はじめに
2022年時点で中国のEC市場規模は200兆円といわれています。
これは日本のEC市場規模の10倍もの大きさです。
そんな魅惑の市場、中国本土へ自社サービスを展開したい!と考えた場合、SNS運用を計画されると思うのですが…
「わが社の製品の品質は最高だから、Tiktokで中国向けアカウントを開設しておけば知名度はどんどん上がっていくはず!」
「メイドインジャパンという文句さえあれば、インスタグラムで中国向けにサービス紹介しておけば売れに売れるはず!」
…残念ながらこれでは中国本土へ自社サービスが認知されることはありません。
中国本土へ自社サービスを認知してもらうには、抑えておくべきポイントがあるのです。
今回記事では、
TikTokと中国版TikTok抖音(Douyin)の違いを説明するのに加えて、中国本土へSNSを利用してサービスを売り込む際の注意点、ポイントを紹介したいと思います。
中国本土へのマーケティングの第一歩を踏み出そうとしているあなたの一助になれば幸いです。
知っていますか?TikTokと中国版TikTok抖音(Douyin)の違い
結論から申し上げます。
TikTokと中国版TikTok抖音(Douyin)の最も大きな違い。
…それは
メインユーザーの違いです。
Tiktokはグローバル版とも呼ばれ、利用者が中国以外の全世界のユーザーがメインなのに対し
抖音(Douyin)を使用しているのは中国国内のユーザーがメインです。
Tiktokは中国本土から基本的にはアクセスできないのです。
そのため…先に一例として挙げさせていただいた
「中国本土へ自社商品を認知させる為にTiktokを使ってマーケティングしよう」
という試みは…実はほぼ効果がありません。
ポイント:SNSの選択
大前提として中国本土へマーケティングを行う場合には、中国本土で展開されているSNSを利用する必要があります。
マーケティング担当者が知るべき、中国本土で使われているアプリとは?
実は、このような中国国内限定プラットフォームのサービスというのは抖音(Douyin)だけではありません。
私たちが日常で触れている、Instagram、Twitter、Youtube、LINEなども中国国内では使用することができないため、中国本土のユーザーは代わりに以下のようなサービスを利用しているのです。
Instagramのかわりに…小紅書(RED)
小紅書(RED)は女性ユーザーが圧倒的に多く、あわせて美容に関する投稿が多数。
InstagramとAmazonの機能をあわせ持つSNS。
月間アクティブユーザー数2億人。
Twitterのかわりに…微博(Weibo)
微博(Weibo)はTwitterとFacebookの要素をあわせ持つSNS。
2022年時点で月間アクティブユーザーが12億人以上の巨大サービス。
Youtubeのかわりに…优酷(Youku)
优酷(Youku)は中国三大動画配信サービスの一つ。
月間アクティブユーザーは2億人以上。
LINEのかわりに…微信(Wechat)
通話やメッセンジャー機能等の主な機能のほか、あらゆる決済機能に対応。
月間アクティブユーザー数は9億人を超える。
ポイント:中国本土の人は根本的に違うサービスを利用している
日本やその他世界の人々が利用しているサービスと中国本土の方の利用するインターネットサービス。
抖音(Douyin)に限らず根本的に違うという事を理解する必要があります。
ただ、中国本土限定のサービスといえどユーザー数は莫大。
一つの言語圏が持つ市場規模としてみても超巨大です。
トレンドは若年層の嗜好の変化と動画の短さ
それでは、これらの中国本土限定のサービスのうち一体どのサービスを用いてマーケティングを行うことが最も効率的なのでしょうか?
世界のトレンドからそれを考えてみます。
若年層の利用SNS変化
近年、Twitterやfacebookなどのコミュニケーションを主軸としたSNSはユーザー数の伸びが鈍化しつつあります。
参考:日本・世界のSNSユーザー数まとめ(Facebook,Twitter,Instagram,YouTube,LINE,TikTok)(Insta lab)
参考:【2023年1月更新!】データからみるTwitterユーザー実態まとめ(echoes)
コミュニケーションを主軸としたSNSというものから、Tiktokのような動画を眺めるだけ…というようなSNSへアクティブユーザーが流れているようです。
参考:Z 世代の“SNS 疲れ”から生まれる一人行動ニーズ~SNS は若年層における情報収集のメインツールにもなっている~(野村総研)
何故でしょうか?
ショート動画
その理由のひとつとして挙げられるのが、ショート動画の台頭です。
皆様はショート動画をご覧になったことがありますでしょうか。
ショート動画は
- 短い時間の中に多くの情報を詰め込める
- 長くても30秒~1分でいつでも見られる
- 頭を使わずにぼーっとしながらも見られる
- 結果、連続してどんどんと見てしまう
- つまらないと思ったらすぐに飛ばせる。
- やめられないとまらない
という特徴があります。
若者たちにとってはテキストや画像よりも、短時間でわかりやすく、刺激も多いショート動画の方が合っているのかもしれません。
このショート動画というトレンドを作ったTiktok(Douyin)は爆発的に伸びました。
この影響は大きく、他SNSや動画サイトにおいてもショート動画のコンテンツが組み入れられたほどです。
- Youtube→Youtubeショート
- Instagram→Instagramリール
- Facebook→リール(Reel)
など。
Twitter社ではかつて買収したのち、運用を停止している「Vine」というショート動画アプリを復活させる計画もあるとか…
それほどにショート動画は現代人のニーズに合ったサービスなのです。
今後はさらにショート動画を利用したSNSが成長していくと見られています。
ポイント:トレンドとニーズは…
- これからの時代を担う若年層がメインの伸びしろが大きいSNSを利用しましょう。
- ショート動画をメインにしたSNSを利用しましょう。
抖音(Douyin)の機能等から見る強み
上記のポイントを満たした、中国本土向け広報に使うべきSNSを挙げるならば…
抖音(Douyin)を挙げます。
抖音(Douyin)のメインユーザーは若年層。またショート動画メインのSNSです。
さらにそれに付け加え、以下のような強みがあります。
圧倒的な「レコメンド機能」の強さ
抖音(Douyin)を運営するByteDance社は2021年、ユニコーン企業として世界1位の価値(約1400億米ドル)をつけるほどの会社になりました。
その理由の一つとして挙げられるのが同社の技術力。
AIを活用したレコメンド機能の精度は他の追随を許さないパワーを持っています。
「あなた自身より私の方があなたの事を知っている。」
これは抖音(Douyin)のAIによるレコメンド機能がいかに優れているかを示すキャッチコピーです。
抖音(Douyin)にはユーザーが見ているショート動画の嗜好を分析し、さらにユーザーがハマっていくショート動画を提供する仕組みがあるのです。
Twitterなどではフォロワー数が少なければそもそもリツイートされることがないのですが、この機能によって抖音(Douyin)ではフォロワー数が少なくてもバズるチャンスがあるのです。
先進性
ByteDance社は2016年に抖音(Douyin)をリリースし、2017年にTikTokをリリースしました。
抖音(Douyin)はTiktokの派生元アプリなのです。
そのため、最新の技術や機能の実装はTiktokよりも抖音(Douyin)が先駆けて行うことが多いようです。
一例としてLIVE機能。
TiktokでLIVE機能が実装されたのは2020年7月30日ですが、抖音(Douyin)ではその遥か前から既に実装されていました。
抖音(Douyin)を利用していれば、今後Tiktokでどのような機能が実装されるかある程度予測ができるといえます。
多機能性
抖音(Douyin)はショート動画を投稿、共有するだけにとどまらず様々な機能を備えています。
- Tiktokにはない、個人チャット、グループチャットなどのSNSとしての機能があったり…
- ショート動画配信中に商品リンクを貼って商品を販売することができたり…
- 広告やライブ配信で利益を得られたり…
- KOL(Key Opinion Leader:専門的な知識を持ったインフルエンサー)、KOC(Key Opinion Consumer:フォロワーとの関係が深く、影響力が強いアカウント)が自動的に販売してくれる仕掛けをもっていたり…
一般ユーザーだけではなく、企業がマーケティング方面において利用する上でも役立つ機能が数多く存在しているのです。
確かな技術力を持つ会社ですから、私たちが驚くようなさらなる新機能の追加もあるかもしれませんね。
潜在的な顧客を掘り出す「興味EC(インタレストコマース)」でさらに売上を拡大
「興味EC(インタレストコマース)」とは抖音(Douyin)の運営会社、ByteDance(バイトダンス)社が掲げる新たな概念です。
従来のECというのは
〇〇が欲しい
↓
インターネット検索
↓
商品購入
というような流れで
「既に欲しいものが決まっているユーザーに対して最適な商品を提案する」
というのが一般的でした。
しかし、顕在化しているユーザーの需要に対してのマーケティングは既に競争が熾烈になっている現状があります。
そこで抖音(Douyin)は
まだユーザー自身が知覚していない購買欲求(興味)を掘り出し、ニーズを満たすという「興味EC」を提唱、実行したのです。
抖音(Douyin)を利用することで、この「興味EC」の恩恵にあずかることができるというわけです。
抖音(Douyin)独自のEC「抖音小店」
抖音(Douyin)には独自のECプラットフォーム「抖音小店」があります。
私たちに馴染みのある例えをすると、…楽天市場というECプラットフォーム上にたくさんのお店があるような、そんなイメージです。
この抖音小店では商品の購入、出品だけではなく、配送、決済までも抖音(Douyin)が担っています。
商品が出品されてから手元に届くまでの経路を抖音(Douyin)が担っているので
購入者も、出品者も、抖音(Douyin)としても、あらゆる面でコストや手間の削減が見込めるというわけです。
ライブコマース機能
ライブコマースとはライブ配信を通じて、ユーザーとコミュニケーションをとりながら商品を販売するという方法なのですが、このライブコマース市場は現在進行形で爆発的に拡大しています。
2017年時点で0.6兆円だった中国のライブコマース市場は
2021年には31.5兆円まで伸びました。
その31.5兆円のうち、なんと18兆円は抖音(Douyin)によるものです。
ユーザー数の圧倒的な規模
ではこの抖音(Douyin)。中国でどのくらい受け入れられているかというと…
月間アクティブユーザー6億人以上
さらに、一日の平均使用時間102分
です。天文学的数字です。
14億人の中国国民のうち6億人以上が利用していて
しかも毎日102分も利用しているのです。
「サービスや商品が6億人のうち0.1%にでも刺されば、60万人の注文が生まれる」
そう考えると、恐ろしさすらありますね。
さらに、このユーザー数は今後も増え続ける見込みです。
ポイント:おすすめは抖音(Douyin)
中国本土へSNS広報をするなら、抖音(Douyin)が第一候補。
抖音(Douyin)の持つ多くの機能と高い技術力を利用しましょう。
実店舗販売、ECサイトへ直接出品よりもSNSを利用すべき理由
でも…
良い製品であればSNSを使わずとも、中国の実店舗やECサイトに並べておけば売れていくのでは?
そのような考えの方もいらっしゃると思います…
しかし、中国と日本では、モノを買うまでの動線に大きな違いがあります。
実店舗で購入する人がそもそも少ない
実はwechat、alipayなど、電子決済が浸透している中国では、インターネット上で買い物をする人の割合が圧倒的に多くなっているのです。
その割合は驚きの63.9%!
何と商品購入の6割以上がインターネット上なのです。
ちなみに日本は今も実店舗で商品を購入する人の割合が多く、ECサイト上での商品購入割合は8%となっています。
ブランディングが難しい
もしあなたがECサイト上で商品を売る場合には、差別化やブランディングを強く意識する必要があります。
ECサイト淘宝(Taobao)では粗悪品などが多いことから、認知されていないサービスや商品では警戒心を持たれてしまうのです。
「日本製、安心、安全」といった文句で淘宝(Taobao)に出品しようとしても…
同じく「日本製、安心、安全」を掲げた粗悪品や偽物が隣にあった場合にユーザーはそれを判別することができません。
そのためSNSなどでインフルエンサーによるマーケティングを行い、差別化、ブランドを確立していくことが重要になるのです。
UGC(User Generated Contents)を効率的に増やすため
さらにSNSを利用するメリットを上げるとすれば、SNSでは効率的にUGCを増やせる、という事です。
UGCとは企業が作った広告ではなく、ユーザーや利用者が生む口コミやレビュー等のコンテンツのことを指します。(〇〇を買ってみたという動画や、ブログ等も含みます。)
このUGCはユーザーがモノを購入する時の大きな判断材料になっているのですが
拡散力の大きいSNSを利用することでこのUGCもあわせて爆発的に増やすことができるのです。
…現代においてはSNSを利用したマーケティングは効率的であり、ユーザーに粗悪品や類似品と明確に区別してもらうためには必須ともいえるかもしれません。
ポイント:中国と日本の購買経路は違う
中国と日本では商品購入の場所や流れが違います。
SNSからマーケティングを始めることで、自社製品、サービスのブランディングを効率的に行えます。
まとめ
ということで、TikTokと中国版TikTok抖音(Douyin)の違いや、中国市場へSNSマーケティングを行う際の基礎知識につきまして、まとめさせていただきました。
インターネット上の取引と一言にいっても、日本と中国では大きな差があることがおわかりいただけたかと思います。
漫画やアニメ、食や工業製品、そして観光を通じての実体験。
中国の方々が日本の製品やサービスに対して持つ、「やってみたい」「知りたい」「食べてみたい」「見てみたい」。
そのニーズは多種多様で、また巨大。
しかしながら、それらの需要はまだまだ満たされていないという現実があります。
中国人の方の中にある本当の需要を満たすためには、最新のテクノロジーを理解したうえでうまく利用してマーケティングする必要があるのです。
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