中国への新たな販売手法として、KOS(Key Opinion Sales)が流行っています。
従来のKOL(Key Opinion Leader)やKOC(Key Opinion Consumer)を活用したマーケティングから、KOS(Key Opinion Sales)に注力するブランドが増え、成功事例も出てきています。
特に、コストパフォーマンスの高さから、有名ブランドだけではなく、中小ブランドの成功事例があることも面白いところです。
そこで、今回は、KOS(Key Opinion Sales)について、即効性のある中国マーケティング最新手法と成功事例を紹介します。
KOS(Key Opinion Sales)について
経済低迷によりマーケティング予算削減トレンドに入った中国
KOS(Key Opinion Sales)について解説する前に、現在の中国経済状況とマーケティング環境を紹介しましょう。
2024年に入り、中国経済環境の厳しさが明確になり、多くの業界が低成長時代に突入しました。
BtoC(企業対個人)業界ではマーケティング予算が削減され、企業の収益に占める比率が2022年の27%から2023年には17%に低下しています。
科握(上海)市場コンサルティングの調べによれば、この比率は直近7年で最低水準です。
この状況の中で、ブランドは効率的かつ効果的な中国マーケティング戦略を求められています。
具体的には、従来の大規模な広告投資や高額なKOL(Key Opinion Leader)を起用した手法から、SNSを活用した実用的なマーケティングにシフトする動きが見られます。
その中で最近注目を集めているのが、KOS(Key Opinion Salesperson)なのです。
KOS(Key Opinion Sales)についての基礎知識
KOS(Key Opinion Sales)とは、商品やサービスを紹介するだけでなく、直接的な販売につなげることを専門としたクリエイターを指します。
KOSには様々な形態がありますが、従業員でありながらSNS上でも積極的にブランドや商品をプロモーションするクリエイターを指すのが一般的でした。
最近では、社内の従業員以外にも、外部にKOSとして代理店契約を締結した個人なども、KOSと呼ばれています。
例えば、小紅書(RED)上の小型店舗や個人商店が、KOSとして活躍しています。
KOL、KOC、KOSの違い
アルファベット3文字の単語が続々と出ており、なじみのない方にとっては、難しくみえるかもしれません。
ただ、中国マーケティングの世界では、販売量に大きな影響を与えるほど、大事な単語ですので、ここで整理しておきしましょう。
KOL(Key Opinion Leader)、KOC(Key Opinion Consumer)、KOS(Key Opinion Salesperson)は、それぞれ特徴と役割、活用方法が異なります。
KOL(Key Opinion Leader)について
〇特徴
専門性や影響力のある人物で、特定分野で大きなフォロワーを持ちます。著名人、インフルエンサー、専門家が該当します。
〇役割
ブランドや製品について広く認知を広げたり、信頼性を高めるために使われます。
〇活用例
ブランドアンバサダーとして高額な契約を結び、製品やサービスのイメージ向上に寄与します。
KOC(Key Opinion Consumer)について
〇特徴
一般消費者に近い立場でありながら、特定の製品やブランドについて率直なレビューや意見を発信します。フォロワー数は比較的少なく、マイクロインフルエンサーや中国現地では素人KOLとも呼ばれます。
〇役割
共感性やリアルな体験を基に消費者と近い視点から商品の魅力を伝える。親しみやすさが強みです。
〇活用例
SNSで製品レビューや使用体験を共有し、購買意欲を高めます。
KOS(Key Opinion Salesperson)について
〇特徴
ブランドや企業の従業員や代理店等がそのまま商品の「顔」となり、SNS上でプロモーション活動を行います。オフラインの販売能力とオンラインの発信力を兼ね備えた存在です。
〇役割
消費者に直接関与し、専門知識を活かして商品の信頼性を高めながらオンラインとオフラインの融合を促進します。
〇活用例
店舗スタッフがSNSを通じてブランドのストーリーや商品知識を共有し、潜在的な顧客を実際の購買行動へと繋げます。
下記の表でもまとめましたので、理解の整理にお役立てください。
また、KOLやKOCについては、下記の記事でも紹介していますので、興味のある方はご覧くださいませ。
KOLマーケティング:ブランド戦略成功の秘訣 | CRESON Media | 中国SNS動画・越境EC支援のクレソン
ちなみに、直近の成功事例では、KOLでブランド認知度を上げて、KOCでSNS上の話題性をつくり、KOSで一気に販売に繋げる手法が王道です。
KOLは主にブランド認知度の向上を担っていますが、KOSは「売上」を重視しフォロワーを購入に導く行動力が評価されています。
このように、KOSは消費者にとって信頼性が高く、商品の専門知識も持つため、KOLやKOCに代わる新しいマーケティング手法として注目されているのです。
中国市場におけるKOSの成功事例
KOS(Key Opinion Sales)について、概要がわかったところで、具体的な中国市場におけるKOSを活用した成功事例を紹介しましょう。
ルイ・ヴィトン
中国市場において、KOSを活用して初めて成功したブランドは、ルイ・ヴィトンです。
中国でも知名度の高いルイ・ヴィトンですが、2022年にはコロナ規制の影響もあり、売上が伸び悩んでいました。
知名度が高く、一定のファン層も構築できているルイ・ヴィトンにとって、直接的な販売実績につながっていないことが問題だったのです。
ルイ・ヴィトングループの収益のうち、アジア地域は約3割を占めており、特に中国は最大の顧客ですので、最重要課題でした。
ここで、解決手法として採用されたのが、KOSを活用した販売手法です。
ルイ・ヴィトンの成功事例におけるKOSは、各店舗の店長でした。
具体的に、ルイ・ヴィトンが行ったことは下記の通りです。
ルイ・ヴィトン本店と各店舗の店長との密接な連携
オフラインからオンラインへの転換を敏感に感じていたルイ・ヴィトンは、各店舗のオンラインアカウント管理強化が必須と考えていました。
【小紅書(RED)上のルイ・ヴィトン本店(最上段)と各店舗(上段2番目以下)のアカウント】
そこで、まず行ったのが、ルイ・ヴィトン本店と各店舗との連携強化です。
在庫や売れている商品の情報交換だけではなく、各店舗のオンラインアカウントに関する情報交換や運用についても密接に連携するようにしました。
発信する情報や顧客対応等のルール統一化
各店舗のオンラインアカウントの状況が分かった後は、発信する情報や顧客対応等のルール統一化を実施します。
具体的には、小紅書(RED)上の各店舗のアカウントで発信する画像の統一化を行います。
また、アカウントに訪れた顧客に対して、微信(Wechat)で友達加入させることを推奨するなど、顧客フォロー方法のルール化を行いました。
業績の悪いアカウントの整理
ルール化ができた後は、業績の悪いアカウントの整理を行います。
具体的には、ルール統一化を行っても業績が上がらない店舗アカウントに関して、より細かい指導や研修を行い、フォローアップします。
結果として、現在の実際に商品を購入してくれる顧客数は、コロナ前の2019年の2-3倍になり、業績が大きく回復したのです。
INTO YOU
KOSを活用して成功しているブランドは、ルイ・ヴィトンのような大きいブランドだけではありません。
中小規模のブランドも、大きく成功しています。
例えば、中国の化粧品ブランドであるINTO YOUは、KOSを活用した成功事例として、模範とも言える戦略で成功しています。
【INTO YOUの小紅書(RED)公式アカウント】
まず、INTO YOUは、孟佳(Jia)などの中国著名人にアンバサダーになってもらうなど、ブランド知名度を上げます。
その後、複数のKOCの協力を得ながら、小紅書(RED)などでの話題性を生み出します。
最後に、自社の各店舗だけなく、自社ブランド商品を扱ってくれる小紅書(RED)上の個人商店アカウントをKOSを通して、一気に販売促進を行いました。
結果として、一か月程度で、総販売数60万個を記録します。
その内訳としては、公式店舗での販売個数は37万個、KOSによる販売個数は23万個でした。
実に、KOSによる販売個数が全体の約40%を占めるまでになっていたのです。
その他の注目すべきポイントとしては、小紅書(RED)とそのほかの販売プラットフォームで価格差をつけていたことです。
例えば、あるリップ商品の小紅書(RED)店舗価格は19.9元(400円相当)でしたが、タオバオなどの店舗価格はその倍以上の設定にしていました。
このように価格差をつけることで、中国消費者が自然と小紅書(RED)へ集中的にアクセスさせ、小紅書(RED)での話題性やSEO対策を効率的に上げていたのです。
荔樹
3つ目の成功事例は、荔樹という、中国のマイナー化粧品ブランドです。
【荔樹の小紅書(RED)公式アカウント】
荔樹の小紅書(RED)公式アカウントを見てわかる通り、フォロー数1万人にも達しない認知度ですが、KOSを活用して販売に大きく成功しています。
KOSの活用方法や実績は、INTO YOUとほぼ同じですが、知名度が低くても、販売において大きく成功できていることには、注目に値します。
さらに、荔樹の一つのKOSである 「KF妆生晓梦」の小紅書(RED)公式アカウントを見てみると、荔樹以外のブランドも扱っていることがわかります。
【荔樹の外部KOSであるKF妆生晓梦の小紅書(RED)公式アカウント】
自社店舗や社員ではない外部のKOSは、一つのブランドに特化して販売しているのではなく、一つの商品分類を扱っていることが多いことがわかります。
また、KOSが活用が広まっている一つの大きな理由として、KOSによるマーケティングの費用対効果の高さが挙げられます。
例えば、中国において、KOLの投資収益率(ROI、リターン・オン・インベストメント、販売額/KOL報酬) は、1.5以上であれば、優秀とされています。
つまり、KOLへ100万円払い、KOLによる売上が150万円以上あれば、このKOLは優秀とされているのです。
一方、KOSでは、ROI が3を超えると優秀とされており、KOSを活用した費用対効果の高さが証明されています。
科握(上海)市場コンサルティングの調べによれば、KOLやKOCに比べて、KOSの広告価値(販売につながるプロモーション効果)は2倍以上あることもわかっています。
KOS(Key Opinion Sales)活用のポイントについて
KOSを活用した成功事例を通して、費用対効果の高い中国マーケティングが可能であることがわかったと思います。
ここでは、KOS(Key Opinion Sales)活用の3つのポイントについて、解説します。
KOSの徹底管理
1つ目のポイントは、KOSへの徹底的な管理です。
KOSは商品の「顔」となるため、ブランド価値が損なわれないようにする必要があります。
具体的には、KOSがアップロードする画像や動画の選択や、顧客へのアプローチ方法などを統一化させて、徹底して運用してもらう必要があります。
自社店舗の従業員であれば、比較的容易ですが、外部のKOSの場合は管理が比較的難易度が高いです。
KOSの選定や管理手法については、KOSを活用する前に、よく検討しておくことが大事です。
継続的なコンテンツ更新
2つ目のポイントは、継続的なコンテンツ更新です。
ブランドが素材やフォーマットを提供し、KOSが効率よく魅力的な内容を発信できる環境を構築する必要があります。
場合によっては、KOCや実際の消費者からの画像や動画を使うこともあります。
そのようにすることで、中国消費者に対して、魅力的なブランドとして認知されやすくなり、KOSを通すことで拡散効果が倍以上になります。
価格優位性の確立
3つ目のポイントとして、他プラットフォームとの差別化を図り、購買行動を促進させることが大事です。
現在の最新成功事例を分析していくと、INTO YOUの成功事例で紹介したように、小紅書(RED)へ中国消費者を集中的にアクセスさせるのが王道です。
中国最大のECプラットフォームであるタオバオでの価格を最低価格にするのではなく、小紅書(RED)の販売価格を最低に設定し、小紅書(RED)での話題性を高めるのがポイントです。
実際、小紅書(RED)のKOS戦略は、特に新興ブランドや低価格商品において高い効果を発揮しており、効率的な売上拡大最新手法として注目されています。
最後に
以上、KOS(Key Opinion Sales)について、費用対効果の高い中国マーケティング最新手法と成功事例を紹介しました。
KOSは、中国マーケティングの新たな可能性を切り開く手法です。
即効性を持つ一方で、ポイントをおさえた上での運用が欠かせません。
自社商品やサービスを中国へ効果的に販売するために、KOSを活用した戦略的なマーケティングを検討してみましょう。
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