中国版TikTok抖音(Douyin)は、中国マーケティングにおける便利なツールではありますが、利用による危険性もあります。
ただし、注意すべきポイントを事前に知っておけば、それほど危険性のあるものではありません。
危険性の内容やリスク対応策を正しく理解し、適切に対応をすることが大切です。
この記事では、中国版TikTok抖音(Douyin)利用による危険性、注意すべきポイント、具体的なリスク対策について、紹介していきます。
中国版TikTok抖音(Douyin)利用による危険性
中国版TikTok抖音(Douyin)における身体・営業妨害の危険性
中国版TikTok抖音(Douyin)利用による危険性の中で、最もよく注意しなければいけないのは、身体の危険性や営業妨害のリスクです。
身体の危険性については、ストーカー被害や逆恨みで暴行にあう危険性が挙げられます。
実際、中国版TikTok抖音(Douyin)のインフルエンサーが、身体的被害にあっている事件は定期的に起きています。
最も衝撃的な事件は、2018年8月に中国浙江省宁波市内のモール内のゲームセンターで、ストーカー被害にあっていた中国人女性が、その男性に首を切られ死亡した事件です。
その中国人女性は、当時、中国版TikTok抖音(Douyin)で47万人のフォロワーがいるインフルエンサーであったこともあり、その事件をきっかけとして、中国ではストーカー被害や予防法などが大きく話題になりました。
営業妨害の危険性については、自社アカウントのコメント欄で荒らされることや、全く別の個人アカウントで誹謗中傷の動画を投稿されるケースがあります。
実際に、被害妄想気味の顧客などが、中国版TikTok抖音(Douyin)を使って、企業の評判を下げる行為は起きています。
しかしながら、その行為のほとんどが、企業イメージには大きな影響を与えておらず、あまり話題にもなっていません。
そのような行為をするユーザーは、大きく評判を下げるほどの影響力がないためでしょう。
ただし、影響が小さくても、誹謗中傷されて、注文が取り消しになることや、返品処理しなければいけない事態は、アカウントが人気になってくると発生しています。
中国版TikTok抖音(Douyin)利用おける法律・運用規範違反の危険性
中国版TikTok抖音(Douyin)利用おける危険性の中で、必ず気を付けなければならないのが、法律・運用規範違反のリスクです。
法律違反の種類は、国家レベル、企業レベル、個人レベルに分けることができます。
国家レベルの法律違反は、中国国家や政策、共産党などに関する発言をして、何らかの悪い影響があった場合は、中国版TikTok抖音(Douyin)規定だけでなく、中国国家規定違反として規制の対象になります。
また、中国独特のルールである、禁止用語を使った場合にも、国家レベルの法律違反に該当します。
中国では、広告活動の規範化及び消費者保護を目的として、商品広告に対し禁止用語が定められています。
違反した場合には、20万元~100万元(400~2,000万円相当)以下の罰金、営業停止等のリスクがあります【中华人民共和国广告法】。
例えば、国家機関代理、「国家級」「最高級」等のナンバーワン、恐怖等をイメージさせる用語などが使用禁止になっています。
企業レベルの法律違反は、代表的なものに、知的財産権の侵害や不当競争による侵害などが挙げられます。
知的財産権の侵害は、知的創造活動の成果物に対する権利の侵害を指します。
中国では日本と同様、権利を侵害した場合は、賠償金、違法所得の没収、罰金等が発生します。
罰金は、不法収入額の3倍以下、不法収入額が不明確の場合10万元(200万円)以下の罰金が科されます【中华人民共和国著作权法实施条例】。
法令の種類や保護対象等は日本とほぼ大差はありませんが、中国側では改正が比較的頻繁に行われているため、注意が必要です。
例えば、中国の著作権法は、2021年6月1日から改正法が施行されました【全国人民代表大会常务委员会关于修改《中华人民共和国著作权法》的决定】。
その中では、インターネット上における著作権保護の規定整備、著作権の保護対象の拡大(映像などのショート動画も含まれるようになる)、法定賠償上限額(500万元)の明確化等が大きなポイントとして改正が行われています。
不当競争による侵害は、商品模倣や虚偽広告宣伝などによる侵害を指します(中国不当競争防止法)。
商品コピーや過大な広告は、中国では伝統芸能のように見えますが、自社のアカウントが有名になり始めたタイミングから、不当競争による訴訟も受けやすくなります。
個人レベルの法律違反で、代表的なものは、肖像権の侵害があります。
肖像権は、自分個人の顔などを勝手に撮影・公開されない権利を指します。
最近では、中国版TikTok抖音(Douyin)抖音で投稿された動画により、肖像権の侵害として、中国で裁判判決された事例も出てきています。
個人アカウントで有名でなければ、特に、訴えられる危険性はほぼありません。
しかしながら、企業アカウントを開設した場合や有名になった場合は、きちんと対応してくれることを期待して、訴えてくる中国視聴者もいますので、注意が必要です。
最後に、中国版TikTok抖音(Douyin)の運用規範違反については、もともと運用規範が中国法律をベースに作られています。
中国関連法律を正しく理解すれば、大きな問題はありませんが、動画種類によっては、動画投稿者の専門資格が必要など、中国版TikTok抖音(Douyin)の独自のルールがありますので、別途注意する必要があります。
中国版TikTok抖音(Douyin)で権利侵害を受ける危険性
権利侵害を受ける危険性は、法律上認められている権利を不当に侵害されるリスクを指します。
前述した法律違反の裏返しですが、中国独自の注意が必要な危険性を挙げれば、商標権被害があります。
海外企業が中国ECプラットフォームなどで出品時に、商標権被害を受けるケースが後を絶ちません。
日本で商標権を登録していたとしても、国ごとで制度が異なるため、中国では別途、商標権を登録する必要があります。
ところが、中国には、有名ブランドなどの商標権を先んじて登録している悪徳な会社があります。
その会社は、有名ブランドが中国進出後に、有名ブランドを訴えて、賠償金やブランド使用料を請求してくるのです。
中国ECプラットフォームが間に入り、有名ブランドと悪徳会社の和解をサポートしてくれるケースがありますが、莫大な時間がかかります。
既に、自社の商標権が他人に登録されている状態でしたら、解決には非常に長い道のりになることを覚悟する必要があるでしょう。
中国版TikTok抖音(Douyin)利用における注意すべきポイント
関連規定や事例に関する正しい情報の入手
中国版TikTok抖音(Douyin)利用における注意すべき一番のポイントは、正しい情報を入手することです。
かなり難易度が高いですが、中国語がわかる方であれば、中国関連規定や中国版TikTok抖音(Douyin)運用規定、最新事例集の読み込みが、最も素早く、かつ正しく情報を入手することができます。
例えば、中国版TikTok抖音(Douyin)の運用関連ルールは、中国法律内容とほぼ同様ですが、医薬品に関する動画投稿者は、医療専門の許可証や免許が必要などの独自のルールもあります。
中国版TikTok抖音(Douyin)の運用関連ルール:抖音规则中心 (douyin.com)
社長や責任者が中国語の解読ができないという場合は、大事なポイントや概要だけでも、一度日本語へ翻訳してもらい、読んでみることをお勧めします。
最近では、日本語版中国規定や悪徳企業への対策などが、ネット公開されている場合もありますので、それらの文献を読んでみてもいいと思います。
JETRO中国における悪意の商標出願対策マニュアル:manual_202203.pdf (jetro.go.jp)
また、中国版TikTok抖音(Douyin)運用におけるリスク対策や事例についても、まだまだ情報量は少ないですが、日本語版で情報公開しているサイトも出てきていますので、それらの情報を率先して入手してみることも大事です。
中国版TikTok抖音(Douyin)内のシステムだけではなく、外部サイトのツールを使ったリスク対策事例もありますので、事例から学べることはかなり多いです。
中国版TikTok抖音(Douyin)の運用代行会社への委託
日本版のインターネットサイトで、中国のことを日本語で調べると、ネガティブな情報が異常に多く、正しい情報を入手するのは難しいです。
中国語が全く分からず、対応が不安という場合は、中国版TikTok抖音(Douyin)の運用代行会社へ委託してみるのもいいでしょう。
運用代行会社は、豊富な経験がありますし、中国法律問題については信頼できる中国弁護士パートナーなどと協力してサポートしている場合があります。
運用代行のサポートを受けていなくても、中国版TikTok抖音(Douyin)関連アドバイスとしてサポートしてくれるケースもありますので、一度相談してみることをお勧めします。
中国版TikTok抖音(Douyin)の運用代行会社の選び方については、下記の記事にて詳細を書いていますので、興味のある方はご覧ください。
【2023年最新】抖音(中国版TikTok)広告の運用代行おすすめ業者8選!依頼するメリットやデメリットも解説 | CRESON Media | 中国SNS動画・越境EC支援のクレソン
弁護士などの中国法律専門家とのネットワーク
中国版TikTok抖音(Douyin)運用やリスク管理は自社で対応するにしても、中国法務問題については外部の力を借りたいという場合は、あらかじめ、中国法律の専門家とのネットワークを構築しておくも良いでしょう。
問題が起きた際に、専門家を探しても遅くはないですが、問題が起きてからだと、冷静に対応することが難しい場合があります。
信頼のできる中国法律の専門家とネットワークを構築し、専門性などを見極めておくと、問題が起きた時に、比較的スムーズに対応できます。
中国版TikTok抖音(Douyin)利用におけるリスク対策
中国版TikTok抖音(Douyin)における身体・営業妨害のリスク対策
中国版TikTok抖音(Douyin)利用における注意点がわかったところで、ここからは、具体的なリスク対策について、紹介していきたいと思います。
まず、身体の危険性に対するリスク対策は、主に動画に出演する方の保護を第一に考える必要があります。
特に女性の場合は、男性ファンなどに襲われる可能性が比較的高いため、注意を要します。
具体的な対策としては、居場所が特定されないよう撮影場所や背景に気を遣う、名前を公開するときはニックネームを使う、不審者が現れそうな場合は出演者交代などが挙げられます。
営業妨害の危険性への対策は、日本の営業妨害に対する対応とほぼ同様です。
基本的には、相手方の特定から始まり、損害額の算定、証拠の収集、示談交渉という手順で対応していきます。
損害額の算定が難しいケースが多いですが、中国版TikTok抖音(Douyin)の受付センターへ相談すれば、中国版TikTok抖音(Douyin)がサポートしてくれることがあります。
実際に、2022年中国版TikTok抖音(Douyin)ガバナンス白書によれば、風紀違反として、アカウントの一時使用停止や閉鎖の措置を行ってくれたケースが多くあります。
悪質な営業妨害だと感じた場合は、大きな問題になる前に、早い段階で証拠を収集して、中国版TikTok抖音(Douyin)の受付センターへ連絡するのがよいでしょう。
中国版TikTok抖音(Douyin)利用おける法律違反リスク対策
法律違反の危険性への対策については、中国で権利保護されている内容の理解が、大切になります。
例えば、商標権についていえば、中国では日本と同様、権利保護対象ごとに、著作権法、特許法、商標法等が中国で定められています。
それらの規定の中では、コンテンツを作成する際は、自作と引用部分は明確に区分する必要があると定めています。
具体的には、以下の条件を満たす場合は、著作権者に許諾取得及び報酬支払をすることなく、著作物を利用することができます【中华人民共和国著作权法 第二十二条】。
- 作者氏名と作品名を明記
- 著作権者の権利を侵害しないこと
- 使用目的が下記のいずれかに合致していること
(一)個人学習、研究または鑑賞のために、他人が発表した内容を使用
(二)紹介、評論、説明等するために、他人が発表した内容を引用
(三)時事ニュースを報道するために、新聞、雑誌、ラジオ、テレビ番組または新聞・映画の中ですでに発表された内容を引用
(四)……(以下省略)
概ね日本の著作権法の対応と同様であり、最初は難しく見えても、一度理解すると、それほど警戒する必要がないことがわかると思います。
組織的な対応策としては、動画コンテンツ作成者と管理者層それぞれで、中国コンプライアンスチェックを行う方法があります。
実際、ある程度の専門知識が必要ですし、組織的にコンプライアンスチェックをしているのは、大企業や多くのフォロワーを抱えるアカウントがほとんどです。
しかしながら、自社の中国版TikTok抖音(Douyin)アカウントが有名になり、取引規模が大きくなれば、しっかりした対応が求められます。
また、中国独特のルールの禁止用語に対する対応策については、便利な機能がありますので、参考までに紹介したいと思います。
下記のURLに入り、広告で使う文字や、ショート動画アプリ内で話す原稿文字を入れ込むと、禁止用語などを教えてくれます。
- 广告禁用词查:http://www.jinyongci.com/
- 句易网:http://www.ju1.cn/
※句易网の画面、左側の赤枠に中国文章を入れると、右側の赤枠で、使用禁止文字や敏感文字(中国政府が要チェックしている文字)などをインラインで教えてくれます。
また、画像などもアップロード可能で、文字認識してくれます。
中国では、禁止用語などが頻繁に改正されるため、中国人や法律の専門家であっても、常に最新情報を把握するのは難しいです。
そのため、企業の広告担当などは、上記のサイトを使っているケースがあります。
ただし、中国政府が運用しているサイトではないため、常に最新状態になっているかどうかなどの信頼性については、使用者自身で判断する必要はあります。
さらに、いずれもWechat(微信)による認証必要で、「广告禁用词查」は使用料金が発生しますのでご注意ください。
中国版TikTok抖音(Douyin)で権利侵害を受ける危険性への対策
権利侵害を受ける危険性への対策について、商標権侵害という点から言えば、中国で早い段階で商標権の登記を済ませておくのがいいでしょう。
中国における商標権登記は、中国と取引がない日本企業でも可能です。
多くの場合、作業は約1年間、費用は数万円でできますので、中国ビジネスを本格的に行うと決めたら、早めに実行しておくのがおすすめです。
仮に悪徳会社に先んじて商標権登記されてしまった場合には、一度、中国版TikTok抖音(Douyin)センターへ問い合わせてみるとよいでしょう。
ただし、中国法律通りに対応すると、基本的に先願主義(先に出願した人のみが商標登録を受けられるというルール)が採用されていますので、解決は難しいのが実情です。
最後に
以上、中国版TikTok抖音(Douyin)利用による危険性、注意すべきポイント、具体的なリスク対策について、解説しました。
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