中国ではライブコマースが日本以上に急成長しており、今や新たなEC手法として存在感が高まっています。
既にたくさんの企業が、中国ライブコマースを使って商品PRを行い、日本からの成功事例も出てきています。
しかしながら、中国国内での成功事例は中国企業が圧倒的に多く、日本からの成功事例は数えるほどしかないのが実態です。
この記事では、中国ライブコマースで成功するためのポイント、成功事例、そして日系企業がマーケットシェアを拡大する方法を紹介していきます。
中国ライブコマースで成功するためのポイント
中国ライブコマースの成功要素-人
中国ライブコマースを利用して、商品の認知度がアップし、商品がたくさん販売できたなどの成功事例が出ています。
それらの成功事例を分析していくと、たまたま成功できたなどでは決してなく、共通点があります。
その共通点を分析していくと、成功要素として、人、物、場所(プラットフォーム)に分類できます。
以下では、成功要素の3つについて、ひとつひとつ解説してきますね。
まず、人について、さらに細かく分類すると、下記のように整理できます。
- どんな人に買ってもらいたいかが明確
- 消費者心理を深く理解している
- 出演者の専門性が高い
- 出演者のキャラクター設計が上手
- 出演者の表現能力が高い
- 消費者との一体感・相互性
1つ目のどんな人に買ってもらいたいかについて、中国ライブコマースで成功している企業はすべて、ターゲティングをしっかり行っています。
自社がどんな企業で、誰にどんな価値を与えたいかが、明確なのです。
中国の消費者は、日本と同様に、様々な年齢、居住場所、職業、家族構成などが異なり、商品に対するニーズも異なるため、どのターゲット層を狙うのかを明確にすることは非常に大事なポイントです。
2つ目の消費者心理の理解について、成功している中国ライブコマースの出演者は、消費者の心理を深く理解しており、洞察力が高いです。
商品の良い面を紹介して販売するのが基本ですが、過剰に良い商品であることを説明すれば、返品率上昇やファン離れにつながります。
例えば、優秀なライブコマース出演者は、低価格帯のネックレスを紹介している際、視聴者から「色落ちしますか?」と聞かれたとき、「色落ちはするが、簡単には色落ちしない」とスピーディーに回答します。
このように、消費者が聞きたいことの本質を理解して回答しつつ、効果的な商品PRを行っているのです。
3つ目の出演者の専門性について、成功している中国ライブコマースの出演者は、全員プロです。
商品についての専門知識や視聴者への対応スピードなど、どれをとっても高い専門性を持っています。
例えば、口紅をライブコマースで案内する際、視聴者から「その口紅の成分は?」や「高齢の女性でも合いますか」などの質問が来ます。
それらの質問に対して、スピーディーに、わかりやすく回答できる専門性が求められます。
4つ目の出演者のキャラクター設計について、成功している中国ライブコマースの出演者は、キャラクター設計が上手です。
中国ライブコマースには、ブランド店のスタッフが出演するケースと、インフルエンサーが出演する2種類あります。
ブランド店のスタッフによる出演の場合は、消費者への影響度合いでいうと、ブランド自体が第一、出演者が第二です。
一方、インフルエンサーが出演する場合は、インフルエンサーの影響が最も大きく、その出演者のキャラクター設計がより大事なポイントになります。
例えば、現在、中国で最も影響力の大きいインフルエンサーと言われている李佳琦(Austin)は、中国では「李佳琪倾家荡产(日本語意訳:Austinは【ファンのために】家財道具を全て投げ売っている)」というキャラ設定です。
上手なキャラ設定で、李佳琦(Austin)は、中国消費者からの絶大な信頼を得て、中国ライブコマースでいくつもの記録を塗り替えています。
5つ目の出演者の表現について、成功しているライブコマースの出演者は、視聴者へリアルな購買体験をさせるのが非常に上手です。
実際、表現力の非常に高い出演者は、中国ライブコマースで、視聴者と上手にコミュニケーションをとりながら、実際に商品を使ってみるなどしています。
先ほど紹介した李佳琦(Austin)は男性であるにもかかわらず、女性向け商品である口紅を自分の唇に塗って、「乾燥肌の方にお勧め!」と紹介し、体を張った上手な表現をしています。
6つ目の消費者との一体感・相互性について、成功しているライブコマースでは、一体感や相互性をリアルに感じるライブを実施しています。
うまくいっているライブコマースでは、出演者が商品のキャンペーン終了のカウントダウンをすると、数万個の商品が秒単位で売れていきます。
カウントダウンを取り入れることや視聴者への呼びかけを重視して、出演者と消費者との一体感・相互性を生み出し、ライブコマースならではの機能をフル活用しているのです。
中国ライブコマースの成功要素-物
中国ライブコマースの成功要素の2つめは、物、つまり商品に関することです。
さらに細分化していくと、2つのポイントに分けられます。
- 商品価格
- 物流
1つ目の商品価格について、成功しているライブコマースでは、商品価格は最安値、或いは付属の景品が豪華です。
中国のブランド店は、トップインフルエンサーに商品PRをしてもらう際、基本的に最安値での商品販売をしており、それがトップインフルエンサーの更なる人気につながっています。
中国では、キャンペーン期間の関係で、トップインフルエンサーが行ったライブコマースでの商品価格が最安値ではなくなってしまったことがありました。
そのインフルエンサーは、「自腹でも購入者へ最安値になるよう手配する!」と明言し、中国では大きなニュースになりました。
それほど、商品価格や景品は、インフルエンサーの信頼にもつながる重要なポイントであり、ライブコマースでの成功のキーでもあるのです。
2つ目の物流について、成功しているライブコマースでは、物流インフラが整っており、スピーディーに対応しています。
その時のライブの雰囲気にのまれて、購入してしまう中国消費者も多く、商品販売側としては購入意欲が残っているうちに、素早く商品を届ける必要があります。
また、ライブコマースでは、特定の商品が一瞬のうちに大量に販売されることがあり、急激な販売増でも対応できる物流インフラを整えることがポイントになります。
中国ライブコマースの成功要素-場所(プラットフォーム)
最後の中国ライブコマースの成功要素は、場所(プラットフォーム)です。
中国ライブコマースのプラットフォームは、小さいのも含めると100以上あります。
それぞれの特徴やポイントを抑え、どのプラットフォームと相性がいいのかを考える必要があります。
よく使われる中国ライブコマースの特徴について、簡単に紹介します。
- 淘宝直播(Taobao Live):中国でメジャーなライブコマースです。ジャックマーが創設したアリババグループ傘下の淘宝(タオバオ)で展開されているライブコマースで、2016年からの長い歴史があります。
- 抖音直播(Douyin Live):中国大手ショート動画配信プラットフォームである抖音(Douyin)でのライブコマースです。抖音(Douyin)のECプラットフォーム「抖音小店」は2020年10月からオープンし、後発ながら、淘宝直播(タオバオライブ)と並ぶ中国でのメジャーなライブコマースです。
- 快手直播(Kuaishou Live): 抖音(Douyin)と並ぶ大手ショート動画配信サービスである快手(Kuaishou)のライブコマースです。抖音(Douyin)と異なり、快手(Kuaishou)は、中国の都市部ではなく、地方のユーザーが多い特徴があります。
- 小紅書直播(RED Live):中国発のソーシャルEC プラットフォームである小紅書(RED)のライブコマースです。大部分のライブコマースが最安値戦略をとる中で、小紅書(RED)は、高価格の客単価を重視するという独自の戦略があります。
中国ライブコマースの成功事例
成功事例-理肤泉(LaRochePosay)
ライブコマースの中国国内での成功事例は、どんなものがあるのでしょうか。
ここでは、日本ではあまり報道されていない、中国現地の成功事例を紹介します。
1つ目は、中国の化粧品ブランドである、理肤泉(LaRochePosay)の事例です。
理肤泉(LaRochePosay)のライブコマース月間売上高は1000万元を超え、抖音电商(Douyin EC)の化粧品カテゴリーでは常にトップ3に入っています。
理肤泉(LaRochePosay)は、自社によるライブコマースを販売の主軸としおり、精密なマーケティング活動と、インフルエンサーはあくまで補助的に起用していることが大きな特徴です。
精密なマーケティング活動については、ターゲティング、出演者の専門性、商品グルーピングの最適化を厳格に行っています。
理肤泉(LaRochePosay)は、自社の顧客層を分析したうえで、動画やコンテンツを作成し、反応があった顧客層等を再分析していき、少しでも多くの顧客がブランドに興味をもってくれるよう様々な施策を行います。
また、ターゲット層が、ライブを見る習慣をつけさせるための様々な施策などを継続的に行い、ライブコマースのファンを増やしていきました。
さらに、ターゲット層を細分化して、各ターゲット層の趣味嗜好、出演者の専門性を考慮して、紹介する商品のグルーピングを行い、各ターゲット層に最も響くライブコマースができるよう、継続的に最適化を行っているのです。
成功事例-太平鸟(PEACEBIRD)
次に紹介するのは、太平鸟(PEACEBIRD)というファッションブランドで、中国国内での成功事例です。
2020年下半期から抖音でライブコマースを開始し、様々な改善を継続して行った結果、1日あたりの売上高が10万元(200万円相当)から300万元(6,000万円相当)へ大幅にアップすることに成功しています。
太平鸟(PEACEBIRD)は、ライブコマースをはじめた当初、視聴者が少なく、商品購入も多くはありませんでした。
そんな状況でも、毎日18時間以上のライブコマースを続け、見に来てくれたわずかな視聴者である顧客層や、どの時点が一番盛り上がったのかなどの分析を行い、ターゲティングの精度とライブコマースのクオリティを上げていきました。
また、ライブコマースの出演者のキャラや体形に合わせて、紹介する商品も変えるなどの施策も同時に行い、徐々にファンを増やしていったのです。
さらに、ライブコマースにより、短期間で特定の商品が爆売れすることがありましたが、太平鸟(PEACEBIRD)では、そのような場合に備えて、倉庫・物流管理とアフターサービス部隊が、しっかり連携をとれる体制を構築していたこともポイントです。
成功事例-Whoo
Whooは、韓国の高級化粧品ブランドですが、抖音直播(Douyin Live)のライブ開始3時間足らずで、1億元(20億円相当)の売上を実現するという、記録的な数字を達成しています。
Whooは、非常に用意周到に、中国ライブコマースでの販売を行っています。
まず、中国のトップインフルエンサーであり、特に抖音(Douyin)で非常に大きな影響力を持つ广东夫妇(広東夫婦)とアライアンスを組みます。
Whooは、既に特定の商品とインフルエンサーの組み合わせで、一定商品がよく売れることを調査済みで、その広告効果やポイントをよくわかっていましたのです。
次に、广东夫妇(広東夫婦)は、ライブ当日より前に、Whoo に関する7つの動画を配信し、彼らのファン層へ事前に商品PRを行います。
同時に、Whoo自身でも、抖音(Douyin)上で、”0108 见证奇迹(日本語:1月8日奇跡目撃)”というハッシュタグをつけて、ライブによるキャンペーンの話題性を高めていきました。
抖音直播(Douyin Live)でのライブの当日には、話題性は頂点に達し、視聴者が20万人になり、ライブ開始3時間足らずで、1億元(20億円相当)の売上を実現したのでした。
日系企業が中国ライブコマースでマーケットシェアを拡大する方法
成功させるためのコツ
日系企業が中国ライブコマースでマーケットシェアを拡大するためには、前述した成功要素の3つを抑えるとともに、追加で抑えておくべきポイントがあります。
まず、中国の特異性を考慮することです。
中国の消費者は、日本と同様に、様々な年齢や生活パターン等があり、ニーズが異なると前述しました。
実は、中国は日本と異なり、地域格差が大きく、場所によって、平均賃金が2倍以上の差があります。
また、中国現地生産を行っていない日系企業の場合は、中国への越境ECになりますので、中国物流含む国際物流事情も考慮しておく必要があります。
日系企業にとっては、別途、このような中国の特異性を考慮することが、成功させるためのコツです。
次に大事なのが、若い方からの意見を積極的に活用することです。
CSMレポート等によれば、ショート動画などの中国ユーザー年齢構成は、実際人口年齢層とほぼ同じですが、日本ユーザー年齢構成は、10-20代のユーザーが大部分を占めます。
実際、中国に来てみるとわかりますが、高齢者の方でも、スマートフォンを片手に、ショート動画やECのアプリを難なく使いこなしています。
ライブコマースでも、若者中心で広がっている日本とは異なり、中国では年齢層に関係なく中国全体で新しいものを取り入れようという気概さえ感じるのです。
このように日本と中国の違いから考えると、日系企業が中国ライブコマースで成功したいと思うのであれば、普段ソーシャルECなどに触れている若手の意見を積極活用するのが、大事なポイントになります。
また、40-60代であっても、自ら積極的にソーシャルECなどに触れて、ライブコマースへの理解を深めてみてもいいでしょう。
日系企業の成功事例
中国国内での成功事例では、中国企業が圧倒的に多いのが実情ですが、日本からの成功事例も少なからずあります。
その代表的な事例が、令和2年10月に行われた、山梨県観光振興課の中国向けの観光促進プロジェクトです。
中国人向けにライブコマースを行ったことにより、配信1時間で約111.6万人の視聴、約877.7万円の売上(宿泊施設客室数352)、“いいね”は約17.4万、コメント数は約4,825という驚異的な成功を収めました。
このプロジェクトは、インバウンド効果を狙いたい企業にとっても非常に参考になる事例で、山梨県観光振興課による戦略的なプロジェクトでした。
まず、山梨県観光振興課は、中国で歌手や俳優、MCとして人気のある戴軍を司会に起用します。
次に、くじ引きなどの視聴者参加型キャンペーンを企画するなど、ライブコマースならではの施策も実施しました。
最後に、ターゲットのニーズの把握や明確化を重視しており、これまで公平性を重視するあまり、観光情報を平等に紹介する傾向がありましたが、本プロジェクトではターゲットの趣味嗜好に合わせてセレクトすることで、中国消費者の心をつかみました。
山梨県観光振興課は、20~30代の若手職員から意見を取り入れるのが重要と認識しており、若手職員との意見交換会を増やしていき、次の施策へ活かしたいと、今後の意気込みを語っています。
日本への中国旅行客が増えつつある現在、山梨県観光振興課のこのプロジェクトは、インバウンド効果でさらに大きく成功できることでしょう。
最後に
以上、中国ライブコマースの成功事例を中心に、日系企業がマーケットシェアを拡大する方法などについて、解説しました。
弊社は現在、抖音(Douyin)・小紅書(RED)を活用した中国SNSの運用代行や、中国への越境ECの支援などのサービスを展開しております。
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