中国ではオンライン大国と言われるほど、オンラインで買い物することが一般化しています。
そんなオンラインビジネスを下支えしているのが、KOLなのです。
この記事では、KOLマーケティングとは何なのか、KOLマーケティングのブランド戦略上の重要性や成功事例などについて、紹介していきます。
KOLマーケティング
KOLマーケティングとは
KOLマーケティングとは、KOLを活用したマーケティングを指します。
KOLとは「Key Opinion Leader」の略で、中国SNS上で、強い影響力を持っている人のことを言います。
医療業界で影響力のある医師を指すのがもともとの意味でしたが、今日では中国ソーシャルメディア業界で使われるようになりました。
日本や欧米では、似たような意味の言葉として、インフルエンサー(Influencer)があります。
複数の解釈がありますが、一般的には、インフルエンサーは、影響力を持っている人すべてを指し、芸能人~KOLなどすべてを含むと言われています。
日本や欧米ではインフルエンサー、中国圏では芸能人~KOLなどに細かく分類されている、と理解するとわかりやすいと思います。
さらに、KOLは、影響力の大きい順位に、トップKOL、ミドルKOL、マイクロKOLという、3種類にランク付けされています。
統一化された分類の仕方はありませんが、フォロワー数によってランク付けする場合は、下記のように分類されます。
- トップKOL:フォロワー数100万以上
- ミドルKOL:フォロワー数10-100万未満
- マイクロKOL:10万未満
また、KOLには、それぞれ得意分野やジャンルなどが大きく異なり、個性豊かです。
そのため、KOLによって、影響を与えることができる層や範囲も全く異なります。
このようなことから、KOLを活用したマーケティングでは、KOLの選定が最も大事だと言われています。
KOLの選定のポイント
KOL選定のポイントは、自社ブランド・商品とKOLの相性を見極めることです。
また、トップKOLを使うのが必ずしもベストというわけではなく、ブランド戦略や成長戦略、予算などに合わせて、使い分けすることが大切です。
トップKOLや実績のあるKOLであっても、すべての商品をうまくPRできるわけではないからです。
実際、KOLによって専門性やフォロワー、影響を与えることができる層が全く異なります。
例えば、コスメ系を得意とするKOLであっても、フォロワー数や実績だけではなく、フォロワーの年齢層・所得層も異なります。
自社或いは商品のブランドの色に合ったKOL選定が必要ですし、商品認知度向上やブランドイメージを変えたいなどのブランド戦略に合わせた使い分けが大事です。
最近の中国では、認知度を上げるために、最初にトップKOLやミドルKOLを使うことが多いです。
認知度を上げた後は、中国消費者により近い存在であるマイクロKOLやKOCを使いながら、中国市場を攻めていく、という戦略が多くのブランドで採用されています。
ここで、KOCとは「Key Opinion Consumer」の略で、一般消費者に非常に近い存在として、フォロワーに対して影響力が強い人を指します。
知名度やフォロワー数、専門性などではKOLに劣るものの、フォロワーとの関係が綿密という特徴があります。
KOCは、中国KOLマーケティングを支える大事な役割を担っています。
KOLマーケティングの具体的内容
KOLマーケティングを行う場合、実際にKOLは何をしてくれるのか、費用感、リクエストへの対応について、紹介したいと思います。
まず、KOLに依頼できる内容としては、各SNSに商品やサービスのレビューなどを投稿、ライブでの商品紹介や代理販売、イベント参加、商品共同制作、ブランドのアンバサダーなどがあります。
次に、費用感については、KOLや依頼する内容、どのSNSを使うか、報酬形態などによって、大きく変わります。
目安をお伝えすると、中国版TikTok抖音(Douyin)で1動画投稿を依頼する場合は、2.5〜10銭/フォロワー です。
1銭は0.01元で、1元を20円で換算すると、約0.5円~/フォロワーと計算できます。
例えば、中国版TikTok抖音(Douyin)で200万人のフォロワーがいる人が、企業案件を1件受注した場合、その報酬額は、約100万円(=200万人フォロワー×約0.5円/フォロワー)~です。
ただし、あくまで目安であり、100万人のフォロワーを持つKOLでも、そのフォロワーの購買能力が高い場合は、200万円の依頼が来ることもあります。
小紅書(RED)の場合は、比較的高く、約2円~/フォロワー です。
例えば、小紅書(RED)で100万人のフォロワーがいる人が、企業案件を1件受注した場合、その報酬額は、約200万円(=100万人フォロワー×約2円/フォロワー)~です。
フォロワーが多くないマイクロKOLやKOCでしたら、謝礼1万円以内で済むケースもあります。
一方で、KOLの選定・手配やマーケティングサポートまで行うMCN(マルチチャンネルネットワーク)会社に委託する場合は、数百万円~することがあります。
最後に、広告主からの各種リクエストへの対応については、KOLによって異なります。
KOL側からすると、フォロワーを大事にしたい気持ちやキャラクターイメージなどがあるため、すべてを受け入れるとは限りませんが、基本的には、広告主の要望に応えてくれます。
また、フォロワーからの反応などの情報共有や、改善提案などをしてくれるKOLもいますが、それらをまとめたレポート提出まで行ってくれるKOLは少数です。
KOLマーケティングサポートが希望であれば、弊社のような中国SNS運用代行会社やMCN(マルチチャンネルネットワーク)会社に委託するのがよいでしょう。
KOLマーケティングのメリットとデメリット
KOLマーケティングのメリット
KOLマーケティングのメリットとデメリットを整理したいと思います。
まず、メリットは、下記が挙げられます。
- プロモーションが多彩になる
- 情報拡散力
- 広告感を抑えることができる
まず、KOLマーケティングを行うと、多彩なプロモーションができるようになります。
プロモーションを行う場合、ブランドの認知度や時流などに合わせた施策が大事です。
KOLマーケティングでは、時と場合に応じて、KOLの人数・ジャンル・依頼内容などを柔軟に変えることができます。
特に中国の場合は、SNSによるプロモーションが非常に効果的なことがわかっていますから、KOLマーケティング活用によるプロモーションの選択肢を増やすことは、大きなメリットと言えます。
次に、情報拡散力について、自社でのプロモーションに比べて、圧倒的な拡散力があります。
KOLには、各SNS上でフォロワーがいるため、投稿に対してのフォロワーのコメントやシェアなどにより、拡散範囲がより広くなっていきます。
KOL選びがうまくいった場合は、ピンポイントで潜在顧客へアプローチできるため、一時的な話題性が濃い拡散ではなく、購買につながる質のいい拡散も期待できます。
最後に、広告感を抑えることができることについて、KOLが中国消費者の目線でレビューしてくれますので、広告感を非常に抑えることができます。
中国の場合、企業による芸能人を活用した従来型の広告は、受け入れられていません。
過去、中国企業による食品品質問題や虚偽記載などが大きく扱われた背景もあり、企業主導のPRの信用力は低く、口コミや自分が信頼するKOLやKOCの発信内容を重視する傾向があるのです。
KOLマーケティングのデメリット
次に、メリットは、下記が挙げられます。
- 炎上のリスク
- KOL選びは難しい
- 費用対効果のコントロールが難しい
1つ目の炎上のリスクについて、KOLの影響力は大きいため、中国消費者の反感を買ってしまった場合は、そのKOLを採用した企業へも悪影響が及ぶことがあります。
例えば、中国では、キャンペーン期間の関係で、トップKOLが実施したライブコマースでの商品価格が最安値ではなくなってしまい、それが中国国内のニュースで炎上したことがありました。
なぜなら、中国のブランド店は、トップKOLに商品PRをしてもらう際、基本的に最安値での商品販売するのが通例であり、トップKOLもそれを売りにしているところがあるためです。
そのKOLは、「自腹でも購入者へ最安値になるよう手配する!」と明言し、当時中国では大きな話題になりました。
この事例では、企業の評判はそれほど下がることはなく、KOLの更なる人気につながる結果となりますが、対応の間違いによっては、企業の評判が下がるリスクがありますので、注意が必要です。
2つ目のKOL選びについて、一般の会社が行う場合は、難易度が高いです。
中国のKOLは、日本のインフルエンサーと同様、得意分野や実績、報酬なども全く異なります。
さらに、基本的に中国語でのデータ分析や交渉が必要です。
ノウハウや経験がない場合は、中国SNS運用代行会社やコンサルティング会社などを活用するのがいいでしょう。
3つ目の費用対効果のコントロールについて、通常のWeb広告と比べるとコントロールが難しいです。
通常のWeb広告であれば、クリック数などに応じて、広告費用額が決まるため、非常にコントロールしやすいです。
一方、KOLマーケティングの場合は、フォロワー数や過去の実績などで報酬が決まることが多いですが、投稿するコンテンツ内容や親和性、タイミング等によって広告効果は大きく変わります。
SNSにおいては、動画再生回数やエンゲージメント率などの指標も使えるようになるため、報酬金額や再依頼の検討材料にする方法もありますが、一定の難易度の伴う作業です。
KOLマーケティング成功事例
ANESSA
KOLマーケティングの概要がわかったところで、具体的な成功事例を紹介したいと思います。
各SNSでのKOL&KOCマーケティングの違いや、どのような時に活用するのが有効なのかについて、事例を通して、解説していきます。
まず、1つ目は、ANESSAです。
ANESSAは、資生堂が展開している日焼け止めクリームのブランドであり、中国でも大変人気があります。
ANESSAは、1992年に中国販売を開始していましたが、中国版TikTok抖音(Douyin)のアカウントができたのは2021年3月からでした。
まず、ANESSAは、中国版TikTok抖音(Douyin)におけるブランディングの期間を、初期、中期、爆発期と分けます。
そして、それぞれの期間で、適切な施策を行いました。
具体的には、初期(2021年4-8月)は、中国版TikTok抖音(Douyin)内での認知拡大が先決ととらえ、トップKOLに、動画投稿などを依頼します。
中期(2021年9-12)は、業界全体として、日焼け止めクリームのニーズが小さくなり、閑散期になるため、ミドル級以下のKOLを中心に動画投稿を依頼しました。
また、ライブコマースを行うことで、潜在顧客とのコミュニケーションも絶えず行います。
爆発期(2022年1月~現在)には、日焼け止めクリームのニーズが徐々に高まることも見据えて、再びトップKOLに動画投稿依頼、ライブコマースも合わせて積極的に行いました。
結果として、前月比で売上増加幅が500%を超える結果を生み出すほど、中国で人気の商品になりました。
2021年3月と2022年3月で比較した場合では、売上が630%増加しています。
また、中国版TikTok抖音(Douyin)では、低価格販売が課題として挙げられますが、ANESSAの場合は、248元(5,000円相当)という高価格帯を維持しての販売というところもポイントです。
ANESSAの成功の秘訣は、ブランディングの過程に合わせて、KOLの選定を適時適切に行ったことです。
- ブランディング初期(2021年4-8月):トップKOLに動画投稿協力依頼
- ブランディング中期(2021年9-12):自社によるライブコマースを中心に実施
- 爆発期(2022年1月~現在):ミドル~トップKOLにライブコマース実施協力依頼
中国語で少しわかりにくいと思いますが、売上推移(上のグラフ)と売上チャネルパーセンテージ(下のグラフ)の関係性を、時系列に記録した図を紹介します。
【蝉妈妈レポートより】
※売上推移の日本語訳(上のグラフ)
- 棒グラフ:売上額
- 折れ線:前月比増加%
※売上チャネルパーセンテージの日本語訳(下のグラフ)
- 紫:ライブコマース
- うす水色:マイクロKOL
- 水色:ミドルKOL
- 青:トップKOL
また、ANESSAは小紅書(RED)でのマーケティングも上手でした。
小紅書(RED)では、主として、フォロワーが1万人以下のKOCに動画の投稿依頼などを行っていました。
小紅書(RED)では、コミュニティ形成や口コミサイトとして人気なプラットフォームのため、フォロワーに近い存在であるKOLの方が、効果的にマーケティングができるのです。
Jean d’Estrées Paris
2社目は、Jean d’Estrées Paris(中国語:让缇丝)という、フランスのスキンケアブランドです。
日本ではあまり聞かないブランドですが、欧米や中国では人気のあるブランドです。
Jean d’Estrées Parisは、KOLの活用とECライブにより、2022年5月の1ヶ月だけで、月間EC売上額を5倍以上にすることに成功しています。
成功の要因は、自社の顧客層を分析し、戦略的にKOL選定を行ったことです。
Jean d’Estrées Parisの顧客層は、上海市に住むセレブ層が大半である、ということがわかっていました。
顧客層に偏りがある場合、その顧客層が好むKOLを選び、適切にブランディングをした上で、セールを行うと、高い確率で売り上げが大幅に上昇します。
実際、Jean d’Estrées Parisは、「4火姐姐」や「曾虹畅」などの中国上海セレブ層に人気がありかつ高いロイヤリティを持たせることができるKOLを選びました。
そして、ライブにて格安セールを行うことで大きく売上を伸ばすことができたのです。
植村秀(shuuemura)
植村秀(shuuemura)は、日本の美容業界で有名ですが、中国でも人気があります。
植村秀(shuuemura)は、中国の幅広い消費者層に動画を見てもらうことを目的として、フォロワー層が全く異なる8人のKOLの採用を行います。
どんなフォロワーがついているのかの分析の他、実績なども合わせて細かい分析を行いました。
結果としては、非常に広い中国の消費者層へのアプローチができ、1週間で動画が830万回再生され、認知度が大幅に上昇しました。
FANCL
FANCLは、健康食品をはじめとしたサプリメントなどを開発販売している、日本企業を代表するブランドですが、中国でも非常に人気です。
FANCLは、2022年10月の中国の建国記念日である国慶節期間中に、話題の挑戦試合「FANCL长假活粒打卡(日本語訳:FANCL長期休暇活力キャンペーン)」というハッシュタグキャンペーンを実施しました。
ハッシュタグキャンペーンとは、企業が特定のハッシュタグをつくり、ユーザーに共感と参加を促し、拡散を目的としたプロモーションです。
FANCLが行ったハッシュタグキャンペーンは、指定されたシールを持って、撮影を行い中国版TikTok抖音(Douyin)で動画投稿をするというシンプルルールで、優勝者には賞金を与えるというキャンペーンでした。
ハッシュタグキャンペーンでは、わずか4日で2 万人超のユーザーが参加し、関連動画の再生数は8419 万を超えるほどの話題になりました。
特に、ハッシュタグキャンペーンで合わせて行ったライブコマースでは、押しの商品である「20-60代女性栄養パック」の売上額50万元を超え、ヒット商品となるとともに、FANCL全体の売上にも大きく貢献しました。
FANCLの成功の秘訣は、多くのユーザーを巻き込んだハッシュタグキャンペーンができたことです。
実は、FANCLは、多くのユーザーが参加しやすいように、96%のKOLをミドル級以下にしました。
仮にトップKOLを採用すると、知名度があり影響力は大きいですが、ユーザーにとっては敷居が若干高くなり、キャンペーンの参加も少し抵抗が生まれます。
一方、トップKOLほど影響力はないが、ユーザーに近いと言われているミドル級以下のKOLであれば、敷居は低くなり、キャンペーンへの参加もしやすくなります。
FANCLは、キャンペーン参加者への精神的配慮をしながら、KOL選びをしたのです。
KOLマーケティング:ブランド戦略成功の秘訣のまとめ
複数の成功事例をご紹介しましたが、どの事例も、KOLマーケティングをうまく行い、中国で成功しています。
ブランド戦略成功の秘訣は、KOLマーケティングを上手に実施することだと言っても過言ではないでしょう。
また、KOLマーケティングでは、KOL選びが最も大事です。
しかしながら、中国でKOL選びを行うには、日本と中国の違いを理解することや中国語での情報分析などが必要なため、難易度は高めです。
自社で対応が難しいという場合は、中国SNS運用代行会社やMCN(マルチチャンネルネットワーク)会社、コンサルティング会社へ相談するのがおすすめです。
最後に
以上、KOLマーケティングとは何なのか、KOLマーケティングのブランド戦略上の重要性や成功事例などについて、解説しました。
弊社は現在、中国版TikTok抖音(Douyin)・小紅書(RED)を活用した中国SNSの運用代行や、中国への越境ECの支援などのサービスを展開しております。
ぜひご気軽にご相談ください。
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