中国人向けに商品を販売したい場合、中国版TikTok抖音(Douyin)と小紅書(RED)を使ってマーケティングすることは、既に当たり前の時代になりました。
現在では、商品だけでなく、サービス業でも中国版TikTok抖音(Douyin)などを活用し、成功している事例が多く出ています。
例えば、医療業界において、中国SNSを使った顧客の呼び込みは、とても活発に行われています。
この記事では、医療業界における中国版TikTok抖音(Douyin)と小紅書(RED)活用術、そしてクリニック事例で見る成功のポイントについて、紹介していきます。
中国医療業界における中国SNSの活用状況
中国版TikTok抖音(Douyin)と小紅書(RED)を活用したマーケティングが活発に
中国医療業界において、中国SNSを活用したマーケティングが活発になっています。
多くの医療機関や医師が、中国版TikTok抖音(Douyin)と小紅書(RED)を活用した集客を行っており、参考になるクリニック事例も出てきています。
今や中国SNS上では、有名医師が写真や動画を投稿し、インフルエンサーとしてさらなる人気を集め、医療業界を盛り上げている状況なのです。
例えば、三级甲（中国では最高級の病院ランクを指す）の中国国立病院に勤める刘利芬は、小紅書(RED)で100万人以上のフォロワーがいます。
【小紅書(RED)で100万人以上のフォロワーを持つ医師インフルエンサー】
小紅書(RED)では、フォロワー50万人以上でトップインフルエンサーとして扱われますから、フォロワー数からいっても、医師がトップインフルエンサーとして活躍している状況になっていると言えるでしょう。
ちなみに、もともとインフルエンサーとは、医療業界における影響の力のある医師を指していました。
そのような意味では、医療業界におけるインフルエンサーは、本来の意味から言っても正真正銘のインフルエンサーと言えます。
特に、美容整形医療サービスの分野では、中国SNSを使ったマーケティングが、非常に流行っています。
中国人気SNSのユーザーと美容整形医療サービスを受けるユーザー層は似通っている
中国SNSにおいて、美容整形医療サービスが大きな盛り上がりを見せている大きな理由は、中国SNSのユーザーと美容整形医療サービスを受けるユーザーの親和性の高さです。
例えば、小紅書(RED)のユーザー層は、約80％が女性であり、年齢層でいうと18-34歳のユーザーが80%以上を占めます。
一方、美容整形医療サービスを受けるユーザー層も、20～35歳の中国人で80％以上を占めます。
【美容整形医療サービス利用者の年齢分布図、新氧データという中国ローカル調査会社のレポートから抜粋】
このように、中国SNSと美容整形医療サービス利用のユーザーが似通っているために、中国SNSを活用したマーケティングが活発になっているのです。
中国版TikTok抖音(Douyin)では、小紅書(RED)ほどの親和性はないものの、「アンチエイジング」などの文字検索数が、前年比で100％以上伸びるなど、美容整形医療サービスに興味のあるユーザーが増え続けています。
年々大きくなる中国美容整形医療の市場
中国SNSにおける美容整形医療の盛り上がりは、美容整形医療サービス市場規模自体が、年々大きくなっていることも背景としてあります。
艾媒コンサルティングの市場調査レポートによれば、直近では前年比10-20%で市場規模が大きくなっています。
美容整形医療サービス市場規模は、2022年では約2500億元（約5兆円）、2025年には4100億元（約8兆円）に達する見込みです。
【艾媒コンサルティングの市場調査レポートより、緑の棒グラフが市場規模（億元）、青いラインが成長率を示している】
世界の美容医療市場の成長率は5％前後ですから、10-20％という成長率は驚異的です。
実際、中国現地で若い女性同士が話している話題を聞いてみると、コスメや整形に関することが多いです。
未だ整形をしていなくても、興味を持っている若い中国人女性は非常に多く、今後の市場の大きさの伸び率は一概に大げさとも言えないでしょう。
中国医療業界への規制強化
2021年から美容整形医療サービスに関する問題が起き始める
中国SNSにおいて、盛り上がりを見せていた中国医療業界でしたが、直近では暗いニュースも多いです。
その大きな理由は、2021年ごろから起き始めた、中国美容整形医療業界に関する信用問題です。
具体的には、中国現地で美容整形失敗の事例が、頻繁に発生するようになりました。
美容整形失敗そのものだけではなく、美容整形を行った医療機関への不信感も募っています。
例えば、美容整形後に顔に大きな炎症が起きてしまった中国人女性が、その担当医に相談したところ、「無料で治療するが、その条件はSNSなどに絶対に投稿しないこと、もし投稿したら治療費を請求する」と言われ、誓約書まで書かされたというクリニック事例がありました。
このような類似事例が増え、実際、2021年の中国美容整形に関する訴訟件数は前年比で2倍以上になっていました。
結果として、現在、中国美容整形業界自体の信用力が一時的に非常に落ちているのです。
実際に、2021年の医療関連で検索される文字ランキングでは、「整形失敗」、「医療訴訟」などのマイナスな言葉が上位でした。
2022年から中国医療サービスへの規制強化が始まる
中国政府は、中国美容整形業界の混乱は深刻であるととらえて、2022年頃から中国医療サービスへの規制強化を始めます。
具体的には、医療サービスライセンス取得手続の厳格化、医療サービスを提供する医療機関への監視強化、正式な手続きを得ずに医療サービスを提供する者への取り締まり強化を行いました。
中国では、医療サービスを行う前にライセンス取得手続を行う必要がありますが、その申請手続の必要書類や条件などがより厳格化されました。
これまで求められていなかった申請書類などの増加や、ライセンス取得のための条件が厳しくなりました。
医療サービスを提供する医療機関への監視も強化され、中国政府部門からの立ち入り調査などが頻繁に行われるようになりました。
立ち入り調査にて、医療組織の内部組織管理が未熟であると判断された場合には、社内制度の再構築や人員の再教育などが求められるなど、厳しい対応が実施されています。
また、中国では、正式なライセンスを得ずに医療サービスを提供する組織や個人が少なからずおり、その取り締まり強化が行われるようになりました。
ライセンスを取得している医療機関であっても、実態とかけ離れた広告や、明らかに大げさと感じられる病院や医療サービス紹介案内もチェックされ、虚偽記載として罰せられるケースも増えるようになりました。
中国版TikTok抖音(Douyin)と小紅書(RED)でも運用強化
中国政府部門による中国医療サービスへの規制強化が始まると、すぐに中国版TikTok抖音(Douyin)や小紅書(RED)でも運用強化が始まります。
具体的には、下記に該当するアカウントに対して、運用強化が行われました。
- 医師免許や医療機関ライセンスを取得していないにも関わらず、医療系の動画や画像を投稿している（より具体的には、NGワードや敏感文字を使ったなど）
- 医師や所属している医療機関の身分を利用し、SNSで物販などの商売を行っている（2022年6月から禁止）。
- 視聴者から訴えられたなど（事実と異なる内容を投稿しているなど）
上記に該当すると判断されたアカウントに対しては、アカウントの一時停止や、違反内容が深刻と判断された場合にはアカウント削除まで行われました。
当時、これまで人気のあったアカウントが突然視聴できなくなるなども起きており、医療業界にとって非常にショッキングな事件でした。
クリニック事例で見る成功のポイントと中国版TikTok抖音(Douyin)/小紅書(RED)の活用術
クリニック事例で見る成功のポイント
直近の中国SNSにおける中国医療業界は、規制が強化され大きな影響があったことは確かですが、その中でも継続してマーケティングに成功しているアカウントは存在します。
例えば、美容整形医療サービス分野で成功しているアカウントの特徴を分析していくと、下記のような特徴があります。
- 一見しただけでは美容整形のアカウントかはわからないが、中国の特定年齢層で人気のある有名人の顔の分析など、美容整形をしようとしているユーザーが興味を持っている分野に特化しており、コンテンツ自体が個性的で面白い【アカウント名：姨本整经、卢克菲斯、院长刀刀など】。
- 医者や先生、医院長など堅いユーザー名を使っていない【アカウント名：姨本整经、卢克菲斯など】。
- すべて正直に語っている（風に見える）【アカウント名：姨本整经、卢克菲斯など】。
姨本整经
まず、1つ目のクリニック事例として、成功しているアカウントは、姨本整经です。
【姨本整经の小紅書(RED)アカウント】
姨本整经のアカウントを見てみると、有名人の顔の分析を行っているコンテンツで統一されています。
中国の若い女性に人気な赵丽颖やAngelababyなどのスターの顔を分析し、顔のラインや左右対称性などの視点から、なぜ美しく見えるのかを論理的にわかりやすく解説しています。
一方で、美容や医療整形などには一切触れていません。
姨本整经というアカウント名を見ただけでは、医療業界に属しているかどうかも不明です。
実際の動画を見ても、顔の分析結果を淡々と語っているのみで、ただの面白いコンテンツを提供するアカウントだけのように見えます。
ところが、姨本整经の身元を調査してみると、医療に関連する組織に属していることがわかります。
また、姨本整经はWechat(微信、中国版LINEとも呼ばれるSNS)の公式アカウントがあり、そこから姨本整经に直接問い合わせをすることができます。
さらに、Wechat公式アカウントからは、タオバオ（中国最大のECプラットフォーム）へのリンクがあり、タオバオでも顔分析レポートを購入することができます。
【左が姨本整经のタオバオのサイト、右がwechatの公式アカウント】
その価格は、19.9元（約400円）で、中国人にとっても、気軽に購入できる価格設定になっています。
Wechatなどで直接連絡をくれたユーザーや、タオバオにて顔分析レポートを購入したユーザーは、最終的に自分の顔をどのようにすれば、今よりも美しくなることができるのかを問い合わせます。
つまり、姨本整经は、中国版TikTok抖音(Douyin)と小紅書(RED)では、医療サービスとは全く関係ないように見えて、最終的には、医療サービスの提供へとつなげているのです。
ここで肝心なことは、姨本整经が扱っているテーマです。
美容整形に興味を持っている人は、どのようにすれば自分がより美しくなるかについて、大変興味を持っています。
顧客層に人気なスターの顔を例に挙げて、なぜ美しく見えるのかのロジックを教えてあげれば、その顧客は「それでは自分もそのロジックに従い、美しくなりたい」と思うのは自然な流れなのです。
顧客層が興味を持っていることをピンポイントでコンテンツし、さらに中国SNSでかなり敏感になっている「医療」という言葉を使わず、うまくマーケティングできた面白いクリニック事例です。
卢克菲斯
2つ目の成功しているクリニック事例は、卢克菲斯です。
卢克菲斯も、基本的な特徴は、姨本整经と酷似しています。
扱っているテーマは、中国若者に人気なTFBOYSや杨洋などのスターの顔を分析し、なぜかっこよく見えるのかを論理的に解説しています。
姨本整经と異なる点は、卢克菲斯自身が中国男性の医者ということもあり、男性スターの顔の分析が多いこと、語り口がお医者さん独特の説得力と安心感があります。
美容や医療整形に一切触れていないかというとそうではありません。
ただし、医療サービスの提供を直接表現するものではなく、医療に関するイベントに参加した様子などを投稿しているものに限定されています。
【卢克菲斯の中国版TikTok抖音(Douyin)アカウント】
卢克菲斯にはWechatアカウントがあり、顧客との直接対話できるような導線もしっかりと引かれています。
中国版TikTok抖音(Douyin)のライブ機能も積極的に活用しており、毎週土曜日の夜6時から顔分析に関するライブを配信しています。
院长刀刀
3つ目の成功しているクリニック事例は、院长刀刀です。
【院长刀刀の中国版TikTok抖音(Douyin)アカウント】
院长刀刀では、中国医療機関に属する医者が、自分自身の顔をテーマとするコンテンツの投稿が多いです。
40歳以上の女性の医者ですが、芸能人を上回るほどの美しさがあり、淡々と知的に語る雰囲気はとても独特です。
実際、コンテンツを見てみると、単に美しさを解説する動画ではなく、人生をより充実したものにするにはどうするかなど、40代の女性が興味を持っているテーマを中心に、最終的に女性は美しくあるべきという気にさせてくれます。
中国医療業界に対する不信感が高まっている状況で、医者自身が自分自身の顔や経験を通して、人生や美しさを語る様子からは、自然と不信感が取り払われていくのを感じます。
むしろ、院长刀刀への信頼感が芽生えてくるのを感じてしまうほどです。
また、実際動画見ていると、医療サービスのことはほとんど語られることはなく、「美しさの秘密を知りたければ、コメントに書くか直接連絡してね」など、個別に対応していることが読み取れます。
以上、3つの成功しているクリニック事例をご紹介しました。
紹介した事例はほんの一部であり、成功している要因も多種多様です。
SNSを活用しながら、中国マーケティングをご検討の方は、ぜひお声がけください。
最後に
以上、医療業界における中国版TikTok抖音(Douyin)と小紅書(RED)活用術、そしてクリニック事例で見る成功のポイントについて、解説しました。
弊社は現在、中国版TikTok抖音(Douyin)・小紅書(RED)を活用した中国SNSの運用代行や、中国への越境ECの支援などのサービスを展開しております。
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