近年、コロナ禍における巣ごもり需要の後押しもあり、ライブコマースが急激に発展しました。
日本でも多くのインフルエンサーや企業がインスタライブやYoutubeライブなどのライブコマースを活用するようになってきています。
隣国中国では、各種ライブ配信サービスが乱立し、ライブコマースによる取引額は驚くほどの勢いでのびています。
本記事では、中国ライブコマースについて、2024年のトレンドと成功事例を紹介しながら、活用方法を紹介いたします。
世界から注目される中国のライブ配信サービス
ライブ配信とは?
ライブコマースを説明する前に、ライブ配信についての理解を深めましょう。
ライブ配信とは、リアルタイムに撮影した映像を視聴者に届けることを指し、近年ではスマホアプリからボタン一つで誰でも配信をすることができるようになり、急激に利用者が増加しています。
中国におけるライブ配信の種類
特殊なネット事情により、独自のSNSサービス等が発展している中国においても、ライブ配信サービスはこの数年で急速に成長し、様々な分野においてライブ配信が利用されています。
CNNIC(中国インターネット情報センター)のレポートによると、年々ライブ配信を見ているユーザーは増えて続けています。
2020年3月時点で約5.6億人がライブ配信を見ていましたが、2023年12月末では8.1億人にまで到達しています。
インターネットユーザー数の約75%がライブ配信を利用しています。
【ライブコマースの利用者は年々増え続けている、CNNIC(中国インターネット情報センター)より】
ライブコマース
ライブ配信を利用して商品を紹介し、ECサイトでの購入へ誘導します。
小紅書(RED)や中国版TikTok抖音(Douyin)などの既存SNSがECに参入したサービスと、ECサイトがライブコマースに進出したサービスがあります。
エンタメ
雑談を始め、ダンスやトークショーなどをライバーが披露するタイプの配信です。
ライブ配信者にとっては、投げ銭や視聴者からのプレゼントが主な収益源となります。
ゲーム・スポーツ
日本でもYoutubeなどにおけるゲーム解説・実況の動画やライブ配信アカウントは少なくありませんが、中国でもゲームやスポーツ競技に関するライブ配信で専用の配信プラットフォームが複数存在しています。
リクルート
意外な分野で結果を出しているのが、ライブ配信によるリクルートです。
リアルタイムで候補者の疑問に答えることができ、すぐに面接を行うことも可能なため、活用を始める企業が増えています。
この通り、幅広い分野でライブ配信が活用されていますが、この記事ではライブコマースに焦点を当てて紹介をしていきます。
中国でライブコマースが急成長した背景
iResearchの統計及び推測データによると、2016年にライブ配信機能をもつプラットフォームが登場し始めてから、2023年まででライブコマースの市場規模は4.9兆元規模に達しています。
今年2024年には5兆元超規模以上に成長するとされています。
インターネット及びSNSの高い浸透率
21世紀に突入して以降、中国ではインターネット利用率が急速に増えており、2024年6月時点でネットユーザーは11億人、インターネット普及率は78%に達しています。
ネットワークインフラやネット速度の整備も進んでおり、農村部からでも様々な情報に気軽にアクセスできる環境が整ってきています。
国土の広さ故にECサイトでの購入が主流
中国の国土は非常に広く、都市部でも農村部でも気軽に購入して家まで届けてくれるネットショッピングが主流となっています。
ネットショッピングを利用したユーザーの規模は年々増え続けており、実にネットユーザーの8割にも達します。
商品やブランドに対する信頼度の低さ
中国では偽物や劣悪品が出回ることが多く、消費者の商品やブランドに対する信頼度が圧倒的に低いです。
人気商品が出るとすぐにコピー商品が大量に出回ってしまい、ECサイトで調べると同じような商品がずらりと並びます。
こうした中から本物や品質の高いものを見つけ出すのには大変な労力を必要とするため、多くの消費者はネットの口コミやインフルエンサーや芸能人の勧めるものを参考にする傾向にあります。
MCNの登場
日本でもYoutuberのマネジメントを行うUUUMなどのMCN(マルチチャンネルネットワーク)が存在しますが、中国のMCNの数とサポート業務の幅広さは日本のMCNの比ではありません。
2023年には中国のMCN機構数は約3万に達しています。
MCNは新人KOLの育成やマネジメント、コンテンツ作成のサポート、IP商品の開発など幅広いビジネス展開をサポートし、ライブコマースのエコシステムにおいても重要な役割を担っています。
ライブコマースの特徴
双方向コミュニケーション
ライブコマースでは、視聴者はコメントを通して配信者とリアルタイムでコミュニケーションをすることが可能です。
使用方法や成分・材料等に対する疑問等をリアルタイムで配信者に質問し、疑問を完全に解消してから安心して購入できます。
写真やテキストより圧倒的な情報量をもつ動画による訴求
一般的なECサイトでは用意された写真の角度から平面的にしか商品を確認できません。
しかし、ライブコマースでは動画という写真やテキストの説明よりも圧倒的な情報量をもつ手段で訴求するため、消費者にとって説得力が圧倒的に高くなります。
更に、リアルタイムで視聴者からのリクエストに合わせて写真に写っていない箇所などまでうつすことが可能です。
短期間で爆発的な売上を上げるインフルエンサーたち
ライブコマースで欠かせないのがKOLと呼ばれるインフルエンサーの存在です。
自身のフォロワーやファンのため、KOLは丁寧に商品を分析し、実際に使用してから紹介を行います。
ブランドや商品に対する信用の低い中国のユーザーにとっては、信用するインフルエンサーや芸能人の勧める商品は一般的なECサイトの商品より安心して購入することができるのです。
一般的には分野ごとに人気のKOLが存在し、その商品分野においては強い信頼をもたれています。
例えば15分で15000本の口紅を売りさばき、口紅王子と名高い中国No.1のライバーであるAustin。
彼はかつて化粧品ブランドのビューティーアドバイザーであり、化粧品に対して専門的な知識と実際の使用シーンに対する理解力、そして高い説明能力を活かして活躍しています。
中国インフルエンサーについては、下記の記事でも紹介しておりますので、興味のある方はご覧ください。
KOLとは~中国ビジネス成功の秘策~ | CRESON Media | 中国SNS動画・越境EC支援のクレソン
中国ライブコマースのトレンドと成功事例
中国でライブコマースが流行っていると言っても、流行りに乗るだけでは成功できません。
トレンドと成功事例を分析し、自社ブランドの強みを活かして、はじめてうまくいきます。
ここでは、中国ライブコマースのトレンドと成功事例をご紹介します。
特定のユーザー層を狙ったライブコマース
今や「中国の14億人のマーケットを狙う」という、万人受けする商品やプロモーションは、成功する可能性は低くなっています。
中国は以前に比べて豊かになり、ニーズが細分化しているからです。
そのようなトレンドをうまく活用したライブコマースの成功事例が、2024年11月11日に行われた可妮周のライブコマースです。
【可妮周のカシミア販売のライブコマース、经济网より】
可妮周は、梨型のぽっちゃり体型で、2児の母親であることを武器に、自分と同じような体形でも、きれいに見えるカシミアの服をライブコマースで紹介しました。
結果として、1回のライブコマースだけで、100万着以上の販売を達成することができました。
ちなみに、可妮周の小紅書(RED)のフォロワーは、26万人でそれほど多くはありません。
【可妮周の小紅書(RED)アカウント】
それでも、ライブコマース時には、フォロワー数以上の販売実績を残すことができたのです。
以前は、ライブコマースを行えば、商品がよく売れた時代がありました。
ところが、現在、フォロワー数が可妮周より多い有名なインフルエンサーや有名ブランドでも、ライブコマースで全く商品が売れない事例が出てきています。
可妮周のこの成功事例は、インフルエンサーやブランドの知名度ではなく、明確なターゲティングを行ったライブコマースが重要であることを示しています。
専門性と共感力の高いインフルエンサーと協業
中国マーケティングにおいては、インフルエンサーの選択が非常に大切です。
インフルエンサーを採用する際、フォロワー数を重視するケースが後を絶ちませんが、現在フォロワー数は知名度や人気度を示す指標に過ぎません。
ライブコマースを活用したプロモーションを考えた際、専門性と共感力の高いインフルエンサーを採用する重要性が高まっています。
例えば、扣子的生活美学という中国インフルエンサーは、小紅書(RED)で、何もない部屋から各種家具をそろえて、きれいなインテリアを完成させるなどの投稿をしています。
AMALIAなどの家具ブランドは、扣子的生活美学と協業して、ライブコマースを実施し、大きく成功しています。
扣子的生活美学は、非常にわかりやすく部屋のインテリアや家具について、説明してくれるので、ついつい紹介された家具を買う人が多くいるのです。
【扣子的生活美学のカシミア販売のライブコマース、经济网より】
実際に、扣子的生活美学のライブコマースでは、数百の家具が一度に売れていくため、圧巻です。
さらに、面白いのが、扣子的生活美学の小紅書(RED)のアカウントです。
【扣子的生活美学の小紅書(RED)アカウント】
フォロワー数が10万人しかおらず、投稿もそれほど「いいね」などがついていないのです。
扣子的生活美学の成功事例は、専門性と共感力の高いインフルエンサーを選ぶ重要性が高まっていることを示しています。
広告色の少ないライブコマース
中国ライブコマースを活用したプロモーション自体は盛り上がっているのですが、消費者側で最も問題視されているのが、広告色の強すぎるライブコマースです。
効能が誇張されて説明されることや、実際商品よりもきれいに撮影されているなど、実物と説明のギャップが大きく、消費者による訴えや返品が大きな問題になっています。
この問題を解決した事例がLinglingによるライブコマースです。
Linglingは、お茶好きな広東省の女性インフルエンサーです。
彼女は私生活で気になったことを小紅書(RED)などで投稿しており、広告色がほとんどなく、自然体なインフルエンサーとして有名です。
【Linglingの小紅書(RED)アカウント】
Linglingは、小紅書(RED)アカウントで毎週ライブコマースをしており、化粧品などのあらゆる商品が数百~1千万個売れていきます。
しかも広告色がほとんどなく、自然体なのが見ているだけで伝わってきます。
Linglingの成功事例は、広告色を嫌うトレンドがある中で、広告色を抑えることがポイントであることを示しています。
まとめ
本記事では、中国ライブコマースについて、2024年のトレンドと成功事例を紹介しながら、活用方法を紹介しました。
弊社は現在、中国版TikTok抖音(Douyin)・小紅書(RED)を活用した中国SNSの運用代行や、中国への越境ECの支援などのサービスを展開しております。ぜひご気軽にご相談ください。