中国で自社商品の口コミを広めたり、商品を販売したいと考えているけれど、方法が分からないという課題は、中国マーケティングに取り組む企業にとってよくあることです。
そのような課題を解決する方法が、中国人インフルエンサーマーケティングです。
中国のインフルエンサーマーケティング市場では、ライブコマースが非常に注目されているなど、日本のインフルエンサーマーケティングとは異なる特徴があります。
この記事では、中国のインフルエンサーマーケティングやライブコマースとその特徴について、紹介していきます。
中国インフルエンサーマーケティングの影響力
日中間のインフルエンサーマーケティングの違い
インフルエンサーマーケティングとは、ソーシャルメディアなどで大きな影響力を持つインフルエンサーに対し、自社の製品やサービスをプロモーションしてもらうことで、消費者の購買行動などに影響を与えるマーケティング手法です。
インフルエンサーマーケティングの市場規模は、日本を含めた各国で順調に拡大しており、さらに海外市場は日本よりも10倍以上の規模で成長していると言われています。
日本ではデジタル広告やバナー広告などの選択肢が多い一方、中国ではテレビ・新聞・雑誌・ラジオのようなオールドメディアの影響力が低下し、KOLの起用が増えています。
中国のインフルエンサーマーケティングは、日本と比較して市場規模が大きく、影響力も高いとされており、ビジネスにおいて避けられない存在です。
また、中国のインフルエンサーの場合、数億人のフォロワーを持つことも珍しくありません。
この魅力的な成長市場を生かし、自社の商品やサービスを武器に海外展開を検討している企業も多いことでしょう。
中国のインフルエンサーマーケティングとは
中国におけるインフルエンサーマーケティングを検討する際に、「KOL」と「KOC」という用語がポイントです。
【フォロワー数に応じて分類されており、それぞれその影響力が異なる】
商品やサービスのプロモーションにおいて、KOLとKOCのどちらを起用すべきかは、プロモーションの目的や商品の知名度、広告予算などを踏まえて判断することが必要です。
インフルエンサーによる宣伝効果
KOLとKOCを活用したプロモーションの効果は、消費者の購買意欲を高める信頼性やターゲット市場への効率的なアプローチ、高いエンゲージメントによる認知度向上など、多岐にわたります。
インフルエンサーマーケティングにおいて、KOLとKOCを活用したプロモーションは以下のような効果があります。
①消費者の購買意欲を高める信頼性
KOLは特定の分野で専門知識や経験を持つ人々であるため、KOLの意見や推奨はフォロワーにとって信頼性が高いです。
インフルエンサーが商品やサービスを推奨することで、一般的な広告よりも信頼性が高まり、消費者の購買意欲を高めることができます。
②ターゲットへの効率的なアプローチ
インフルエンサーは特定の分野や趣味、ライフスタイルに特化したコンテンツを提供しているため、そのフォロワーは特定の興味やニーズを持つ集団です。
そのため、インフルエンサーマーケティングは、特定のターゲット市場に対して効率的にアプローチする手段として活用できます。
③高いエンゲージメントによる認知度向上
インフルエンサーは自身のパーソナリティや視点を通じて、フォロワーとある種深いつながりを持っている状態です。
インフルエンサーが提供するコンテンツはフォロワーからのエンゲージメントが高く、商品やサービスの認知度を向上させる効果があります。
急速的な成長を続ける中国のライブコマース
中国でライブコマースが注目される理由
中国のライブコマースは、新しい商品販売の方式であり、独自のソーシャルメディアチャンネルを活用してインフルエンサーが商品を宣伝し、視聴者がリアルタイムで商品を購入できる仕組みです。
ホームショッピングや通販番組とは異なり、カリスマ性のある人気MCが登場するのが特徴です。
中国のライブコマース市場は急成長しており、アリババが所有する淘宝網（タオバオ）は、中国国内におけるライブストリーミング市場の約80%以上のシェアを占めています。
また、淘宝直播（タオバオライブ）は、お客様が買い物と娯楽を同時に楽しめる仮想ショッピングモールとして人気です。
他にも百度（バイドゥ）、JD.com（京東商城/ジンドン）など、中国のeコマース大手がライブコマースに参入しています。
ライブコマースは、ブランドの認知度向上や過剰在庫の活用、工芸職人から独立生産者までの小規模企業が顧客にアプローチする手段として、新型コロナウイルスが流行した際ののロックダウンによりさらに重要性を増しています。
中国のライブコマースは、商品の魅力を伝える手段として注目されており、双方向のコミュニケーションを通じて消費者との関係を築くことができる販売方法と言えるでしょう。
ライブコマースでモノを購入する理由
中国人消費者がライブコマースでモノを購入する理由は、以下の通りです。
①クーポンや共同購入でお得に購入
ライブコマースでは、クーポン配布や共同購入によって大幅な値下げが期待でき、さらにライブ配信アプリには合言葉や抽選など、普通のオンラインショッピングよりもお得に買い物できる機能が多く備わっています。
②信頼性のあるインフルエンサー
ライブコマースで商品を紹介するインフルエンサーは、商品の仕入れ先や品質をしっかりと調べた上で販売を行います。
そのため、消費者は商品選びの手間を省くことができ、安心して商品の購入ができるというわけです。
③ライブ配信で商品の実物を確認
ライブ配信では、加工がされていない実際の商品の確認、つまり、商品の色味やサイズ感、使用感を見られるため、消費者はより適切な選択ができます。
④リアルタイムによる臨場感
ライブコマースは、リアルタイムでの質問やコミュニケーションを通した臨場感のある買い物体験を提供します。
これにより消費者は楽しみながら買い物をすることができるのです。
これらの利点があることで、中国人消費者にとってライブコマースが人気の理由と考えられています。
ライブコマース市場規模の拡大
2024年3月に中国インターネット情報センター（CNNIC，中国互联网络信息中心）より公表された「第53回中国インターネット発展状況統計報告（第53次中国互联网络发展状况统计报告）」の内容の一部について、以下に紹介します。
2023年12月時点のネットユーザーは10億人を超え、普及率は77.5%に至りました。
【2020.3-2023.12 ネットユーザーの規模とインターネット普及率】
またネット通販ユーザーは2023年12月時点で9億人を超え、ネットユーザーの83.8%がネット通販を使用しています。
【2020.3-2023.12 ネットショッピングのユーザー規模と使用率】
さらにライブコマースユーザーは2023年12月時点で8億人を超え、ネットユーザーの74.7%が使用していると公表されました。
【2020.3-2023.12 ライブコマースのユーザーの規模と使用率】
ユーザーの増加数（青色の棒グラフ）に着目すると、ネットユーザーやネットショッピングのユーザー増加数に比較して、ライブコマースのユーザー増加数が大きいことがわかります。
新型コロナウイルス感染症の影響により多くの業界が打撃を受けましたが、中国のライブコマースユーザーは「巣ごもり」需要の拡大を受けてこの期間に増加しました。
ライブコマースユーザーの増加は、これまでの商品販売方法を大きく変えました。
次に、の章では、そのようなライブコマースの需要増加に伴い誕生した、中国ライブコマース市場で人気なKOLや最新技術について紹介します。
インフルエンサーマーケティング事例
生中継の5分間で15,000本の口紅を販売するKOL
今、最も人気のあるKOLの1人と言われる李佳琦さんは、あるライブ配信をきっかけに「口紅王子」と呼ばれるようになったインフルエンサーです。
淘宝直播（タオバオライブ）の配信は1,000万人以上のフォロワーがおり、１時間で100万人が視聴するほどです。
また、中国版TikTok抖音(Douyin)では、現在3,000万人以上のフォロワーを持つ有名なTikTokerでもあります。
中国版TikTok抖音(Douyin)にて、当時287万人のフォロワーのいた李佳琦さんは、5時間半のライブ配信中に23,000件の取引を成立させ、その売上は353万元（約7,060万円）にのぼりました。
また、ライブ配信のうち2時間で380本の口紅を試し、さらに5分の間に15,000本の口紅の取引を成立させました。
【李佳琦さんが中国版TikTok抖音(Douyin)でライブ配信している様子】
ライブ配信開始から4カ月で15億円を売り上げたKOL
他に人気のあるKOLとして、薇姫（Viya）さんをご存じの方もいるのではないでしょうか。
もともとアパレル店を経営していた薇姫（Viya）さんは、2016年に淘宝直播（タオバオライブ）をスタートし、わずか4カ月で約15億円を売り上げる事績をあげました。
薇姫（Viya）さんは独自のファッションラインと工場を持っており、外国ブランド製品から国内のインスタントラーメンや化粧品まで幅広い商品を宣伝しています。
さらに、商業宇宙開発企業と連携して、ライブ配信業界初の小型ロケットを特別価格の約6億円で販売し、わずか2時間で淘宝網（タオバオ）が「売り切れ」を発表しました。
薇姫（Viya）さんの淘宝直播でのフォロワーは2,500万人以上で、毎回の視聴人数は平均2,000万人以上です。
【薇姫（Viya）さんがライブ配信している様子】
AI生成インフルエンサー
最後に近代的なインフルエンサーを紹介します。
以下の画像に映る人物は、実際の人間だと思いますか。
この質問を聞いたとき、怖いと感じる方もいるのではないでしょうか。
【AI生成インフルエンサーは24時間年中無休で働き続ける】
実は、これらの人物はAIにより生成された本物のストリーマーのクローンです。
昨今、中国の多くのスタートアップ企業や大手テック企業が、Eコマースライブ配信向けディープフェイク・アバターの作成サービスを提供しています。
本物のようなアバター、声、動きを生み出すテクノロジーがより洗練されたことにより、人間のストリーマーのクローンを作成して、24時間年中無休で働かせることができるようになりました。
生成されたアバターは、台本を読み上げる音声に合わせるように口と体が動くため、AI技術の向上により生まれた大規模言語モデルと組み合わせることで、動画を数か国語に翻訳し、発話者の声をコピーして唇の動きと同期させることができます。
これにより、世界中の顧客に一斉にアプローチが可能となり、中国企業の宿願である世界展開が加速する可能性があるといわれています。
最後に
以上、中国のインフルエンサーマーケティングやライブコマースとその特徴について、解説しました。
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