(国際天猫)への卸売販売モデル
2つ目は、Tmall Global(国際天猫)への卸売販売モデルです。
このモデルは、自社商品をTmall Global(国際天猫)へ卸売り販売し、その後の販売をTmall Global(国際天猫)へ任せるモデルです。
分かりやすく言うと、Tmall Global(国際天猫)が、中国販売代理店として商品を購入して、中国へ販売をしてくれます。
Tmall Global(国際天猫)は、「官方直营」と呼ばれる、Tmall Global(国際天猫)自身の公式店舗があります。
Tmall Global(国際天猫)自身が、世界中から商品を仕入れて、その公式店舗で販売しているのです。
Tmall Global(国際天猫)への卸売販売モデルでは、自社店舗を構えることはできませんが、Tmall Global(国際天猫)が自社商品を代わりに販売してくれます。
一方、顧客管理や販売管理は、Tmall Global(国際天猫)が行うため、ブランディングを完全自社でコントロールしたいという方には、あまりおすすめしません。
ただし、自社ブランド方向性や価格設定などは、Tmall Global(国際天猫)へ伝えることが可能であり、中国販売においてTmall Global(国際天猫)はプロフェッショナルです。
中国市場や販売管理を任せるリソースがないブランドにとっては、有効な選択肢となるでしょう。
【Tmall Global(国際天猫)への卸売販売モデル、Tmall Global(国際天猫)サイトから抜粋】
フルフィルメント越境ECモデル
3つ目は、フルフィルメント越境ECモデルです。
フルフィルメント越境ECモデルは、テスト販売などを目的としており、Tmall Global(国際天猫)が中国への販売をサポートしてくれるモデルです。
Tmall Global(国際天猫)自身の店舗でテスト販売してくれるので、Tmall Global(国際天猫)への卸売販売モデルと似ています。
相違点としては、以下の2点です。
- 中国市場へのテスト販売を検討している方向けのサービスであること
- 商品は中国倉庫に保管するのではなく、Tmall Global(国際天猫)が指定する日本国内の倉庫に納品する必要がある
中国消費者ユーザー視点で考えると、商品在庫が海外にあるため、購入後に1週間後に商品が到着するなど不便です。
あくまでテストマーケティングとして利用したいブランドに向いている越境ECモデルです。
【フルフィルメント越境ECモデル、Tmall Global(国際天猫)サイトから抜粋】
各モデルの詳細は、下記サイトでも紹介していますので、興味のある方はご覧ください。
Tmall Global Flagship Store – Tmall Global Merchant Channel
Tmall Global(国際天猫)の出店条件や費用
次に、Tmall Global(国際天猫)の出店条件や費用を紹介しましょう。
詳細の出店条件などは下記の通りです。
必須条件
- 正式に登記された企業
- 自社ブランドを所有していること
- 商標を取得していること
- 大手企業であること
- 業界第3位以内の実績があること
- 認知度の高い企業であると認められていること
- 天猫国際で売上や伸びが期待できること
- 越境ECの専門チームがある
優先条件(あると望ましい)
- 実店舗が複数ある、或いはB2C向けのECサイトを運用していること
- 中国国内に進出していないブランドであること
申請時に必要な資料
- 会社登記簿謄本
- 会社の税務登録証明書及び直近の納税証明書
- 会社代表者・店舗責任者の身分証明書、ライセンス証明書
- 会社の銀行口座所有証明書及び銀行預金残高証明書
出店時の費用
- 年会費:取扱商品によって異なりますが、5,000ドル、10,000ドルの年会費があります。
- 販売手数料:これも取扱商品によって変わり、概ね販売額の0.5-5%です。
- 保証金:通常は25,000ドルの保証金を支払う必要があります。
- その他:倉庫物流費用、広告費用など必要に応じて費用が発生します。
必須条件については、非常に厳しい要求と感じる方も多いかもしれませんが、時期によって、実際の審査時は柔軟に対応してくれることもありますので、チャレンジしてもいいでしょう。
Tmall Global(国際天猫)で中国越境ECを成功させるための秘訣
中国最大の越境ECモールであるTmall Global(国際天猫)ですが、店舗をオープンできたからと言って必ず成功するとは限りません。
ここでは、Tmall Global(国際天猫)で中国越境ECを成功させるための秘訣を紹介したいと思います。
しっかりとしたブランディングが大事
最も大事なことは、しっかりとしたブランディングです。
日本の大手化粧品メーカーなど、国際的に有名な企業であれば、「品質の良い定評あるブランド」というイメージを消費者に抱かせることができます。
一方、日本では有名であっても、国際的にはあまり有名ではないブランドが、中国市場で自社商品を販売しようとした場合、中国消費者にとって具体的にどんなメリットがあるのかを明示しない限り、物が売れることは難しいのです。
特に、一昔前であれば、日本ブランドというだけで物が売れた時代もありましたが、今はそのような時代ではなくなってきています。
中国は既に豊かな国になっており、品質の良い商品を作る中国ローカル会社もいれば、中国消費者のニーズに合わせた多種多様な商品が多く出回っています。
そんな競争の激しい中国市場で、日本ブランドというだけで、ブランディング化ができることは期待できません。
だからこそ、「中国消費者に与えるブランドイメージ」を戦略的に考えることが、重要なカギを握るのです。
成功事例‐VNTUS(ヴァニタス)
直近の日本ブランドの事例を挙げれば、VNTUS(ヴァニタス)は、徹底した中国マーケティングにより、大きく成功しています。
VNTUSは、日本を代表するカラーコンタクトレンズブランドです。
2023年10月16日にTmall Global(国際天猫)で旗艦店もオープンし、既に中国市場でも一定の地位を築いています。
【VNTUSのTmall Global(国際天猫)で旗艦店】
VNTUSは、中国でブランディングとマーケティングを上手に行っており、います。
VNTUSでは、「瞳をメイクするカラコン」をコンセプトに、若者向けでかつハイエンドコンタクトレンズブランドとして、認知を高めていくことを決めます。
ここでは、どのようにVNTUSが中国市場での越境ECビジネスに成功したのかを見ていきましょう。
まず、VNTUSは中国でマーケティングを行う際、20~30歳までの都市部に住む中国人女性にターゲットを絞りました。
そして、中国女性の若年層に最も人気がある小紅書(RED)を活用して、マーケティングを行いました。
具体的には、中国沿岸部及び杭州や成都などの流行に敏感な若い女性が集まるところにターゲティングします。
ターゲットの消費者層へ広く確実にリーチできるよう、山秋友友などのKOLやKOCに対し、小紅書(RED)での投稿依頼しました。
投稿する際は、「狐系(狐のようなメイクアップ)」など、トレンドになっている言葉や重要なキーワードも外さずに、入れ込みながら投稿依頼します。
結果として、ターゲットに効率よくアプローチでき、Tmall Global(国際天猫)の売り上げも大きく伸びました。
最後に
以上、Tmall Global(国際天猫)を活用した越境ECビジネスのはじめ方について、解説しました。
弊社は現在、中国版TikTok抖音(Douyin)・小紅書(RED)を活用した中国SNSの運用代行や、中国への越境ECの支援などのサービスを展開しております。
ぜひご気軽にご相談ください。
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